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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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125 ノットイコール

本日の2話目です。


 「まるで、魔物みたいだよね。」


 あまりの驚愕に何も言えなくなったナインの代わりに、メイがはっきりと言葉にした。


 名前はサージェスだが、その他全ては魔物を鑑定した時と同じだ。それ以前に、何故鑑定が発動する?人じゃない、のか?いや、魔人だと名乗っていた。嘘ではあるまい。くそ、訳わからん・・・。


 答えの出ぬ疑問に、頭の中がぐるぐると混乱していく。


 「・・・ん?」


 ナインの混乱を他所に、地に転がるサージェスを観察していたメイが何かに気付く。徐に近づき、右手に持つ小剣でサージェスのシャツの胸元を切り裂いた。


 「お、おい、何して・・・、え?」


 「・・・やっぱり。」


 何故シャツを切ったのか意味がわからず、メイに問いただそうしたナインは、サージェスの胸元を見て言葉を失った。


 対してメイは、何かに納得するような言葉を呟く。


 「これ、風の魔石か?なんで、こんな埋め込まれた状態で・・・。」


 あらわになったサージェスの胸元には、風属性の魔石が埋め込まれていた。しかも、半分ほど肉体と融合しているように見える。


 「たぶん、鑑定出来たのはこれが理由じゃないかな。」


 「この融合したような状態のせいで、人なのに鑑定が効いて、魔物ような結果が出るって事か・・・。何でまたそんな。」


 「元は人だとは思うんだけど、魔石で存在が変質したのかなぁ・・・。でもそんな事普通は出来ないし・・・。ごめん、正直全くわかんないや。」


 色々と知っているメイでも、理由が全く推測出来ないようだった。ラグナロクの魔人はそれほどまでに、訳がわからない存在なのだろう。


 『魔人って名乗ってたけど、私達とは全く違うね。ていうか、魔人ですらないね。』


 死にかけとはいえ、一応ナイン達が魔人である事は隠した方がいいからだろう。メイは思念会話に切り替えると、魔人かどうかすら否定した。


 何故そう確信を持って言えるのか、理由が気になったナインは、同じく思念会話に切り替える。


 『それはわかるのか?』


 『うん。私とナインはね、この世界に"魔人という人"として、存在が規定されてるんだよ。だから私達には鑑定が効かない。でもこいつらは違う。鑑定が効く上に、魔物と同じ鑑定結果が出る。しかも名前は本人のままで。だから言ってしまえば、こいつらは魔人というより"人のような魔物"っていう方が正しいんじゃないかな。』


 メイの説明にナインは深く納得した。言うなればナイン達魔人とは、獣人族やエルフ族、ドワーフ族などと同じようなものだ。ヒト種の魔人族と言ったところかな。


 だがそれに対してラグナロクの魔人は、鑑定が発動するため人ではない。元が人だったとしてもだ。そして人ではないため、魔人でもない。それから、鑑定で表示される内容が魔物と同じだった。この事から、人よりも魔物に近い存在、という結論になったのだろう。


 『なるほど・・・、人ですらないのか。』


 『どうやってこんな存在を生み出したのか、見当もつかないよ。ただ魔石を埋め込むだけじゃ、こんな風に融合した状態にはならないからね。』


 『何かの特殊な力か道具で、って事か。』


 『そうだと思う。まあ気にはなるけど、この事は一旦置いておこうか。今私達が優先するべきは、魔人についてじゃなくて事件についてだからね。』


 確かにそうだ。最優先事項は事件の解決である。ラグナロクの魔人については、今すぐ考える必要の無い事だ。まずはしっかりと尋問をして情報を確保しなければ。


 意識を切り替え、ナインは足元に転がるサージェスへ視線を戻す。


 「ひゅぅ・・・、ひゅぅ・・・。」


 「・・・あ、やばい。」

 

 目が虚になり、荒い息を吐くサージェス。少しだけ放置していたせいで、今にも死にそうになっていた。


 まだ尋問は終わっていないので、今死なすわけにはいかない。ナインは追加のHPポーションを取り出そうと、マジックバッグに手を入れた。


 その時。


 「ひゅぅ・・・、我は、ここまで、か・・・、同志よ、世界よ・・・。」


 薄っすらと微笑みだしたサージェスが、何かを呟いた。


 「え?」


 「っ!?ナイン!!」


 ナインとは違い、メイは気付いた。


 咄嗟に飛び出したメイは、ナインを抱きしめると、その勢いのままサージェスから引き離す。


 だが時間は全くもって足りなかった。


 「終わりで待っているぞ・・・。」


 引き離されるナインに、小さな呟きが届く。そして




 ドガァァアアアーーーーンッ!!!!!





 発生した爆炎に、ナインとメイは飲み込まれた。

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また明日。

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