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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
125/251

124 魔人の秘密

本日は2話投稿です。


2話目の投稿は20時です。


 切り落とされた両手足が四方に吹き飛んでいく。だがナイン達はそんな物に目もくれず、まだ生きているサージェスを見据える。最後まで油断はしない。


 「っ!?ぁぁぁああアアッ!!!」


 両手足が無くなった事と痛みによって、まるで魂から出た絶叫、とでも形容できそうな声を上げるサージェス。


 15メートルほどしか離れていないので、2人にもその絶叫が届いた。そしてあまりの煩さに、ナインは眉と目を顰める。


 だがメイは違った。


 「まずい!静かにさせなきゃ!戦闘音より大き過ぎて誰か来ちゃうよ!」


 「っ!そりゃまずい!」


 確かに、先ほどまでの戦闘音は風魔法が主体だったので、そこまで大きな音が出ていなかった。むしろ、今サージェスが上げている叫びの方が圧倒的に大きい。このままでは叫び声を聞いた住民や野次馬、最悪警備隊が来てしまう。


 「えっと、これでいいや!」


 ナイン達は猛ダッシュで地面に血を流して転がるサージェスに近づく。そしてバッグから何かの布を取り出すと、叫び続けるサージェスの口に押し込んだ。これで声が出ないだろう。んー!んー!しか聞こえない。


 「え・・・、ナインそれ。」


 「ん?どうした?」


 メイに声をかけられ、振り返る。すると彼女は困惑した顔しながら、今突っ込んだ布を指差していた。これがどうしたんだ?


 「この布がなんだ?」


 メイが何が言いたいのかよくわからず、ナインの顔にも困惑が浮かぶ。そうしてメイは顔変えないまま、指差した物の正体を口にした。


 「それ・・・、ナインの下着・・・。しかも洗ってないやつ。」


 理解したくない内容が聞こえてきた。


 「・・・は?」


 「んんッ!?」


 口を塞がれたサージェスが、声にならない叫びをあげた。敵ながら申し訳ない気持ちが湧き出る。


 と、とりあえず取り出さなきゃ。


 こんな事で固まっている場合では無い。それに、もう口を塞がなくとも叫ぶ事は無いだろう。何が理由で叫ばなくなったかは知らん。そして、なぜメイが僕の洗っていない下着を知っているのかも知らん。突っ込んだら危険な気がするから無視しよう。


 再起動したナインは、サージェスの口から己の未洗濯下着を取り出す。外されたサージェスがおえおえとえずいている。人の下着を口に突っ込まれたら誰でもそうなるだろう。ならないのは特殊な変態くらいだ。


 「ふーっ、ふーっ・・・。」


 叫ばなくはなったが、手足の痛みがひどいのだろう。荒く息を吐き、何とか我慢しているようだ。


 というかこのままだと死んじゃうな、止血だけしとくか。まだ聞く事は沢山あるしな。死ぬのはその後にしてくれ。


 ナインはマジックバッグから安物のHPポーションを取り出し、サージェスの傷口にかける。


 「っぐう・・・!」


 ポーションとはいえ、液体を直接傷口にかけられればそりゃ痛い。だがサージェスは必死に声を上げないように我慢をしているようだった。もしかして、声を上げればまた下着を突っ込まれるとでも思ってるのかもしれない。


 もう突っ込まないぞ。好きで突っ込んだんじゃない、間違えただけだ。


 ちなみに、ナインには必要の無いHPポーションを持っていた理由は2つある。1つは、グレンや一般人用のためだ。そしてもう1つは、肉体再生時の偽装用だ。人前で再生をするときに、ポーションを使って回復したフリをする。魔法もポーションも使わないのはどう考えてもおかしいからな。


 「・・・まあ大丈夫か。これなら死にはしないだろう。」

 

 まだ出血はしている。それでも安物のポーションだが傷口が少しだけ塞がった。情報を吐くまで生きてればいいので、これで十分だ。


 警備隊には引き渡さない。引き渡したところで、結果的に仲間の魔人のところまで行ってしまう。そうすれば敵側に僕達の情報が漏れるだけでなく、敵として再度現れることになるだろう。それは僕達にも住民にも危険だ。


 そして、解決までどこかに閉じ込めておく事もしない。こいつは魔人だ。おそらく普通の人間よりも再生力があるだろう。となればずっと見張る必要が出てくる。まだ事件を解決した訳じゃ無い。それに、信用できる協力者もいない。だから生かして閉じ込めるのは無理だ。


 こいつは、情報を抜いたら殺す。


 足元に転がるサージェスを冷めた目で見下ろす。ナインにとってこの男は、もはや生きる価値の無い人間になっている。


 「おい、他の魔人はどこにいる?」


 「ふっ・・・、我が、言うと、思うか?」


 吐き捨てるようなナインの言葉に、途切れ途切れの声で答えたサージェス。ここまでされても答える気は無いらしい。いや、自分がもう逃げられず、殺される事がわかっているから答えないのかもしれない。だが、それでも尋問に対する反応から何かわかるかもしれない。


 ナインはサージェスの言葉を無視し、尋問を続ける。


 「領主館か?領主を操ってるって言ってたし、あそこなら色々動きやすい。違うか?」


 「・・・好きに、考えて、いろ。我は、何も、答えぬ。」


 肯定も否定もしないサージェス。だがナインの言葉に少しだけ目を見開き、泳がせたのを見逃さなかった。残りの魔人は領主館にいる。


 結局、領主館突撃か。まあ誰が敵なのか判明していない状態で突っ込むよりはマシか。


 「起爆装置はど「ナイン!!」・・・なんだ?」


 起爆装置の在処を聞こうとした時、メイが叫ぶようにナインの名を呼んだ。尋問を邪魔された形になるが、メイが叫ぶとなるとよっぽどの事だろう。尋問を途中で止め、メイへと顔を向ける。


 サージェスを見るメイの顔には、強い驚愕と困惑の表情が張り付いていた。


 「なんだ?おい、どうした?」


 今までに見た事が無いくらいの表情にナインは焦り、再度聞き返す。


 「・・・この男、鑑定して。」


 「は?」


 意味がわからなかった。人物への鑑定は発動しない。これは、メイが最初に教えてくれた事だ。なのになぜ?


 「いいから!!」


 「は、はい!」


 怒るような言い方に、なぜか反射的に背筋が伸びる。そして、言われるがままにサージェスに鑑定スキルを使用する。


サージェス・バーフェルト

Lv.45

ランク:C

属性:風

HP:72/980

MP:581/13382


 「なっ!?」


 鑑定が発動した。ナインの目の前にサージェスの鑑定結果が表示される。


 おかしい、おかし過ぎる。鑑定が発動した事もそうだが、この鑑定結果も変だ。


 これではまるで・・・。


 「まるで、魔物みたいだよね。」

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