123 VS魔人サージェス
「それでいいよ。ほら、ここからは攻めるよ。」
「ああ、行くぞ！」
唐突に始まったレクチャーが終わり、本格的に戦闘が開始された。今までは、サージェスの風魔法を遠くから回避しているだけだった。だがここからは距離を詰め、攻めに転じる。
魔法での攻撃でもいいのだが、今のメイは魔力が少ないので、あまり多く魔法が使えない。それに、せっかくレクチャーを受けた後なので、ここは回避がより優先される近接で行く事にした。
「回避優先、体勢意識。回避優先、体勢意識・・・。」
ブツブツと呟きながら風の刃を避けてサージェスに近づいていくナイン。斜め後ろから追従するメイは、その様子を見て苦笑を漏らす。
メイ的には、教えておいて少しずつ動きを意識してもらおう。くらいの考えだったのだが、思った以上にナインに意識させてしまったらしい。
そこまで真面目にやらなくてもと思ったが、頑張っている彼を止めるのもまた憚られる。メイは見守るだけに止め、ナインと共に回避しながらの接近に努めた。
少しずつ、少しずつだがサージェスとの距離が縮まっていく。だがその事が許せなかったサージェスは、左手の細剣を引いて構える。そして同時に、細い刀身に魔力が宿っていく。
「ちょこまかと羽虫のように避けおる！ならばこれならどうだ。ウインドスラスト！！」
サージェスが魔法名を叫ぶとともに、引き絞った細剣を前方に2回、高速で突き出す。すると突きに合わせて刀身から、薄緑色の刺突が2本出現し、ナイン達に向かって飛んできた。
「うおわぁ！！速っ！」
「おっ、と。」
先ほどまでの風の刃より、速度が倍くらい速い風の刺突を、ナインは全力で、メイは軽く回避する。
「はははっ！無様であるな！そら、これだけでは無いぞ！ウインドエッジ！ウインドスラスト！」
ぶざ、・・・あいつ腹立つな。
ナインの全力回避に気を良くしたサージェスが、いやらしい笑みを貼り付けと馬鹿にしてきた。これにはナインも額に青筋を浮かべる。何度も抑えていた怒りが、また再燃してくる。
だが、その後にサージェスが繰り出してきた連続魔法の弾幕に上手く接近が出来なくなってしまい、たまらず後退してしまう。そのまま突っ込んでいたら、間違いなく攻撃を食らってしまっただろう。
せっかく残り3分の1くらいまで接近出来ていたのに、半分ほど戻されてしまった。
「ちっ。」
悔しさとイラつきから舌打ちをし、歯軋りをするナイン。遠くなったサージェスのニヤつき顔に、さらにフラストレーションが溜まる。
そしてそんなナインの様子を見たサージェスは魔法を止めると、盛大に調子に乗った。
「はははははっ！！どうした？ほら、さっきは惜しかったぞ？だが残念だったな、所詮貴様らごとき下等種では、どうやっても我に勝つ事など出来んのだ！！」
ブチッ。
ナインとメイの頭の中で何かが切れる音がした。
「なあメイ。せっかくレクチャーしてもらったところだけどさ、別にいいよな？」
「そうだね、いいよ。殺さないようにだけ気を付けよっか。」
グレンとルチルがいれば、即座にその場を離れただろう。そう思ってしまうほど冷たい声でナインとメイが言葉を交わす。
互いに考えている事は同じである。
あいつ腹立つ。
「僕の合図で行くね。」
「わかった。ナインはまだ狙い難いと思うから、私が左側の剣持ってる方ね。」
「じゃあ僕は右側だな。」
何をどうするのか、攻撃方法は何か、そんなことを話すことも無く、ただただ淡々と分担だけを決める2人。
「いくよ、3、2、1。」
そうしてすぐにカウントを始め
「「マジックソード。」」
2人は膨大な魔力を込めた魔力剣を2本ずつ、計4本出現させると、問答無用でサージェスへと撃ち出した。
射出された魔力剣は、その込められた膨大な魔力によって凄まじい速度を出して飛んでいく。
「っな！？」
ズバンッ！！
4箇所同時による豪快な斬撃音が倉庫街に響き渡り、サージェスの両手両足が根本から切り落とされた。
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次回は月曜日です。
それではまた。
