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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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122 唐突のレクチャー


 「あ、ここまでかな。それじゃあ、戦闘用意!」


 膨れ上がった魔力を見たメイが、すぐさま戦闘開始を告げる。そのあっさりとした態度に、小物扱いのサージェスを若干だが可哀想だと感じたが、悪人なので別にいいかと思い直す。全部あいつが悪いのだ。


 ナインとメイは剣を抜くと重心を下げ、すぐに動けるように戦闘態勢をとる。


 バサっという音を立て、サージェスがローブの前をはだけた。ローブの中は防具が無く、何だか高そうな洋服だったが、腰には剣が1本下げられていた。


 「剣も使うんだな。魔法使いかと思った。」


 「メインかサブかはわかんないけど、魔法使いでも使う人は結構いるよ。」


 「そうなのか。ルチルが基準になってたわ。」


 剣を構えながらも、いつも通りの雰囲気で話すナイン達。その焦りも何も無い様子に、サージェスの怒りがさらに大きくなる。そして左手で腰の剣を掴み、荒れた手つきで抜き放った。


 (長剣、ではないな。)


 長さは長剣ほどだが、刀身がかなり細い。刃は・・・、あるな。であればあれは細剣か。なら攻撃は刺突メインか?


 武器から攻撃の予測をするナイン。だが、初手はまったく違うものだった。


 「死ね!ゴミども!!ウインドエッジ!!」


 「っ!?剣じゃないのかよ!」


 「回避!」


 6枚の薄緑色をした半透明の刃が、かなりの速度でナインとメイに襲いかかってきた。


 荒々しく細剣を抜いたので、初手は近接で来ると思ってしまったナインは、文句を言いながらも大きく回避をする。隣にいたメイは、ナインとは違いスルスルと最小限の動きのみで風の刃を回避していた。


 「そういえばナインって、対人戦は初めてだったよね。」


 「ああ、魔物しかない。」


 「ならちょうどいいから、対人戦もかねて今から少しだけ戦闘のレクチャーをするね。魔物との戦闘でも重要だから良く覚えておいてね。」


 「・・・わかった。」


 今やるの?こんな大事な時に?と思ったが、言っても強行してきそうなので、言うのはやめた。それに、まだこの町には魔人が3人もいる。おそらく戦う事になるはずだ。その時のためにも実戦でのレクチャーは重要だろう。


 追加で放たれるウインドエッジを避けながら、メイの解説とレクチャーが始まる。


 「ちなみに今回教えるの2つで、攻撃じゃなく防御についてだよ。」


 「防御?うわっ!危な・・・。」


 会話に意識を持っていかれ、風の刃が体を掠める。しっかり集中しよう。それにしても防御?攻撃じゃないんだな。


 「攻撃は人によってリズムとかパターンが結構違うからね。」


 「なるほど。」


 僕の考えている事がわかったのか、口に出していないのに答えが返ってきた。いまいち良くわからなかったが、とりあえずなるほどと答えておく。わからなかった事もバレてそうだが、特に何も言われなかった。


 「まず1つめ、防御とは言ったけど、私達みたいな軽装備の前衛は、基本的に回避が最優先だよ。」


 「防御力が無いからか?」


 「そうそう。優先順位があって、回避、受け流し、防御、直撃、って感じだね。回避が出来ない場合、相手の攻撃を受け流したりして防ぐ。受け流しが出来ない場合、武器や盾で防御する。防御すら出来ない場合、直撃を食らう。って流れになるよ。」


 ああ、なるほど。回避が最優先だけど出来ない場合は、優先順位にある次の行動を取るわけか。ただちょっと気になった事が。


 相変わらず放たれる魔法を回避しながら、ナインが質問をする。


 「なんとなくわかったけどさ、盾があるなら最初から防御でもいいんじゃないの?」


 「盾があっても基本は回避優先だよ。まあ受け流しも手段には入るけど。だけどそもそも盾って難しいんだよ。」


 「そうなの?」


 盾を持った事がないのでまったくわからない。いつも出すのは魔力盾なので当てにもならない。


 「そうだよ。受け流しでも言える事だけど、角度とかタイミングがズレると、相手の攻撃を防げても衝撃がかなりくるからね。そうなると手は痺れるし体力は削られる。だから基本は回避を優先して、要所くらいでしか盾は使わないよ。防御が優先されるのは大楯と金属鎧を着けた重戦士くらいだね。」


 メイの解説を聞き、盾についてよく理解したナインは、その難しさに今後自分が持つ事は無いだろうと考える。重戦士も今の戦闘スタイルには合わないしな。


 ちなみに今もサージェスの風魔法は回避中だ。数は多いが真っ直ぐにしか飛んでこないので、避けるのにも慣れてきた。


 「次に2つめ、回避後の体勢や行動を意識して動く。これは回避だけじゃなく、受け流し、防御、直撃、全てに言える事だね。どれだけ攻撃を回避出来ても、その後にすぐ攻撃とかに移れないんじゃ、いつまで経っても勝てないからね。」


 「ただ避けるだけじゃダメって事か。」


 「そういう事。いくら回避が出来ても、仰け反ったりしてたらすぐに攻撃に移れないでしょ?だから理想は、回避後すぐに剣を振ったりさらに回避が出来るような姿勢だね。」


 「・・・難し過ぎるよ。」


 メイはスルスルとすり抜けるように風の刃を避ける。しかも喋りながら。その姿がまるで、これがお手本だ、と言っているようで、

思わずナインは弱音を溢してしまう。


 これをやれと?難し過ぎるだろ。というか何であんなに軽く避けれるんだよ。あの風の刃、無茶苦茶速いんだぞ。


 さらに内心で愚痴まで溢してしまう。でも出来るようにならなければいけない。でなければ弱いままだ。


 「短いけど、とりあえず今回のレクチャーはこれで終わりだよ。ほら、頑張って。」


 「・・・わかった。まずは言われた事を意識して戦ってみるよ。」


 メイを手本に、出来る限り小さい動作での回避を意識しながら、回避後の体勢も意識する。頭がパンクしそうだが、やり続ければいつかは慣れるはずだ。


 「それでいいよ。ほら、ここからは攻めるよ。」

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また明日。

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