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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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120 第三級魔人


 「下等種が、調子に乗りおって・・・。すぐに死ぬことになるお前達には、冥土の土産として教えてやろう。我は、ラグナロク第三級魔人サージェスである。」


 サージェスと名乗った魔人は、フードを取ると怒りを込めた瞳で睨みつけてきた。


 だが今のナインに、そんな視線なんぞを気にしている余裕はなかった。


 ラグナロク第三級魔人サージェス。


 目の前にいる濃緑色の髪をオールバックにした男が、そうはっきりと名乗った。


 ラグナロク・・・。そうか、こいつらが。


 抑えていた怒りが再度燃え上がるように湧き上がる。あまりの憤怒に視界が歪む。今にも飛び出して襲いかかってしまいそうだ。


 『ナイン、落ち着いて。まだダメだよ。』


 メイの落ち着いた声が頭に響き、少しだけ冷静になる。が、怒りが消えたわけではない。


 『・・・ああ、ごめん。』


 まだダメだ。情報を聞き出さなきゃいけない。正直、こんな奴と話しなんてしたくないのだが、そうも言ってられる状況ではない。


 外からはわからぬように深呼吸を一つし、サージェスと名乗った魔人を見据える。


 ラグナロクの魔人については、あまり、というかほとんど知らない。全然知らな過ぎた結果、勝手な想像でもっと人ならざる姿をしていると思っていたくらいだ。だが目の前にいるのは、人間と同じ姿をした神経質そうな顔の男だ。若干拍子抜けである。


 まあそんな事よりも、とりあえず会話だ。素直に喋ってくれるとは思わないが。


 「ラグナロクの魔人がこんなところで何をしている。」


 ナインはストレートに目的を問いただす。ご機嫌伺いなどしたくもないからな。


 「下等種ごときに、何故教えねばならぬ?お前達は、今すぐ口を閉じて死ねばいいのだ。」


 「っ!!」


 無茶苦茶腹立つ。会話にならないじゃないか。


 感情が爆発しないよう拳を強く握りしめ、何とか抑え込んでいると、


 『・・・危ない、魔法撃ち込むとこだった。』


 隣に立つメイから不穏な思念が届いた。勘弁してくれ。それにダメって言ったのはメイじゃないか。でも、


 『・・・気持ちはわかるよ。』


 何というか、このサージェスと名乗る魔人は凄まじく傲慢だ。魔人である自身の事を上位存在だとでも思っているのだろう。


 はてさて、それなら僕達も魔人だと明かしたらどんな反応をするのだろうか。やらないけどさ。


 まあそれは置いておいて。ここはもう突っ込んだ話題で反応を見る方がいいかもしれない。


 さっそく行動に移したナインは、メイが持っていた入場券を受け取ると、サージェスに見せつけるようにヒラヒラと動かした。


 「これ、爆弾だよな?」


 ナインの言葉と行動に、サージェスの目がすっ、と据わる。


 さて、ここからは反応を見ながらの答え合わせだ。


 「中を確認したよ。識別、隠蔽、送信、受信、吸収、充填・・・。信号を送って起動し、魔力吸収と過剰充填で炎の魔石を爆破。殺す気満々だな。」


 無言でこちらを見据えるサージェスに、まずは僕達が入場券の仕組みを理解している事を教える。推測はここからだ。


 「お前達はこの爆弾を使って、町中で起動実験をした。そして実験が終わり、上がった町の警戒を抑えるために1人の女性を犯人にした。」


 話している内容は推測でしかないが、今は事実かどうかなんて関係無い。事実かどうかは、目の前の男が教えてくれる。


 ナインの推測に、サージェスの据わった目が大きく見開かれた。


 当たりか。


 合っていた事は嬉しいが、内容が事実だった事は嬉しくない。実験で殺された人達もルチルも、完全に生贄だ。


 消えぬ怒りの炎を抑え、ナインは一番重要な推測を口にする。


 「お前達の最終目標は、豊漁祭の抽選会中での一斉爆破。そしてそれによるカルヴァースの壊滅だ。」


 「なっ!?」


 サージェスが驚きを隠せず、驚愕の表情とともに声を上げた。


 これも当たり、か。やはり、本気でヤバい状況のようだ。それにしても・・・。


 驚愕中のサージェスを放置し、思念会話でメイに話しかける。


 『なあ、あいつやたら驕ってるけど、馬鹿だよな?』


 『馬鹿だね。態度に出過ぎ。まあこっちとしては楽でいいけどね。』


 『やっぱりそうか。』


 メイが馬鹿にするかのように食い気味で答える。いや、事実馬鹿だと思ってるのか。


 何というか、メイも言ってたけど態度に出過ぎてて逆にこちらが困ってしまう。よくこんな奴が犯人側で今までバレなかったな。運が良かったのか、それとも他に理由があるのか。


 『こういう奴はね、怒らせる事で理性を下げて喋らせるか、こちらの予想をとにかく話して反応を見るのがいいよ。馬鹿だから。』


 『ふむ、じゃあ同時進行でやってみよう。』


 煽りながら推測を話しまくる。態度にも言葉にも出してくれそうな気がする。


 『いいね。それじゃあ私も混ざるよ。あのタイプは、子供に言われたらすぐ怒るだろうしね。』

また明日。

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