119 敵の正体
本日の2話目です。
『来てるね。』
メイが思念会話にて、確認するかのようにポソりと呟いた。
港の手前から道を逸れ、倉庫街へと向かうナイン達の数十メートル後ろから、気配が1つ感じられる。
『ずっと付いて来てるな。』
服屋を出てからおよそ10分。気配の主は一定の距離を保ったまま、ナイン達の後を付いて来ていた。
現在は倉庫街の入り口付近を過ぎたところだ。あと5分ほどでルチルと合流したあの倉庫街奥に辿り着く。
それにしても・・・。
『・・・なあ、後ろ奴って、あれで気配隠してるんだよな?』
『隠してるね。』
『そうだよな。でもそれにしてはさ、気配隠しきれてないよな?』
多少小さいが、今も後方からしっかりと気配が感じられる。果たしてどういう事なのか。不思議過ぎて意味がわからなかった。
『・・・たぶん、ナメられてるね。』
『は?』
肩をすくめたメイが、嫌そうな感情を思念に乗せて答えてくれた。
だが、答えを聞いても上手く理解が出来なかった。
ありえない。いくら僕達が弱そうに見えるとはいえ、尾行をしているのだ。普通は念には念を入れて気配や姿を隠すものだ。なのに後ろの奴は、距離を取ることで姿は隠しているが、気配は少ししか隠していない。そこまで気配が読めないと思われてるのか?
確かにナメられてるな。
『・・・ふざけてるな。僕達は油断せずいこう。』
『もちろん。逃すつもりはないよ。』
言葉の端から彼女の怒りが感じられた。流石のメイもイラっとしたらしい。まあ僕もなので気持ちはよく分かる。
だが相手がナメているからとはいえ、油断はしない。イラつきはしても冷静に対処するつもりだ。それはそれとして。
『何かあっても問題無いと思えるくらい、強さに自信があるのかな?』
『そうなんじゃない?そんなに強そうな感じはしないんだけどねぇ。』
どうやら相手は自信過剰な奴のようだ。ふむ、素直に口を割ってくれるだろうか。多分無理か。となれば拷問か・・・。
どんな拷問をしてやろうかとあれこれ頭の中で考えながら、引き続き僕達は倉庫街の奥へと足を向けた。
ルチルが逃げ込んだ倉庫街の奥に辿り着いたナイン達は、その場で立ち止まる。ここからは、再度メイが敵を誘き寄せよる行動をする予定だ。
ちなみに何をするのか、ナインは知らされてないのだが、メイの手元を見ることですぐに判明した。
「何してんの?」
パカパカと入場券を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返すメイに、わかっていても聞いてしまう。
たぶん、異常知らせる信号を小刻みに送って敵を誘っているのだろう。雑じゃない?
「わかりやすく異常でしょ?」
「まあ、そうだな。」
「本当は違う事をしようと思ったんだけど、相手はこっちをナメてるみたいだしね。ほら、これだと馬鹿にしてる感じしない?」
「かなりするわ。ていうか馬鹿にしてるだろ。」
いいのかな?まあいいか。敵に情けはいらんだろう。
呆れつつもメイのやりたい様にやらせる事にしたナインは、腕組みをしてメイの手元を見続ける。だが警戒は一切解かない。今も尾行者の気配を感知し続けている。
お、ほんの少し殺気が出たな。怒ってる怒ってる。
敵の気配が強くなり、こちらに近づいてくるスピードが上がった。
来る。
『来たね。』
接近とともに、メイからの思念会話が届く。
ナインとメイは現れた敵の方へと向き、その姿を捉える。通路の端には、黒いローブを着てフードを目深に被った者が立っていた。
見た目では種族だけでなく、男か女かも不明だ。だがこいつが敵側の存在なのはわかる。なにせ姿を現した瞬間、殺気が膨れ上がったからだ。
「誰だお前?僕達に何の用だ?」
先手を打つ意味はあまり無いが、話しかければ答えるだろうと思い、ナインが声をかける。言葉に棘が出てしまったのは仕方ない事だ。
ナイン達は警戒を強めながら静かに相手の反応を待つ。すると、黒ローブから不機嫌そうな男の声が聞こえてきた。
「下等種が、調子に乗りおって・・・。すぐに死ぬことになる貴様らには、冥土の土産として教えてやろう。我は、ラグナロク第三級魔人サージェスである。」
何故2話目を20時にしたかですか?
分ければアクセス数が稼げるんじゃないかという
せこい考えからです。
また明日。