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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
118/251

117 タイムリミット


 「これ、入ってる魔石って全部Fランクだよな?過剰充填されただけで、何であんなに大きな爆発になるんだ?」


 入場券に入っていた3種類の魔石は、全て最低ランクであるFだった。Fランクの魔石というのは、魔力もサイズも小さいものである。なので疑問として、過剰充填をしただけであんなに大きな爆発が起きるものなのか?と思ってしまった。


 まあ、過剰充填についてはいまいちよくわかっていないので、このくらいなら起きるよと言われてしまえばそれまでなのだが。


 「ああ、それはね、この充填の回路が、最低な描き方をされてるからだよ。」


 「最低?」


 「うん。通常はね、こういう充填みたいな効果の回路の場合、効果始動、充填量調整、効果停止っていう感じに、起動すると一定量の魔力を充填して、予定量までいったら停止するように回路を描き込むんだよ。」


 ふむ、なるほど。起動させると一定の魔力を決まった量まで充填する。不具合や暴走をしないようにする、セーフティみたいな感じかな。


 あれ?今の説明をしたって事は、もしかして。


 「あ、気付いた?そう、これはね、効果始動しか描いてないんだよ。だから充填が開始されると、調整もされてない大量の魔力が一気に炎の魔石に流れ込む事になるんだよ。そんな勢いと量の魔力を、最低ランクであるFランク魔石が許容出来るわけないでしょ?」


 「・・・魔石の許容量を越えた魔力が流れ込んだ結果、暴走か。もしかして、だからFランクなのか?」


 「たぶんそうだと思う。この魔道具の6つの効果は、Fランク魔石でも問題無く作動する。ってのも理由にあると思うけど、1番は、必ず暴走させるためじゃないかな?」


 確かに最低な描き方だ。そして最低な魔道具だ。


 かなり酷い内容に、絶句する。頭は働いても口が働かない。そうなってしまうほど、これは酷い。先ほども思ったが、これは完全に人を爆殺することを目的とした魔道具だ。


 入場券という用途に偽装させ、信号一つで所持者の魔力を吸収して爆発。


 なんて恐ろしい物だろう。


 ナイン達の推測と行動で、爆弾の存在についてはわかった。なので次は、敵の目的だ。


 何を考えてこんな物を作った?何が目的だ?


 「・・・何が目的だ?これで何をするんだ?」


 腕を組み、分解された入場券を睨みつけながら敵の目的を探るナイン。


 だが怒りが沸々と湧いてきてしまい、上手く思考が働かない。一旦落ち着いたつもりだったのだが中々難しい。それほどまでに許せないと、心の底から思っているからだ。


 それでも無理矢理に思考を続けていると、ポツリとメイが呟くのが聞こえた。


 「・・・入場券が爆発、か。」


 入場券が爆発。そうだ、何故入場券なんだ?別に他の物でもよかったはず。沢山の人に配りやすいからか?いや、それだけじゃないはず。もっと、これじゃなきゃダメな理由が・・・。


 もっと、もっとと、思考の海に潜るように、深く深く推測を重ねる。


 入場券の用途は何だ?会場への入場のためだ。それと他には抽選券としてだ。


 抽選券・・・抽選会・・・、あ。


 「抽選会だ!」


 「うぴゃっ!?」


 ナインが突然あげた声に、メイが飛び上がるように驚く。


 すまん、でもわかったのだ。敵の目的が。


 「な、なに?抽選会がどうしたの?・・・あ。」


 話す途中で言葉が止まり、口をポカンと開けて停止した。どうやらメイも気付いたらしい。うぴゃっ、は聞かなかった事にしよう。


 「豊漁祭の抽選会に人が集まったところで、一斉に起爆・・・。大爆発なんてものじゃないね。」


 「ああ、最低でもカルヴァースの町の半分は消し飛ぶぞ。」


 「やばいね。」


 「やばいな。しかも豊漁祭まであと4日しかない。」


 「・・・4日で解決?かなりキツくない?」


 豊漁祭中に行われる抽選会。その大量に人が集まるタイミングでの大爆発。敵がこの入場券を使って何をしようとしているのか、それに気付いたナインとメイ。


 だがそれと同時に、残り時間が全然ない事にも気付く。


 今日が27日。豊漁祭は31日。抽選会は夜に行われるので、今日と当日を含めても残りが4日だ。


 時間が無い。


 「どうする?やっぱり突撃する?」


 領主館への突撃。以前言った半分冗談くらいのつもりの案が現実味を帯びてくる。


 そのくらいの状況だ。


 だが焦るナインとは逆に、メイは違った。


 「それはたぶん最後だね。今やれる事は違うよ。」


 「あるのか?」


 突撃は最後って事はいずれやるのか。それより、今やれる事って何だ?何か手があるのか?


 期待を込めた目でメイを見つめるナイン。そんな視線を受けるメイは、嬉しそうに小さな体で胸を張る。顔もどことなくドヤ顔だ。


 「ふふん。時間が無いし、向こうから来てもらおっか。」


 「うん?」


 来てもらうって、グレンとルチルか?いや、違うよな。じゃあ誰をだ?


 よく意味がわからない事を自信満々の態度と表情で告げるメイに、ナインは首を傾げる。


 ニヤリと音が聞こえてきそうなほどの悪い笑みを浮かべたメイは、両手で棒を握るような体勢になる。そして手首を返し、見えない棒をクイッと動かすような動作をする。


 「釣りをしようか。」

次回は月曜日です。

それでは。

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