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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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116 吸収と過剰充填


 「・・・開いた。」


 メイが小さな声で作業の終了を告げた。どうやら爆発はしなかったようだ。まずは一安心である。


 「お疲れ様。」


 かなり集中して作業していたようだったので、労いの言葉をかける。それからナインは、開けられた入場券の中身をそっと確認する。


 手のひらサイズの入場券の中には、赤と黒と透明の石、それとびっしりと隙間無く何かが描き込まれた板が入っていた。


 おそらくこの何かが描き込まれた板が、魔道具の回路だろう。ナインの目には、迷路に魔法陣を足したようなものにしか見えず、何が何だかさっぱりわからない。


 それから、赤い石は炎属性の魔石、黒が闇属性の魔石で、透明が無属性の魔石だろう。たぶんだが、この炎属性の魔石が爆発していたのだと思う。回路が読めないので、仕組みについてはこれもさっぱりだ。


 「・・・なるほど、こうなってたのか。」


 真剣な眼差しで回路図を見ていたメイが、納得するように呟く。どうやら何かわかったらしい。


 「どうなってたんだ?」


 「うんとね、まず回路を読み取った結果、これには6つの効果が描き込まれてたんだよ。」


 「6つ!?識別と隠蔽だけじゃないのか?」


 3倍もあったのか!?


 「うん。識別と隠蔽。あとは送信、受信、充填、吸収だね。」


 「送信と受信に・・・充填と吸収?何だそれ?」


 送信と受信が何故あるのかは何となくだがわかった。たぶんだが、送信はこの入場券の位置情報を送信し、受信は、遠隔で起爆をするための信号を受信するためだろう。


 ならば充填と吸収は何だ?


 この効果が何のためにあるのかわからず、ナインは首を傾げる。


 「充填と吸収はね、この入場券を爆発させるための効果だよ。」


 「充填と吸収で、爆発?どうやって?」


 何をどうすればこれが爆発するんだ?


 「うーん、それを説明する前に、まずはこの入場券の効果を1つずつ説明するね。」


 「わかった。」


 入場券を固定具から外し、回路が見えやすいようにテーブルの上に置いたメイは、目線をナインに移すと説明を始めた。


 「まずは識別から。これは、この中にセットされてる無属性魔石の魔力を使用して発動している効果だね。効果内容は予想していた通り、入場と抽選の際の個体識別で合ってたよ。」


 識別の作動方法と効果を説明していく。効果内容は予想通りのもので、とくに驚きはなかった。


 「次に2つ目の隠蔽。これも予想通り、このセットされている闇属性魔石の魔力を使用して発動しているね。効果も予想から外れず、魔力隠蔽だね。」


 これも事前の予想から外れたものではなかった。新たに判明した次の効果からが本番だろう。


 「3つ目と4つ目。送信と受信。これは、無属性魔石からの魔力で発動している効果だね。常に位置情報を送信して、ある特定の信号が来たら受信する。っていう効果が描き込まれてたよ。」


 予想が当たっていたが、何にも嬉しくなかった。それよりも特定の信号ってのは何だろうか?質問をしたいが、まずは効果を説明すると言われているので、今は我慢して大人しく聞くことにする。


 「5つ目と6つ目の充填と吸収。これは正確に言うと、魔力充填と魔力吸収って名前だよ。そしてさっきも言った通り、この効果で入場券を爆発させている。」


 こんな小さい物を、たった2つの効果で爆発させている。しかも火柱が上がり、人が死ぬほどの。


 「まず魔力充填について。これは何かに魔力を注ぐって効果だから、発動に魔力は使用しない。次に魔力吸収は、闇属性魔石の魔力を使用して発動するね。これの効果は、半径1メートル以内から魔力を吸収する、って具合だよ。それじゃあ、このまま爆発までの仕組みを説明するね。」


 6つの効果を説明したメイは、そのまま爆発が起こる流れを説明するようだ。


 質問したい事があったが、爆発の仕組みの中に答えがありそうなので、ナインはこのまま大人しく聞くことにした。


 「仕組みは単純で、まず、特定の信号を受信する。すると、魔力充填と魔力吸収が発動する。魔力吸収が半径1メートル以内から魔力を吸収し、魔力充填の効果で、吸収した魔力と無属性魔石の魔力が炎属性魔石に流れ込む。そして魔力が過剰充填された炎属性魔石が暴走。魔力が膨れ上がり大爆発。って流れだね。」


 「・・・そういう事か。」


 受信は充填と吸収を発動させるためのものだが、この効果から爆発が始まるので、起爆のためで間違いなかった。


 そして魔力吸収。吸収範囲が半径1メートルという事は、所持者から魔力を吸収する事を前提としているというのだろう。


 所持者の魔力と無属性魔石の魔力を充填の効果で流し込み、炎属性魔石許容量を超えさせ、爆発させる。


 よくわかった。これは完全に人を殺すための爆弾だ。そして、これを作った奴は最低だ。


 「ふぅー・・・。」


 湧き上がる怒りを抑えるため、下を向いてゆっくりと息を吐く。少しずつ落ち着いてはくるが、芽生えた怒りが消える事はない。


 さらに落ち着かせようと、メイに質問を投げかける。特定の信号については説明中に判明したので、違う質問だ。


 「これ、入ってる魔石って全部Fランクだよな?過剰充填されただけで何であんなに大きな爆発になるんだ?」

また明日。

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