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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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115 危険な分解


 推測と推理によって色々と判明した話し合いから一夜明け、今日は10月27日。


 朝食を済ませたナインは、メイだけを連れるとカルヴァースの外に出てきた。


 「もう少し離れるか。30分くらい森に入ったところでいいよな?」


 「そうだね。そのくらいなら何かあっても気付かれ難いんじゃないかな。あと、念の為開けた場所にしよう。」


 「りょーかい。それじゃあ、ささっと行ってささっと終わらせようか。」


 昨日の話し合いで、明日入場券を開けて中を確認する。と決まった。


 では、何故メイと2人なのか。何故森の奥なのか。


 理由は単純である。危ないからだ。


 これから僕達は、爆弾である可能性が高い物を分解する。であれば、万が一がある。


 分解中に爆発する、なんて事は普通に起こり得る。そのため、被害を受けても死ぬ事が無いナインとメイの2人だけで来たのだ。


 森の奥にしたのも、爆発してしまった時のためだ。


 町中でやって爆発してしまった場合、建物が被害に遭うだけならまだいい。だが万が一住民が近くにいたら、爆発に巻き込まれてしまうかもしれない。それと、町に近ければ爆発音や爆炎で犯人側に気付かれる可能性がある。だから離れた場所で分解する事にした。


 まあバレないように人のいない所でこそっとやろう、という事だ。


 ナインとメイは魔物に警戒しつつ、森のより深い場所に向けて足を進めていった。


 「デートだね!」


 「違う。」












 森に入って30分と少し。ナイン達は森の中程にポツンと存在する、小さな池の側にいた。


 「ここなら良さそうだな。水があるお陰で湿度もある、万が一爆発しても延焼し難そうだ。」


 「そうだね、じゃあ早速始めよっか。お昼ご飯に間に合わなくなっちゃうし。」


 「わかった。メイがやるんだよな?」


 「うん。これでも魔道具作成スキル持ってるからね!昔取った杵柄ってやつだよ。」


 ナインはマジックバッグから野営用の簡易テーブルと椅子を取り出し、なるべく平らな地面に設営していく。


 メイは魔道具作成スキルも持っているらしい。まあ2000年も生きているのだ、時間も沢山あったのだろう。その長き年月の中で、彼女が魔道具製作に手を出していても別におかしくはない。


 「伊達に歳重ねてないな。」


 「・・・年寄りだって言いたいのかな?ねえ?」


 「っ!?」


 失言だった。やばい、目がすわってる。


 分解の準備をしながら、何とかメイの機嫌を戻す方法は無いかと必死に頭を巡らせる。高い湿度と吹き出す冷や汗で、体が物凄く不快だ。


 し、仕方ない、身を削ろう。これも自業自得だ。


 「ごめん。今回の事が解決したら1個だけお願い聞くから許して。」


 おそらくメイにはこれが効く。


 「・・・なんでも?」


 条件を吊り上げてきた。しかし、今のナインにはノーとは言えない。それにこんな事に時間を使うわけにもいかない。


 「はい・・・。」


 なので抵抗する事無く、承諾を選択した。


 「ならいいよ!・・・うへへ、なにお願いしよう。」


 変なお願いでない事を切に願うばかりだ。・・・流石に自重する、よな?あと、その笑い方はやめなさい。


 ナインは声に出さないように溜息を吐き、簡易テーブルに入場券を1つ置く。


 ここからはメイの仕事だ。


 「ほら、準備できたよ。」


 「はーい、じゃあ始めちゃうね。」


 「気をつけてな。」


 いつも通りな様子で椅子に座るメイに声を掛け、ナインは彼女の斜め後ろで待機する。魔道具に関してさっぱりわからないので、見守るくらいしかやる事が無いからだ。


 メイは置いてある入場券を一通り確認すると、自身のマジックバッグからガチャガチャと音がする箱を取り出した。


 これは昨日ルチルから借りた魔道具用の工具セットだ。中には金槌やらペンチやら各種ドライバーやらと、色々な工具が入っている。


 魔道具が大好きなルチルは笑顔で、『外出先でも魔道具をいじれるように、常に持ち歩いているんです!』と言っていた。


 そこから、彼女の魔道具愛に溢れた話に飛びそうになったのでかなり大変だった。趣味人は熱量がやばい。

 

 メイは工具セットから、魔道具を動かないようにする固定具とマイナスドライバー、小さな金槌を取り出す。


 そして固定具で入場券を固定すると、マイナスドライバーを側面の一部に当て、ドライバーの後ろを金槌で優しく叩き始めた。


 コンッ、コンッ、という音が森に小さく響いていく。


 後ろから覗くようにして作業を見守るナインは、正直なところもっと色々な道具を使って慎重に開けると思っていた。優しく叩いてはいるが、分解方法は意外と荒いようだ。


 そうして数分、万が一の爆発に備えながら彼女の作業見守っていると、カチャンという音が響いた。


 「・・・開いた。」

また明日。

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