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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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114 豊漁祭入場券


 「・・・これだ。」


 そう呟くナインの手には、豊漁祭の入場券が握られていた。


 少し厚みのあるカード状の魔道具。会場への入場と、祭りの最後に行われる抽選会のための物。


 手のひらサイズと小さく、一つ2000トリアという一般人でも容易に購入可能な金額。


 豊漁祭の時期は祭り目当ての観光客が増え、この入場券を持つ者は多数いる。


 これだ、これが爆弾だ。


 ナインの直感が、間違いないと声を上げている。


 「・・・それ、入場券、あっ。」


 最初は不思議そうに見ていたメイも気付いたらしく、声を途切れさせるとナインの手元を凝視する。


 「わ、私も持ってます。・・・これですよね?」


 気付いたルチルも、急ぎバッグから入場券を取り出し、テーブルの上に置く。


 ナインもバッグから残りの2つを取り出すと、ルチルの入場券の横に置いた。


 「これが爆弾なのか?そうは見えねえが・・・。」


 腕を組み、眉間に皺を寄せたグレンがテーブルに置かれた計4つの入場券を見ながら感想を溢す。


 彼の言葉に同感だ。ナインにも爆弾には見えない。


 だが、これが爆弾だ。何度も言うが間違いない。


 「もしかしたら他にも合致する物があるかもしれない。でも今わかってる物だと、これだけなんだ。魔道具であり、持ち歩けるサイズでもあり、大概の人が持っている物でもある。」


 あと、もう一つ。


 「そして、これは領主が発行している物だ。」


 豊漁祭の運営責任者である領主が発行した入場券。


 警備隊に命令し、ルチルを冤罪で逮捕しようとしたこの町の重役か領主。


 怪しいなんてものじゃない。


 僕には真っ黒に見える。


 それと、この入場券を手に持った時にもう一つ気付いた。


 「あとさこれ、入場券と抽選券っていう2つの効果を持った魔道具なんだよな?でも、その割には魔力が弱くない?ほとんど感じられないくらいなんだけど。」


 そう、魔力だ。


 感じられない訳じゃない。だが弱い。小さな火を出すだけの着火の魔道具と同程度か、もしくはそれ以下だ。


 正直、全く魔力が感じられない訳ではなかったので、それほど違和感を感じなかった。


 だが、今ならおかしいと思う。効果に対して、魔力が弱い。これは変だ。


 「・・・確かに。おかしいです。入場券と抽選券ということならおそらく、魔道具自体を個別に識別するための回路が必要になります。回路自体はそう複雑じゃないのでこのサイズでも問題無く入りますが、魔力はそれなりに必要になります。であればもっと魔力が、それこそ水生成の魔道具かそれ以上の魔道具くらいの魔力が感知出来るはずです。」


 「てことは、魔力隠蔽の回路もある?識別の回路が問題無く入るなら、隠蔽の回路も入るかな?」


 「おそらく、入ると思います。そうなるとこの中には、闇属性の魔石が入ってる事になりますね。魔力隠蔽の回路には、闇属性の魔石が必要ですので。」


 「闇属性の魔石もか。なら中はかなりギチギチに作られてそうだね。」


 「そうですね。それと、たぶんこれを作った人はかなり高レベルの魔道具作成スキルを持っていると思います。このサイズに個別識別、魔力隠蔽、2つの効果を入れていますから。」


 魔道具が好きなルチルと、長命故に知識が豊富なメイが何やら盛り上がり始めた。


 正直、言ってることの半分くらいしかわからない。隣のグレンも話についていけないのか、腕を組んだまま眉と口の端を下げている。


 それでも理解できた範囲で、何とか話を整理していく。


 魔道具自体を個別に識別する回路を入れた場合、必要魔力量が多くなるので、もっと魔力が感じられるはず。


 魔力を感じられないのは、闇属性の魔石をセットして魔力隠蔽の回路も入れているから。


 これだけの回路と魔石をこのサイズに入れれるのは、高レベルの魔道具作成スキル持ち。


 これで合ってるかな?まあ間違っててもメイとルチルが理解しているので大丈夫だろう。わからなくなったら聞けばいいや。


 さて、それはそれとして。


 「あー、盛り上がってるとこごめん。2人に聞きたいんだけどさ。」


 「ん?何?」


 「何ですか?」


 未だ1番重要な部分が不明である。


 「2人から見て、これがどうして爆発するのかって、わかる?」


 この魔道具の爆発方法だ。起爆方法では無い。


 起爆方法については簡単に予想がつく。たぶん、遠隔だろう。時限式も感知式も、今回の犯行方法には合わないから。


 なので爆発方法だ。


 識別と隠蔽の回路を組み、動かすための燃料となる、無属性と闇属性の魔石が中に入った入場券の魔道具。


 これが何で爆発する?


 「それはねえ。」


 「それはですね。」


 メイとルチルがそんなの簡単だとでも言いたげな顔をしだす。


 そして声を揃え


 「「開ければいいんだよ。」です。」


 至極簡単な方法を口にした。

また明日。

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