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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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111 疑問と推測


 「・・・すみません、お待たせしました。」


 涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで拭ったルチルが、鼻が詰まった声を出す。


 鼻水がちょっとだけ見えてるのは見なかった事にしてあげよう。乙女の情けだ。


 「大丈夫だよ。あ、ルチル、少しこっち向いて。」


 「はい、あぶぶっ。」


 彼女の鼻から見えた液体に気付いたメイは、ポケットかはハンカチを取り出すとすぐさま問答無用とばかりに拭い始めた。


 変な声が聞こえた気がしたが、聞こえなかった事にしてあげよう。これもまた乙女の情けだ。


 「よし!これで大丈夫だね。」


 「ありがとうございます、メイさん。」


 お礼を言うルチルの顔に、しっかりとした笑顔が浮かぶ。


 気持ちの方も大丈夫なようだ。良かった。


 無事に落ち着いた姿を見て一安心し、ナインはカップを手に取り、ゆっくりとお茶を飲む。


 向かいから聞こえる女性陣の楽しげな声を聞き流しながら、ルチルが落ち着くまでしていた思考に戻る。


 これは何度も考えた事だが、そもそも何故、6日前のあの時に警備隊はルチルを確保しようとしたのか。


 彼女を犯人にしたいのであればいつでも出来たはずだった。だがこの事については、何となくだが今は予想がついている。


 ルチルを捕まえても良い状況になったからだろう。


 なにせ、ルチルが警備隊に囲まれた6日前のあの日から爆発が起きてないからだ。


 6日前、もしくはその前の爆発で、犯人側はもう爆発を起こす必要が無くなった。そして事件の幕引きをする為に、ルチルを犯人にし、警備隊を動かして確保に動いた。


 ただ、公表しないであろうと思える犯人にルチルが選ばれた理由は不明だ。一応これかな?と思える理由はあるのだが。


 理由として浮かんだのは、ルチルがソロ冒険者という部分だ。


 パーティーメンバーが居らず、この町に彼女の事をよく知る人物が非常に少ない。そして基本的に1人で行動している。


 それ故に、味方が少なく、彼女に何かあっても気付かれにくい。


 こういった部分から、犯人役に選ばれたのではないかと思っている。


 まあ先に予想したルチル確保の状況と同様に、本当のところはわからないので合っているかは不明だ。


 一応これらの予想については、この5日間に話しているので全員が把握している事だ。


 なので、今話し合うなら別の事の方がいいだろう。


 ルチルの鼻水も治ったようなので、ナインは空になったカップをテーブルに戻し、話し合いを再開する。


 「僕さ、ちょっと思ったんだけど、今までの爆発って何かの実験だったんじゃないかって思ってるんだよね。」


 「「実験?」」


 唐突に再開された事に驚く事なく、メイとルチルが首を傾げながら聞き返してくる。


 隣に座っているグレンも、意味がよくわからなかったのか片眉を上げてこちらを見ている。


 とりあえず説明したほうが早いか、と思ったナインは、そう思った理由をつらつらと話し出した。


 「うん。僕達、警備隊が6日前の爆発のタイミングでルチルを確保しにきた理由を、捕まえても良い状況になったからだって考えたじゃん?あれからもう爆発が起きなかったらさ。」


 頭の中で何とか整理しながら、そう思った理由を一から説明する。


 「じゃあさ、捕まえても良い状況って何だ?何故爆発をもう起こさない?僕、この2つを合わせて、何か共通した理由になるような事は無いかなって色々考えたんだよ。そうしたらさ、これかな?っていうのがあったんだよ。」


 新たな爆発を起こす必要が無くなり、ルチルを捕まえて事件を終わらせても良いような状況。


 そんな都合の良い状況なんかあるのか?そう思った。


 だがあった。


 「1から9回目までの爆発事件は何らかの実験だった。そして9回目で実験が終了したので、ルチルを犯人にして捕まえ、事件を終わらせても良い状況になった。最後の爆発である10回目はルチルを犯人にするためのものだった。11回目の爆発が起きないのは、実験が終了したので必要無いから。・・・とこんな感じ。」


 理由を話し終えたナインは、口と喉の渇きを感じ、空のカップにお茶のおかわりを注ぐと一息に飲み干した。


 何とかみんなに伝わるよう、一生懸命整理して伝えたつもりだ。理解してもらえただろうか?


 3人を見回すと、下を向いたり上を向いたりと皆一様に考え込むような表情をしていた。


 上手く説明出来たという自信はあまり無いので、若干不安を感じてそわそわするが、大人しく反応を待つ事にする。


 数十秒ほどで考えと整理が終わったのか、メイが顔を上げた。


 「・・・ありそうだね。」

また明日。

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