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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
111/251

110 進まぬ捜査


 警備隊に話を聞いてから早数日、正確にはあれから5日経過した。


 今日は10月26日。時刻は夕方だ。


 本日も町で情報収集をし、へとへとになりながら宿に戻ってきた。


 そして今、全員でテーブルを囲み、夕食前にちょっとだけ会議をしている。


 この6日間、ナイン達は一生懸命情報収集に励んだ。


 だが、結果は芳しくなかった。


 いや、はっきり言おう。何も進まなかった。


 「さて・・・、どうしよっか。」


 この5日、過去の事件現場を調べたり、住民への聞き込みだったりと、今自分達にできそうな事を重点的に行った。


 その結果新たにわかったことは、


 被害者の年齢、性別などは全てバラバラ。

現場は人通りのとても少ないところで、時間もバラバラ。


 共通点と言えそうなところは、人通りが少ない場所で起きていることくらいだ。


 それと、今日までに起きた爆発は10回。ルチルが犯人扱いされたあの爆発が10回目だ。その後爆発は起きていない。


 ちなみに被害者数は9人だ。ルチルの時を抜かして1度につき1人出ている。いずれも全員死亡しているらしい。


 「どうするって・・・、うーん。」


 集まりの悪い情報に、メイも答えが出ない。


 仕方ないだろう。6日ほどかけて大した情報が集まらなかったのだから。


 「・・・もう突撃してみる?」


 あまりにも解決に進まない状況に、以前話した最終手段が口から出る。


 「領主館にか?それ選ぶのはまだ早えだろ。」


 「だよね、言っただけ。」


 「まあ気持ちはわかるがよ。」


 手詰まりのように感じるこの状況に、グレンもうんざりした表情を浮かべる。


 今の僕も似たような顔をしていることだろう。


 どうしたものか。最悪、何とかしてルチルを町から逃すのも手か?いや、指名手配とかされる可能性もあるか。そうなると他の町にも入れなくなる。


 やっぱり領主館突撃かなぁ・・・。


 「はあ・・・。」


 深い溜息を吐きながらソファに体を沈み込ませる。


 体が重くなったように感じる。まるで気持ちの重さが体にまできたような感じだ。


 ナインの溜息が妙に部屋に響いていた。


 暫し無言の時間が流れる。


 「・・・すみません、私のせいで。」


 外からのうっすらとした喧騒が聞こえる中、ルチルの掻き消されそうなほど小さな声が耳に届いた。


 すみません、私のせいで、ね。


 「違うよ、ルチルのせいじゃない。悪いのは事件を起こし、君に罪を着せた奴だよ。だから、絶対にルチルのせいじゃない。」


 下を向き、悲痛な表情を浮かべるルチルに最大限伝わるように断言する。


 絶対に違う。こんな事をやった奴が悪いのだ。巻き込まれた彼女が謝るなど間違っている。


 「私もそう思うよ。ルチルのせいじゃない。」


 「ああ、俺もだ。ルチルが悪いとは思ってねえ。」


 ナインに続き、メイとグレンもルチルは悪くないと伝える。


 「たとえ領主が相手でも、僕達はルチルの味方をする。そうじゃなきゃ、君を匿ったり、情報を集めたりなんてしないよ。だから、自分が悪いなんて思わないでくれ。悪いのは君じゃない。」


 精一杯の想いを、決意を、ルチルに伝える。


 僕達は最後まで味方であると。


 「・・・はい。すみ、ません、ありがとう、ござい、ます。」


 僕等の言葉を受け、ルチルが途切れ途切れに謝罪と感謝を口にする。


 膝の上で堅く握られた彼女の手に、ポタポタと雫が落ちていく。


 嗚咽と鼻をすする音がする中、ナイン達はルチルを静かに見守る。


 そして改めて、各々が意思と決意を固める。


 絶対に彼女を助ける。


 だって、他人を犠牲にするような奴が、僕は大嫌いだから。


 ナインは視線を宙に向けると、怒りを込めた両目でしかと睨みつけた。


 見ている先は部屋の壁や天井ではない。


 さらにその先。未だ判明せぬ、犯人へと向けて。


 領主か誰か、今はまだわからないが、待っていろ。







 叩き潰してやる。

また明日。

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