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レゾンデートル  作者: 星街海音
第二章 海町は明日を願う
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107 留守番組2


 新しいお茶を入れ、テーブルに戻ったメイとルチルはティータイムを再開した。


 「それにしても魔人ですか・・・。びっくりです。」


 お茶を一口飲むと、ルチルは先ほどの話の感想を口にした。


 驚くのも無理はないだろう。現代では、魔人と言えばラグナロク、と言うくらいに悪いイメージが付いている。あまり人に言いふらすつもりは無いが、万が一にも正体を知られないように気を付けなければいけない事だ。


 「昔は私しかいなかったんだけどね・・・。ナインの事があってちょっと眠っていたら、ラグナロクの魔人なんてものが現れてて、正直私もびっくりだよ。」


 「ラグナロクの魔人もメイさんやナインさんと同じ魔人なんですか?」


 「うーん、わかんない。まだ会った事ないからさ。でも、たぶん違うと思う。私の生まれ方ってかなり特殊な部類だったから、同じような生まれ方では無いと思うんだ。それに、ラグナロクの魔人って数がそれなりにいるらしいでしょ?同じのが1人とかならまだわかるけど、私やナインと同じのが沢山はありえないからね。」


 ルチルに説明しながら、自身が生まれた時の事を思い返す。


 私の生まれには世界が関わっている。だからこそ、ラグナロクの魔人が同じであるはずがない。


 自分で言うのもなんだが、私みたいのが何人もいてたまるか。世界が壊れるわ。


 「そうなんですね。・・・ラグナロクの魔人って何なんでしょうね。」


 「さあねぇ・・・、まあ私もナインもそのうち会う事になるだろうって考えてるから、その時にわかればいいやって思ってるよ。」


 「会う事になる、ですか?」


 「うん。何か世界中で色々やらかしてるんでしょ?だからこのまま旅をしてたら、そのうち魔人が起こす事件にばったり遭遇しそうだからね。そして私の夫が首を突っ込む。ほら、会う事になるでしょ?」


 今後世界中を旅する予定なので、遭遇する確率はかなり高いと思っている。


 そしてナインならば間違いなく首を突っ込む。いや、巻き込まれる。そういうタイプなのだ。


 ルチルが落ち込みかねないので口には出さないが、今回の彼女との事も、巻き込まれながら首を突っ込んだくらいの感じだ。


 「なるほど、ありそうですね。それはそれとしてさっきのお話にもありましたが、夫ですか。今のメイさんの姿でそう言うと、違和感が凄いですね。」


 「いいでしょ。ナインもいいって言ってたんだし。」


 「・・・諦めたのでは?」


 「納得したんだよ。」


 私の自信を持った発言に、ルチルが溜息のみで返事をする。


 返事の仕方に不満はあるが、私に対しての硬さがだいぶとれて、リラックスしているみたいなので許すとしよう。


 それからは、ルチルからの翠の賢者についての質問に答えたりしながら、お昼までティータイムを楽しんだ。












 昼食を買い置きのパンでささっとすませ、再度世間話に戻った2人。


 その後も魔道具の話や、ノースト大陸の話、果てはこんな冒険者に出会ったなど、色々な話で盛り上がった。


 そうして時間が過ぎていき、時刻が夕方に近くなっていくと、話題が今夜の夕食をどうしようか、という話に変わった。


 「今日はどうしようかね。食材は何が残ってたかな?」


 マジックバッグに手を入れ、ゴソゴソとあさると中身を一つずつテーブルに出していく。

 

 「お肉が多いね。逆に野菜は全然無い。」


 「私は、そもそも持ってないです・・・。お菓子しかなかった・・・。」


 大きなリュックタイプのマジックバッグを、恥ずかしそうにしながら何とか自分の体で隠そうとするルチル。どう考えても体のサイズ的に隠れきらないのだが、ちょっと可愛いので何も言わないでおく。


 「これはナイン達に買ってきてもらうしか無いね。ルチルは食べたい物とかある?」


 「あ、思念会話でお願いするんですね。ならお魚とか貝が食べたいです。」


 思念会話は、ナインとメイだから出来る荒技だ。1つの魔石に2人の心が入り、文字通り繋がっているので思念での会話が可能なのだ。


 ちなみに、思念の有効距離は1kmほどだ。そしてこの距離は、ナインとメイが物理的に離れられる距離でもある。


 もし、ナインとメイが1km以上離れてしまうと、メイが肉体に投影している意識の接続が強制的に切れてしまう。そうなると肉体がその場に放置される事になり、その後維持ができなくなった肉体は、時間経過と共に消滅する。


 後に残るのは、魔石とメイの装備と衣服という事だ。


 「おっけー。じゃあ苦手な物はある?」


 「・・・虫は苦手です。」


 「それは私も嫌だよ。じゃあ魚介と野菜なんかをお願いするね。」


 「はい。それでお願いします。あ!お菓子もお願いしましょう。」


 もう明日のお茶の時間が楽しみなのか、ルチルが楽しそうに笑いながら追加を願いでる。


 その表情には、昨日の悲壮感あふれる様がほとんど見えなかった。


 「ふふ、わかったよ。じゃあちょっと待っててね。」


 ニコニコと笑うルチルの姿を見ながら、メイはナインに思念で話しかける。


 『おーい、今大丈夫?買い物してきてもらいたいんだけど。』

また明日。

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