104 ヘタクソと発見
あの後、数十分ほど爆発現場を調べたが、結局犯人に繋がるような物は何も見つけられなかった。
まあそう簡単には見つからないだろうと思っていたので、想定内ではある。
こういう事は地道にやっていくしかない。
そうして現場を調べ終わったナインとグレンは、予定通り警備隊に探りを入れるため、巡回ルートであろう大通りへやってきた。
「巡回中の人に聞くのか?」
「人員によるな。」
「人員?」
「ああ、出来れば隊長クラスの奴に行きてえ。そう何度も探りを入れれるわけじゃねえからな。行くなら情報を持ってそうな奴に行った方がいいだろ?」
グレンの言葉に深く納得する。
何度も声をかける訳にもいかない。何度もやれば目をつけられる可能性がある。そして目をつけられれば動きにくくなる。
最悪ルチルを匿っている事すらバレかねない。
だからこそ、探るなら警備隊や上の動きを把握していそうな隊長クラスという訳なのだ。
「なるほど。少ないチャンスを無駄にしたくないしな。」
「そういう事だ。そんじゃとりあえず、このままぶらつきながら警備隊を探すぞ。巡回してる奴らの中に隊長クラスがいたら話しかける。いなければ門付近にある警備隊詰め所に行く、って流れで行くぞ。」
「りょーかい。あ、でも隊長クラスってどうやって見分けるんだ?」
「装備を見ろ。一般隊員より質が良くて装飾なんかが付いてるのを着てるのは、大概役職が上の奴だ。」
「りょーかいりょーかい。」
こういった情報収集に慣れていないナインの代わりに、グレンがすらすらと作戦を決めていってくれた。
見分け方も教えてくれたので、さっそくとばかりにナインは周囲を見回し、警備隊の姿を探す。
すると横を歩くグレンから溜息が聞こえてきた。
「キョロキョロすんな。観光客が多いとはいえ、そんな真剣な目で見回してたらいくらなんでも目立つ。もっと自然にしろ。」
「う・・・、ごめん。こういう情報収集みたいなのやった事ないから慣れなくて。」
「お前目覚めてから1ヶ月半くらいだろ?それでやった事あったら怖えよ。」
呆れが混じった注意を受けたが、慣れてない事は理解してくれているようだった。
自然にしろって言われても、全然わからん。いつも通りの感じか?
普段町中を歩いている時の感覚を思い出しながら、自然になるように周囲に目を向けようとする。
だが、余計に意識しすぎたためか、動きがぎこちなくなった。
あれ?いつもどうやってたっけ?
「・・・何やってんだ?」
またもグレンから呆れと溜息が漏れる。
「自然にやろうとしたんだよ・・・。」
「めちゃくちゃ不自然だぞ。」
「だよね・・・。なあ、何かコツとかない?」
これから警備隊に探りを入れに行くというのに、このままでは爆発事件とか関係無しに怪しい奴だと思われてしまう。なので早急に何とか改善しなければいけない。
「狭い範囲を集中して見ようとすんな。そういう見方をすると視野が狭くなる。もっと広い範囲を浅く見ろ。そうすりゃ視野が広がっから目に力も入んねえし、キョロキョロ周りを見ることもねえ。」
「広く浅く・・・、むむ。」
コツらしきものを教えてくれたが、正直難しい。どうしても広く見ることが出来ずに、一点に集中してしまう。
それでも一生懸命、教わったやり方を実践し続けていると。
「はぁ・・・、やっぱお前は探すな。普通に観光してろ。」
グレンから戦力外通告が言い渡された。
ごめん。
「いたぞ。」
大人しく町の観光をしていると、横を歩くグレンから小さく鋭い声がした。
すぐに反応し、グレンの視線の先を追う。
「あれか。あの真ん中が隊長か?」
まだ距離があるので遠目で見ただけだが、確かに3人組の中の1人だけ、今まで見た警備隊員の装備とは少し違う人がいる。
他2人と比べ、防護範囲が広く、質の良さそうな鎧を着用している。手に持つ槍も一般隊員より良さそうだ。
「ああ、そいつだ。しかし正直助かったぜ。詰め所まで行けば流石に怪しいからな。マジで行きたくなかった。」
「まあ怪しいって言うか、ちゃっとおかしいよね。」
「だよな。」
詰め所にまでやってきて爆発事件について聞いてくる奴とか、自分が警備隊員だったら『何だこいつ?』と思ってしまうだろう。
正直ナインも行きたくないと思っていたので、表には出さなかったが見つかってくれて内心かなり喜んでいた。
「よし、そんじゃあ俺が話しかけるから、ナインは黙って横にいろ。いいか?喋るなよ?」
「え?でも「だまって横にいろ。」
「はい・・・。」
コツを聞いても改善されず、顔と態度に出やすいナインは、ここでも戦力外であった。
次回は木曜日です。