009 自分の現状を自覚する
本日も2話投稿です。
大体1日2話くらいになると思います。
ストックが多くなったら増えるときがあるかもしれません。
「レベル二のオオカミでこれか・・・。」
だいぶ怪我をしている。
「激闘だったわ。」
素直な感想がでた。
実際、武器も防具もない状態だったのであながち間違いではなかった。
『お疲れ様。頑張ったね。』
メイが労いの言葉をかけてきた。
戦闘中に一切声をかけてこなかったのは、邪魔をしないように気を遣ってくれてたのだろう。
「疲れたわ。ていうかこの怪我どうしよう。」
返事をしながら今も血をだらだらと流す怪我に目を向ける。
治療するあても無ければスキルもないので困り果てる。
だが、そもそもリストには治療に使えるスキルはなかった。
『怪我なら大丈夫だよ。』
「ん?どういうこと?治せる場所とかあるのか?」
なんでもないような感じで言われたことに若干混乱しながら聞き返す。
『言われた通りにやってね。まず体の中にある魔石を意識して、そしてそこから力を引き出すイメージをすること。』
問答無用にやれと言わんばかりだったので大人しく言われた通りにやってみることにする。
体の中にある魔石を意識・・・。
よくわからないけど自分の体にあると言い聞かせるように意識する。
次にその魔石から力を引き出すイメージをする。
これは割とすぐにできた。
『できたら次はその力を怪我がある場所に持っていって、治るイメージをしながら"治れ"って念じて見て。』
そんな無茶苦茶な。
それで治るの?おかしくない?
そう思いながらも言われた通りイメージして念じる。
"治れ"
しっかりイメージできていたのか、まるで時間が巻き戻るように傷が塞がっていった。
「うえっ!?」
変な声を上げながら傷が酷かった左腕を持ち上げ、右手で触れてみる。
そこには傷が完全に塞がり、流れた血だけが残っていた。
「・・・なんだこれ?」
記憶と知識が無くてもこれはおかしいとわかる。
『最初の説明で、私たちの体は魔力で作られているって言ったでしょ?ゼロから肉体を作るのは時間も魔力も大量に必要だけど、怪我くらいなら魔石から魔力を持ってくれば、肉体に補充するって形ですぐに治すことができるの。』
そういえば言ってたな。
そうか。魔力で作っているんだから魔力で治すこともできるわけだ。
便利だな。
『一応言っておくと、私とナインしかできないからね。』
「そりゃそうだろうな。」
大丈夫。言わなくてもわかってる。
改めて今の自分は不思議な存在だと自覚する。
人前とかでは気をつけないとな。
うっかりこんな治し方をすれば大変なことになりそうだ。
そうして怪我を治して自分の現状を自覚し終わったところで、倒したオオカミに目を向ける。
「これどうする?」
刃物もないので解体はできない。
『置いて行こうか。そのうち他の動物か魔物が来て食べるから。』
メイが置いていくことを提案した。
まぁそれがいいか。
他の生き物が食べるなら無駄になるまい。
オオカミから目を離し、周囲を見回して進行方向を確認する。
ほぼこの場で戦闘していたので迷うことはなさそうだ。
「この先に水辺とかないかな?汚れたから洗いたんだけど。」
左腕と右脚は血まみれであり、右手もオオカミを殴ったので汚れていた。
『たしか三時間ほど歩けば、大きくはないけど湖があるよ。』
メイから求めていた答えが返ってきた。
よし!やる気出てきたぞ!
「じゃあ少し急ぎ目で行くとするか。」
そう言うないなや、先程よりも早歩きで先を進み始めた。
オオカミと戦った場所から歩き続けて二時間ほど経過した。
少しだけ早歩きで来たので、湖のある場所までもう少しである。
僕は歩きながらふと周りの木に目を向け、一人恨み言を口にする。
「この森に生えている木と草。なんでこんなに細くてトゲトゲしてるんだよ。服の代わりにできないじゃんか。」
歩き始めたときくらいから時おり木や草なんかを見ていたが、どうもこの森に生えている植物は、集めて服の代わりにするのに適さない種類ばかりのようだ。
『そうだねぇ。何か服の代わりになるものとか落ちてないかな?』
独り言のつもりだったが返事が返ってきた。
「落ちてることってあるのか?」
こんな森に?
『可能性はあるよ。この森に来るのってまだ初心者の冒険者とかだから、さっきのオオカミとか魔物なんかに追われて荷物を置いて逃げていくって言うこともあるし。』
ほう。そんなこともあるのか。
ならいるかわからないその初心者には申し訳ないが出来れば置いていってくれ。
マントとかでいいから。
『そう言う意味ではこの先の湖なんていい場所かもね。水辺で休憩中に襲われてーってこともあるし。』
よしよし。
ぜひ置いていってくれ。
ナイフとか武器も頼みます。
『思いが強すぎて私に心の声漏れてるからね。』
どうやらメイに隠し事は難しいようだ。