異世界転生して得た精神操作能力で、悪さをする奴等を根絶やしにしていきます
(こりゃ駄目だ)
見切りを付けた瞬間、そう思った。
最も古い記憶は、親に殴られてる所だった。
なんでそうなったのかはわからない。
だが、おそらく三歳か四歳くらいの頃である。
そんな子供の時分を親は容赦なくぶちのめしてくれたのをおぼえてる。
それからも何度も殴りつけられた。
なんでかはわからない。
おそらく、機嫌が悪かったのだろう。
非があるから叱ってるわけではない。
その事は、殴られてる本人がよくわかっていた。
(児童虐待か)
前世の記憶に照らし合わせ、すぐにこれがどういう状態かわかった。
生まれる前、地球の日本にいた頃、こういった社会問題があるのをおぼえている。
自分がそれを受ける立場になるとは思わなかったが。
だが、されてる方はたまったものではない。
理由もなくいたぶられる筋合いはない。
(じゃあ、やるしかねえか)
やられたら、やりかえされる。
ふざけた態度には、非道な報復が待ってる。
それを教えてあげねばならない。
幸い、転生者には能力があった。
前世の日本でよく見たお話にあったものだ。
チートな異能力。
便利なこの能力をもって生まれた転生者は、迷う事なく使っていく。
転生者が持ってるのは、精神や意識に作用するもの。
見た目でわかるような派手な能力ではない。
しかし、効果は抜群だ。
接触しないと使えないが、触れてる生物になら効果をおよぼせる。
それを虐待されてる時に用いていく。
まずは何もしない母親。
父親の暴力を止めようともせず、黙ってみている。
それが暴力を恐れてなら仕方が無いと思えるのだが。
それが当たり前と思って見過ごしているのだ。
許せるわけがない。
なので、ろくでなしの父親がいない日中に精神を操作していく。
接触して精神に作用をおよぼしていく。
とりあえず、自分に暴行を働かないように。
それと、指示した時には転生者に従うように。
木偶人形状態にして、常に言うことに従わせることもできるが、それは避けた。
自分の意思で動かないと、日々の生活が面倒になる。
なので普段は今まで通りに動くようにした。
それから夕方。
父親が帰ってきた時に行動していく。
農作業から帰ってきた父親に母親を抱きつかせて動きを封じる。
その間にろくでなしに接触し、精神に制御をかけていく。
まずは、横暴を働こうとしたら激痛が走るようにした。
癇癪持ちのろくでなしである。
その癇癪が働いたら、即座に神経に負担をかける。
表面的な外傷はないが、受ける痛みは暴行などの比ではない。
痛みを感じる神経そのものに刺激を与えるのだ。
苦痛は致命傷に匹敵するものになる。
それが一カ所では無く全身で起こるのだ。
無痛症でもない限り耐えられるものではない。
母親を振りほどこうとしたろくでなしオヤジは早速その痛みをおぼえる。
床の上にうずくまっていく。
それを見て転生者はいい気味だと思った。
ざまあみろ、とも。
ともかくこれで、ふざけた暴力から解放される事になった。
とはいえ、これで終わりにするつもりはない。
問題なのは自分の両親だけではない。
村の大人全部に問題がある。
こういった横暴を当たり前ととらえている。
実際、先祖代々こうした横暴が当たり前の状況にいたのだろう。
それ以外を見た事がないから、暴行がまかり通ってるのが異常だと気付かない。
この為、村の大人の大半は横暴にふるまってる。
そういった者達が二度と暴行を働かないようにしていく。
父親に施したのと同じ事をしていく。
癇癪を起こしたり、暴行を働こうとしたら痛覚に刺激は走るようにする。
また、指示があったら従うようにも。
これを繰り返していき、村長以下村の者全員を制御下においた。
それこそ子供にいたるまで、暴行を働こうとしたら激痛が走るように。
おかげで村の中から横暴な売るまいが消えていく。
大人だけではなく、子供の中にもいる乱暴者。
これらも拳骨を飛ばす事がなくなった。
おかげで転生者の生活は格段に良くなった。
もっとも、大人も乱暴者も大変そうではある。
なにせ少しでも苛立ちをもよおせば、その瞬間に激痛が走る。
その度にそこら中で倒れて悶える事になる。
ただ、悲鳴は上がらない。
激痛のあまり、声が出ないのだ。
そんな環境の中にいるおかげで、転生者は穏やかに過ごす事ができた。
家庭環境は相変わらず悪いが、暴力がないだけでも格段に過ごしやすい。
それだけで充分だった。
もっとも、これで終わりにするつもりはなかった。
快適とは言いがたい世界である。
産業革命前の科学・技術水準なのだ。
現代日本を知る転生者には住みづらい。
そこを、せめてもう少し快適に暮らせるようにしていこうと思った。
その為に、洗脳や精神制御の範囲を広げていく。
近隣の村や町、領主などの貴族。
これらにもあの手この手で接触し、精神制御をしていく。
そうして快適な環境をととのえさせていく。
まずは社会基盤の整備を。
出来ることは限られてるが、やれる事は全部やらせていく。
しなければならない整備や修繕を怠ってる事が多いからだ。
必要な費用を懐に入れて散財してる事が結構ある。
それをさせずに、環境整備に費やさせていく。
効果はすぐには上がらない。
少しづつ整備は進んでいくが、全てが完成するまで時間がかかる。
成果が出て来るのに、どうしても数年の時間がかかる。
こればかりは我慢して待つしかない。
だが、その間に多少なりとも過ごしやすい環境をととのえる。
住まいは近隣でもっとも豪勢な商人のところに。
生活費は他の者達に出させ、転生者は働かずに生活していける。
周りの者達にはそれがおかしいと意識しないように精神をいじってる。
さすがに贅沢はしないが、衣食住が保障された生活を確保している。
また、使ってるうちに能力も強化されていく。
最初は触れなければ効果が出なかったが、それが触れずとも影響を及ぼせるようになる。
効果範囲も広くなっていく。
更に範囲内にいる者達全てに影響を及ぼせるようにもある。
出せる指示も複雑なものにしていける。
この力を使い、周辺一帯を支配下においていく。
市町村から都道府県、さらには地方に影響を及ぼし。
それが国内全域になり、周辺国全体にもなっていった。
その全てから横暴を消し去っていく。
それこそ悪口ですら言えなくさせた。
おかげで世界は平和になった。
騒動を起こせば激痛が走るのだ。
悪さなどしようがない。
これが社会全体を発展させていく事にもなった。
功績を奪ったり、優れた者の足を引っ張る者が消えたのだ。
やろうとした者は激痛に苛まれる事になる。
おかげで社会全体が効率よく動くようになった。
様々な発見や発明も出て来るようになった。
これらが世の中を一気に変えていく。
科学が発展していく。
産業革命が起こっていく。
各産業の生産性が上がっていく。
新しい職業が発生していく。
生活環境が改善されていく。
一年二年では大きな変化は見られない。
だが、五年もすれば明らかに何かが変わる。
十年もする頃には劇的な変化が訪れている。
二十年もすれば、以前の生活様式が消えて新しいものに書き換わってる。
その様子を転生者は眺めていた。
その時で最善の生活が出来る場所で。
街角で。
最新の研究施設で。
政治の中心地で。
名所の観光地で。
そうした中で、新たに生まれてくる者達にも仕掛けを施していく。
横暴な事をしたら激痛に苛まれるように。
中にはそれに耐えかねて死ぬ者もいた。
どうしても横暴や癇癪をおさえきれず、常に激痛にみまわれる者もいた。
暴力性を持って生まれる者もいる。
そういった者達は救いようがない。
ただ、転生者はそれらを集めて、刑務所に放り込んだ。
一生外に出さないという条件で、その中では精神の制限を解除した。
刑務所内では何をしても自由という条件もつけた。
外にでない限り、どんな悪行も自由と。
別に情けをかけたわけではない。
問題を起こす人間がどういうものなのか。
問題が起こるというのはどういう事なのか。
それを知る場所を作りたかっただけである。
暴力を知らない世代も出てきている。
それらに横暴がどんなものなのか、どれほど危険な者なのかを見学させるためだ。
知っていれば、決してこのようなものを野放しにしようとは思わなくなる。
また、素質のある者を見つけて、自分と同じ能力を開花させてもいった。
転生者と同じように、横暴を封じ込める為にこの力を使うよう制限をかけて。
転生者の死後も同じようにして能力を継承、後世につなげさせていく為に。
せっかく作った平和な世界だ。
破壊されたくは無い。
こうして世間から不当な暴力を排除した。
その世界で転生者は平穏な人生を送り、寿命を向かえた。
「良い世界だった」
自分の作った世界に満足しながら息を引き取っていく。
その死後だが。
転生者の望み通りになっていく。
不毛な暴力は鳴りを潜めた。
問題を超す者は刑務所に入れられていく。
平穏が世界を満たし、穏やかな発展を続けていく。
誰もが思い描く楽園がそこにあった。
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