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魔道士の塔。

 目を開けるとそこは。

 どこかの高い建物の一室のようだった。

 身体を起こし窓の外を眺めると、はるか下に建物が見える。


 でも。この街並みって……。


 山の形、遠くに見える川の流れ。

 こんな高い場所からはあまりみたことがなかったけどこれは。


 ロクサンシームの王都?


 ああ、間違いない。あそこは貴族院。向こうは商店街の大通り。

 宮殿前の大広場も近くに見える。

 と、言うことは。


 ここは王宮に隣接された魔道士の塔? それも、かなり高い階層。


 って、どうして?

 わたくしは……。


 身体を確認してみても、特に怪我とか何かそういったものがあるわけでもなくて。

 混乱した頭を整理し記憶を辿ってみる。


 そう、聖パルト公園でクレインと会って話をして。

 金のネックレスを貰ったところで記憶が途切れてる!!?

 手で弄ってみると胸元にはあの時のネックレスが嵌まったままだった。

 はずそうとしてみても、なぜか身体に張り付いてしまったかのようで。


 あの出来事は夢でもなんでもなくて、わたくしはまた王国に戻ってきてしまったの?

 身につけているのは清楚ではあるけれど簡易なワンピース。

 首からすっぽり被るだけのものだった。

 あれから、どれくらい経っているのだろう。お爺さま、心配していらっしゃるかな。

 それとも、呆れていらっしゃる、かしら。


 のこのこクレインに会いに行ってしまったこと、を……。


「ああ、気がついたかい? レイニー」


 唐突にそんな声が聞こえた。

 振り向くとそこにはクレイン。


「クレイン! あなた、どういうことなの! わたくし、どうしてここにいるのよ!」


「どうして、って。君は自分の意志でこの国に帰ってきたんじゃないか。忘れたのかい?」


「そんなはず、ないわ! わたくしあなたと公園で会ってから記憶がないのだもの!」


「はは。君は自分の足で馬車に乗り、自分の足でこの王宮に帰ったのさ。記憶がないって? どういうことだろうね?」


「嘘! だって、そんな」


「少なくとも皆にはそう見えていたし、君のお爺さまにも君自身が手紙を送っている」


「じゃぁ、なんでわたくしはこんなところにいるの!!? ここ魔道士の塔の上階ですわね? これじゃまるで幽閉されているみたいじゃない!」


「ああ、本当に何も覚えていないのかい? 君は王宮に帰り着いた夜に熱を出して倒れてしまったんだよ。だから今はここで治療中なんだ。ここなら魔道士の結界で、悪い魔は入ってこられないからね」


「魔?」


「ああ。熱は魔のせいだというのが医師の診断だった」


「じゃぁ、このネックレスは? これ、外そうと思っても外れない」


「ああ、魔の熱のせいかもしれないね。君はまだ病人なんだ、このままもう少し寝るといい。食事は運ばせる。食べられるだけでいいからちゃんと食べなよね」


 そこまで言うと、クレインはそのまま部屋から出て行ってしまった。

 追いかけようとノブに手をかけるけれど……だめ。

 ドアが開かない。


 もう、最悪。

 どうしよう。

 クレインの言葉は信用できない。

 この鎖に何か秘密があるんだろうか?


 そんなふうに考えた時。

 自分のマナのゲートが完全に塞がっていることに気がついた。

 魔法も封じられてる?


 加護も、使えない。


 魔力が体の外に出ない、働かない。って、こんなの……。

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