まっぴらごめんです!!
周囲がしんと静かになった。
なぜかカーテンの裏で控えているように言われそうしていたけど、あのクレインの言い分は。
あんなの、ない。
あんなの、違う。
「レイニー様、どうされます? ご自分でお話しなさいますか?」
そばにいてくれたマキナスがそんなふうに提案してくれた。
うん。
きっとここはわたくしが出ていかなければおさまらない。
お爺さまはきっとわたくしの判断を一番に考えてくれるから、あんな馬鹿な言い分のクレインに鉄槌を落とすのにも躊躇したのかもしれないから。
「ええ。わたくし、このままじゃ我慢ができません」
「では」
マキナスが近くにいた侍従に合図を送った。
多分、最初から打ち合わせてあったのだろう。侍従は飲み物の交換に回りながら、お爺さまの隣にいたユリアス兄様にこっそり耳打ちする。
そして。
皇帝の威厳をそのままに顎に手を当てていたお爺さま、こちらに目線を送り。
「レイニー。クレイン国王はこう述べているが。お前の真意を聞かせてほしい」
そう、わたくしに向かって声をかけた。
♢ ♢ ♢
カーテンを翻し前に出ると、そのまま中央のテーブル全体を眺めながらカーテシーをして。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。元々わたくしの病状が原因でこうしてお爺さまが来てくださり、皆様がお集まりくださった事、感謝いたします」
そう礼をしたあともう一度全体を見渡した。
「しかしながら、わたくしが寝込んでしまっていた原因はここにいるクレイン王による呪いのネックレスが原因でした。わたくしは騙されて彼により操られ、そして幽閉されていたのです」
クレインの周辺の重鎮たちからざわっと声が上がる。
「だからそれは君が私を愛してくれていたから、私が君を愛しているから、君に間違った選択をして後悔して欲しくなかったからだ」
「そうですね。クレイン様はわたくしの事をご自分の所有物と思っていらっしゃいますものね。おもちゃの人形のように思っていらっしゃったのだもの。そんなわたくしがご自分に逆らった事が許せない、と、そう確かにこの耳で聞きました」
「おもちゃだなんて、そんなこと」
「わたくしをあなたの人形、と、お飾りの人形王妃として飾ってやる、と、そう仰った事をもうお忘れですか?」
「それは、君が人形のように美しいという比喩だよ。私の隣に相応しい綺麗な可愛い王妃と。そういう意味だ」
どこまでいってもこうして煙に巻こうとする。
今を取り繕えばいいの?
そんな思惑が透けて見える。
もう、たくさん!
あなたは。
わたくしが尊敬し、好きだったあなたは。
きっと、わたくしの目が曇っていたという事なのですね……。
「もう、たくさんです! わたくしはあなたの為のお飾り王妃なんてまっぴらです! 後悔なんて致しません! 人の心を無理やり操って言うことを聞かせようだなんていう男性はごめんだわ!」
叫んでいた。我慢ができず、大勢の人の前で初めてこんな大声をあげて。
「だけど、君は、私のことが、好きな、はず、だ……」
「いいえ! 幼いわたくしがあなたに恋をしたのは事実です。でも、それは間違ってました。あなたはわたくしが好きだと思ったあなたじゃ無かった。もうわたくしはあなたの事なんかこれっぽっちも好きじゃありません。クレイン」
そこまで言って、さっと礼をして振り返る。
そのままスタスタと部屋を後にしたわたくし。
残されたクレインが項垂れてしまっていた事は、後から知りました。




