温かい。。
王宮の奥、最上位の賓客をおもてなしする客室まで歩く。
ユリアス兄様がここに泊まっていらっしゃるのだろう。
お部屋に設えられたロビーには、ここにお泊まりの方が来客を招くための応接セットが整えられて。
わたくしはそのうちの一つ、ふかふかのソファーに腰掛けさせてもらい、そうして兄様が手ずからやっぱりふかふかで肌触りのいい毛布をかけてくれた。
途端に。
それまで忘れていた寒気と恐怖が湧き上がってきたのか、わたくしの身体はブルブルと震えてしまって。
毛布にくるまって泣きそうになったまま震えているそんなわたくしに、ユリアス兄様は隣に座り寄り添って、優しく肩を抱いてくれたのだった。
「大丈夫? 怖かったね」
そう優しく声をかけてくれたのが嬉しくて。
彼の肩にひたいを擦り付け、その体温を感じたまま涙をこぼす。
やっぱり兄様は優しいな。そんなふうに感じて。
お腹も空いているだろう、と、こんな夜更けなのに温かいミルクとスープを用意させてくれた兄様。
わたくしが震えがおさまり、ミルクとスープを飲み干すまで、黙ってそばにいてくれた。
「兄様、ごめんなさい……」
そう、声に出せたのは、もう随分と時間が経った後だった。
「いいよ。レイニー。今夜はもう遅いから君はゆっくり眠るといい。クレイン王の取り調べは公爵に任せてあるが、全てを明らかにするのは明日にしよう。明日には皇帝陛下もこちらに来られる。そこで全てを終わらせよう」
「お爺さま、が?」
「ああ。君を心配して居ても立っても居られなかったようだ。先遣隊として僕がまずこちらに来て色々調べていたんだが、もっと早く君を助けてあげられなくてほんとごめんね」
「ううん、ううん、わたくしが、わたくしが迂闊だったのです。わたくしが、悪かったのです……」
そう兄様の胸で泣いて。
泣き疲れたわたくしは、そのまま眠ってしまったらしい。
朝、気がついた時。見知らぬ綺麗なベッドが客室のそれだと気づくのに、少し時間を要した。
頭を整理しなんとか事態を飲み込めたわたくしのそばに現れたのは、メアリィだった。
「おはようございます、お嬢様」
「え? メアリィ。どうして?」
「申し訳ありませんお嬢様。わたくしがついていながらこんなことになってしまって」
そう、ベッドの端まで近づきひざまづいて両手でわたくしの手を握るメアリィ。
「ううん、ごめんね、わたくしが迂闊だったの。メアリィ、ありがとう」
わざわざ、帝都から来てくれたメアリィ。
握ってくれた手が温かくて。
目が熱くなるのがわかった。




