エーテルに浮かぶマナの泡。
思考だけが引き伸ばされている感じ?
身体は落ち続けているのはなんにも変わっていない。
死が待ち受けている現実は、変わっていないのだ。
でも。
——あきらめないで
精霊たちのそんな心が嬉しい。
だから。
諦めるのはやめた。
エメラがこうして引き伸ばしてくれた時間。あとどれだけあるのかもわからないけど。
それでもせいいっぱいあがいてみよう。
ダメでも死ぬ未来があるだけ。そう考えたら少しだけ気が楽になった。
周囲にはエメラもアウラもキュアもいる。
他の子も、たぶん呼べば来てくれるだろう。それはわかる。
大気中のマナの流れも、彼ら精霊のマナも、わたくしには感じ取ることが出来ていた。
ゲートが開いていないのに?
そこはちょっと不思議。
魂のゲートが開いていなくてもマナをちゃんと感じることができるんだ、って。
もともと、この世界は神の氣エーテルに浮かぶマナの泡の表面にあるという。
世界、というかこの空間っていうそのものが、マナの泡なんだって。そう習った。
マナとか魔とか、そんな名前で呼んでいるけど、これも元を正せば神の氣エーテル。
水が氷や水蒸気になるように、ただ濃さや性質を変えて存在しているものなのだと。
わたくしたち人は、そんな世界のマナの泡の表面に在るのだって。
そんな感覚、よくわからないけど。
人の魂もまたそんなマナの泡でできている。
命も世界も結局同じものだなんて、そんなのよくわからないよね。
マナの泡でできた風船の中に詰まったマナを、その口から出して力に変える。これが魔法だとして。
今こうして考えている自分自身の思考って、そうしたらそんなマナの泡の表面に在るってこと?
人の世界がマナの泡の表面に在るのと一緒で、わたくしの今のこの思考も感情も、魂のマナの表面にあるんだろうか?
だとしたらもしかして。
魔道具を動かすのに、魔石のようなマナの供給源と魔法陣があれば可能なように。
もしかして。
キュアやアウラももしかして。
ワンピースの横にあったポケット。
そこにはあの、ネックレスから剥がれて落ちたルビーの魔石が入ってる。
あれ、一旦マナが枯渇はしたけれど、剥がれて落ちたこの数日で真っ黒になっていたのが少し赤みを帯びるくらいにはなっていた。
多分、大気中のマナを吸収している? そんな感じで。
だったらもしかしたら。
「キュアお願い! この胸のネックレスを浄化して!」
「アウラ! 大気の翼をちょうだい!」
目を開けて。
ポケットのネックレスを弄って、そう叫んだ。
エメラの時間操作が解けて、わたくしの身体が精霊アウラによる空気のクッションに抱かれるように受け止められるのが、ほぼ同時だった。