幽閉。
リリスからそんなふうに恨まれているとは思わなかった。
自分がいかに能天気に生きてきたのか、そんなふうに思うと精神的に落ち込む。
でも。
でもだからって。
リリスがわたくしの魔力が無くなっていることを知っていたということは、この金の鎖が魔力封じのネックレスであるのは確定なのだろう。
でもって。
真っ赤だったルビーが真っ黒にくすんでいる。
これって、魔石、だったんだ。
ということはこの魔石に何かの魔法陣が仕込んであったってことだろう。
おそらくわたくしの意識がなくなったのはそのせい?
クレインは、わたくしが自分の足でここに帰ってきたと言ってた。
お爺さまに手紙を書いたのだとも。
だとするとおそらくその魔法陣は傀儡系の魔法。そんな呪文が刻まれたものだった可能性もあるかな。
内包するマナが枯渇し、効力を失ったからこうして意識が戻ったってことなのかもしれない。
うーん。
困ったな。
クレインとの離婚はまだ正式には成立していなかった。だからわたくしが自ら戻ったのだとしたらお爺さまだって無理やりわたくしを取り戻そうとはしないだろう。
ユリアス兄様とのお話も、まだ口約束だけの話。
正式に話を進めるのは祭祀が終わって手続きを全て終わらせてからの予定だったから。
怖い。
こうしてこのまま幽閉されているだけならまだしも、このさき彼がどんな手段を使ってくるのかわからないもの。
魔力がないのがこんなにも心もとないものだっただなんて、ほんと思っていなかった。
怖い。
考えていたら夜も更けて、少し寒くなってきた。
燭台の灯りも消えそうなくらい心もとなくなって。
そのままお布団に潜り込んだ。何か、方法がないのか。
それを思案しているうちに、いつの間にか寝てしまっていた。
♢ ♢ ♢
それからの数日。
食事は最初にリリスと一緒にきたメイドが運んできてくれた。
お湯や着替えももらうことができた、けど、外に出ることはできなかった。
クレインやリリスはあれから顔を出さなかった。
「陛下は今お忙しいのですわ」
と、そうメイドのマリー。
マリーは口数が少ないけれど、わたくしのお世話はちゃんとしてくれる。
マリーがお部屋の中にいる間は、扉の外には黒尽くめのマントに身を包んだ魔道士が待機していた。
一度、マリーが外に出るタイミングでわたくしも一緒に廊下に出ようとしたけれど、空気の壁みたいなのに弾かれた。
結界? が、わたくしを拒むように張られていたのだろう。
ほんと歯痒い。
せめて。
ほんの少しでもいいから魔法が使えたら。
そう思っているんだけど。