訪問者
寒さで目が覚めると、俺は暗闇の中にいた。階段から差し込んでいた光はない。起き上がったところでどこにも光などなかった。朝までずっと寝ていられれば良かったのだが、この牢屋はそんなことすらも許してくれないらしい。
体感的には深夜だが、実際はそこまで時間が経っていない可能性だってある。外が見えないどころか、光がないと平衡感覚がおかしくなってくる。風が無いのはせめてもの救いだ。
すぐには眠れそうにないので、何をするでもなくぼんやりと暗闇を見つめ続けた。
どれくらい経っただろうか。何もしないのも飽きてきたので体を動かして暖まろうか迷っているときだった。
かつん、と階段のほうから音が聞こえた。階段が火で照らされる。
エルフだろうか。何も食べていないので飯だと助かる。体温を取り戻すためにも何か腹に入れておきたい。
「……っとと。暗くて歩きづらいのう……」
姿をみる前に、声を聞いてうんざりする。
おぼつかない足取りで階段から降りてきたのはディアベルだった。俺を牢屋に閉じ込めた張本人と言ってもいい。松明を持ち、俺の戦斧を抱えている。
「お、さっそく発見じゃな」
「……」
「……よっと」
抱えていた戦斧を鉄格子に立てかける。荷物と防具はないようだ。明かりと得物を持ってきてくれたことには感謝だが、どの面さげてきたのか。
「……何しに来た」
苛立ち交じりの声を出す。