エレネア
アルディールが女エルフの持つ戦斧を手に取って、しみじみと眺める。
「あやつの戦斧を見るのは久しぶりだ。……やはりオークの襲撃で?」
「……そうだ……俺を助けるために殺された……お前らエルフが助けにくればゴルドバーグもモーモントも無事だったんだ‼」
「人間のために死んだか。あやつらしい最後だ。残念だが我らが駆けつけたところで、鉱山を守ることはできなかったであろう」
すると階段から一人のエルフが降りてくる。
「アルディール様」
「すぐに行く」
返事を聞くと招集しにきたエルフはすぐに戻っていった。
アルディールが戦斧を女エルフに渡し、こちらに向き直る。
「……残念だが時間切れのようだ。バルト。そなたとは斯様な場所ではなく、日の元で出会いたかった。しばし処分を待つがいい」
アルディールはそれだけ言うと男のエルフを伴い立ち去っていく。
「待てアルディール‼ 俺をどうするつもりだ⁉」
返事がないまま階段を上がっていく。結局、俺は罪人のままではないか。
「エレネア」
男のエルフが階段を数歩上ったところで、女のエルフを呼んだ。エレネアと呼ばれたエルフは何か話したそうだったが、松明を取り男のエルフと一緒に階段を上がって行った。
戦斧を持っていくのはしょうがないとして、せめて松明は置いていって欲しかった。
牢屋に一人。
「……モーモントの話がしたいんなら、はじめからそう言ってくれよ……」
誰にともなく呟く。