辻褄
「どこから来て、どこへ向かおうというのだ」
「テリオスを発って、トレイルに向かう途中だ。ディアベルはテリオス周辺の領主の娘なんだ」
トレイルは森を抜けた先にある人間の町だ。ディアベルとは森を抜けるまで行動を共にする約束だったが、内心トレイルまでは一緒に向かおうと決めていた。
「テリオスからそなた一人で護衛してきたというのか?」
「正確には何人か仲間がいたが、途中ではぐれたんだ。ここまで話が伝わっているかはわからないが、土砂崩れがあったりしてな」
荒野を渡ってきたことは伏せておく。それにエリクシオンの話をすると面倒なうえに、仲間とどうやってはぐれたのか聞かれるかもしれないので、森の中をひたすら迷い混んできたことにしておきたい。
「旅、と申すが、聞く限り人間の娘が我らに泣きついてきたそうだな。服は汚れて粗末な有様だったと聞く」
「泣きついたのは、エルフに捕まると思ったあいつが俺を裏切って一人で助かろうとした……それだけだ。服は、森で派手に転ぶからそうなる」
「どうやら辻褄は合うらしい」
やはり話のわかるエルフだ。なんとかこのまま誤解を解いて、教会の追手に追いつかれる前に森を脱出したい。
「わかってもらえたようで良かった! 本当に誤解だったんだ!」
さらにアルディールと親しくしておけば、森の中を安全に抜ける道を教えてくれるかもしれない。エルフの護衛も付けてくれたら、ここまで連れて来られた甲斐があるというものだ。