夢
フィーネがいなくなることをこいつらは知っていたのだ。ではフィーネもそれを受け入れたというのか? そんなはずがない。いや、俺がそう思いたくないだけなのか……?
パーティを組まない傭兵、それがこの依頼の条件だった。俺は捨て駒にされたのだ。それなら高額な報酬で釣られたことにも納得がいく。そして仲間だと思っていた奴らが、大事に慕うフィーネを簡単に見殺しにしたことも。
思い起こせば、こいつらが逃げ出すとき俺にもその手が差し伸べられたのだ。あのときはフィーネを守りたい一心でその手を払いのけたが、あれは俺を救うためだったんじゃないか? フィーネが死ぬと分かっていて、俺を助けようとした? だとしたら俺は、俺はいったい何のために雇われたんだ?
「何がどうなってんだ……」
わからないことが多すぎる。
「全てをお話させて頂きたいですが、今は時間がありません。ただこれだけは言わせてください。バルト様にご依頼したのは、お嬢様なのです。お嬢様は小さい頃からバルト様を知っておられました。……魔神の夢を通して」
「フィーネが俺を? 魔神の夢ってなんのことだ……?」
フィーネと初めて会ったのは、テリオスを出発した日だ。俺は領主の顔すら知らなかったのだから、城住まいのお嬢様に面識などあるはずもない。
「どうかお嬢様を信じてください。そして今は一刻も早くこの街を離れるんです。お嬢様……いえ、そちらにいらっしゃる方とともにエスカトを目指すのです」
エスカト――確かフィーネの故郷だ。