町内会の盆踊り
九州の人間は祭り好きだ。
町内会の盆踊りの前には、子供達だけで踊りの特訓を受けさせられた。
あの頃、なぜあんなにも大人達は燃えていたのだろう。公園の片隅にある老人ホームのようなところで、毎晩のようにおばちゃん達が踊りを教えてくれた。
教わる方も素直なもので、そうするのが当たり前だと思っているから、怒られながら何曲も振り付けを覚えた。
実際、暗くなる頃に集まるのも、レコードに合わせて浴衣を着て踊るのも、なんだかドキドキして楽しかった。
一人、踊りを習っている子がいたので、真似をしていい気分で踊っていたら「なよなよして気持ち悪い」と姉に言われ、むっとしたものだ。
祭りの何日か前から、公園にやぐらが組まれ、町内会の露店が徐々に増えていくのを、子供達がそわそわしながら遠巻きに見ている。
そして当日、やぐらの上に太鼓が置かれ、公園中の赤い提灯に灯りがともると、夜の公園が別世界に変わった。
いよいよ本番。大音量で曲が流れ、太鼓が鳴り響く。
遠巻きに見ている人たちが踊りやすくなるよう、まずは子供達が率先して輪を作り、曲に合わせて踊りだす。たくさん練習したけど間違えないか少し緊張する。
最初は恥ずかしがっていた人達も、少しずつ輪の中に入り、子供達の真似をして踊り始める。
どんどん踊る人が増え、にぎやかになり、笑い声が溢れていく。
踊りっぱなしで疲れていても楽しかった。みんなに褒められて、誇らしい気持ちでいっぱいになった。
とても素晴らしい体験だったのだと今になって思う。