昭和の漫画事情─貸本屋
実名や雑誌名をそのまま書いているので、法に触れているようなら伏せるので教えてください。
あの頃、少女漫画は「りぼん」と「なかよし」のほぼ独占状態だった。うちは二人姉妹だったので、二冊とも買って読むことができた。付録の取り合いになることもあるが、二つも読めるのだから、姉がいてくれて良かった。
毎月、景品目当てに感想ハガキを出していたが、当たったことがない。当たるわけないと思いながらも、当選者の欄を毎回隅々までチェックしていた。
他の漫画が読みたいときは、貸本屋に行った。
知らない人も多いようだから説明しよう。
貸本屋とは、文字通り本を貸す店だ。うちの近所にあった古びた小さな店には小説、雑誌、漫画といった色々な種類の本が置いてあった。
店の中はいつも薄暗く、小説のコーナーにいる大人達は、いつもひっそりと佇ずみ気配を消していた。
本ごとに借り賃が違い、漫画の単行本が一冊30円くらいだったと思う。会計のときに、おばちゃんがノートに日付と値段を記入する。延滞料はあったのだろうが覚えていない。
本の発売日には走って店に行った。楽しみにしていた本が借りられてると、一日に何度も覗きに行き、店のおばちゃんに同情されたものだ。
立ち読みもよくしていたが怒られなかった。しょっちゅう借りていたので、大目にみてくれていたのだろう。
少年漫画や、普段買わない雑誌の漫画なども、ここで借りたり、立ち読みしたりした。美内すずえ、萩尾望都、竹宮惠子などの名作はここで発掘したようなものだ。
大人になるにつれ、漫画が好きだと言うと馬鹿にする人が増えてくるのが不思議だった。
偏見を持ってる人に出会うと「漫画は好きだけど小説も読むよ」と完全武装して会話に挑んだものだ。
今は、漫画やアニメも文化として尊重されているが、やっぱり「大人のくせに漫画なんて読むのか」と見下す人がいる。
そんな時は「私は漫画世代だから」と堂々と宣言するようにしている。だからどうしたという感じだが、言われた方は、なんとなく言葉につまるのだ。ぜひ試してみて欲しい。