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第三話 レッツ探検

昨夜の決意を無駄にしないためにも早速今日から行動を開始しよう。

昨日は体が思った通りの動かすことができなかったが、どうやら今日は普通に動かすことができる。

転生したてほやほやだったかだったからなのだろうか。考えてもわからないことは後回しである。


それよりもやるべきことがある。

まずは家の探検からだ。

結局昨日はこの図書館のような部屋から出ることはなかった。


早速寝かしつけられているベビーベットから降りるようとするもこの体だとかなり高く感じてしまう。

体年齢としてはおそらく1歳前後だろう。正直降りられる気がしない。

転げ落ちる未来が容易に想像できる。


どうしたものかと唸っているとおじいちゃんことソロモンがやってくる。

「ん~、フィンどうしたんじゃ~?」と、首をかしげながらこちら覗き込む。

昨日も何度か呼ばれたが、このフィンというのが俺の名前らしい。なかなか悪くないのではないかと思う。結構かっこよくないか?


外に出してもらおうと腕を動かし必死にアピールするが、同時に腹が鳴る。

「そうかそうか、腹が減ってたんじゃな」

そういえばこっちに来てからまだ何も食べてない。

「ちょっと待ってての」といい部屋を出ていく。

このくらいの赤ん坊だとミルクではなく離乳食になるのだろうか。

前世では子供がいなかったのでよくわからない。子供以前に童貞だったのだが……


もし離乳食だとしたら、お手並み拝見といったところだな。

食事は重要だ。なんといっても人生の一番の楽しみといってもいい。


そういうだけあって前世の俺は料理の腕だけはそこそこだった。

金があまりなかったので自炊せざるを得なかったのだが。

しかし世の中は結果がすべてなのだ。始めた理由はあれだが結果として料理ができるようになった。

それでいいんだ。悲しくなんかないんだから!


そんなバカなことを考えていると、ソロモンが部屋に戻ってきた。

しかし彼の手には料理ではなく食材そのものが抱えられていた。


まさかとは思うがそのまま食わせるわけではないよな?

そんな常識が欠如しているとは思いたくはない。


突然食材たちがふわりと浮き上がる。見覚えがあるどころか味さえわかりそうな食材たちだ。

いや、そんなことよりもどこからどう見ても空中に浮いている。

「もう少し待ってての~」

そんなのんきな声は正反対の目の前の光景に混乱する。

いや、冷静に考えさえすれば、ここは魔法がある世界なのだ。とてもロマンにある世界だ。


非常に手際よく食材が細かく刻まれていく。実際には手は全く使っていないので、魔法際というべきなのだろうか。

刻まれた野菜たちがどこからともなく上がった火に一瞬で包み込まれる。しかしながら黒焦げになることはなく、色のついた水もとい出汁のようなものとまとめて鍋に放り込まれる。

二、三分火にかけるとコンソメスープのようないい匂いが漂ってくる。


「完成じゃ、……ん、どうしたんじゃ?」

どうやら俺はかなり呆けた顔をしていたらしい。だが実際見惚れていた。

調理工程を見たというよりもネズミの国のパレードを見ているようだった。

お手並み拝見といったが、まさかこれほどのものを見れるとは思ってもみなかった。


久しぶりの食事とあって味はおいしかった。ソロモンもおいしそうに食べる俺を見てご満悦のようだった。少し薄味だった気がしないでもないが、赤ん坊なので妥当だろう。


~・~・~


食事を終えた俺は無事にベビーベットから降ろしてもらい、ついに探索を開始した。

まずは今いる図書館から見ていく。千や二千ではきかないほど大量の本が所狭しと並んでいる。

少しばかりタイトルを見てみたが、どうやら魔法関係の本が多いようだ。

それ以外にも多種多様な本が置いてあり、かなり興味をそそられた。


しかし今日は家の探索を優先することにする。幸いなことに時間は有り余っているし、何よりも当面の拠点となるであろう場所を把握することが重要だ。

不幸体質のこともあるので危険な場所があるのなら把握しておきたい。

くれぐれも慎重に行くとしよう。


この部屋には扉が一つだけしかない。とても厳重な扉なのでとても開けられそうにはないが、幸いなことにソロモンが開けっ放しにしているおかげで簡単に通ることができる。


部屋を出ると一本道の廊下になっていた。途中に部屋はなく十メートルほど先には大きなリビングのようにくつろげそうな部屋があった。とはいっても現代のリビングという感じではなく、中世的な印象を受ける。ザ・貴族の部屋といった感じだ。

部屋のつくりや調度品は非常に立派で豪華なものだったが、生活感がないような印象を受ける。机などに指を這わせればほこりつくだろう。

潔癖症激怒間違いなしである。


まだ二部屋しか見ていないがかなり立派な家に住んでいるのだろう。

なのにメイドを雇ったりはしていないのだろうか。正直リアルメイドをこの目で見てみたかった。

もしかして立派なのは家だけであまり裕福というわけではないのだろうか。裕福でなければならないわけではないが、裕福なほうがいいに越したことはないだろう。


そんなこんなで一階の部屋は一通り探索したがこれといった部屋はなかった。

正直もっと驚くようなものを期待していたばかりに期待外れ感は否めない。

十部屋以上探索したのにほとんど物置部屋のようだった。しかしまだ地下室が残っている。

ソロモンを見かけすらしなかったので、昨日言っていた研究とやらもそこで行っているのだろう。


しかし地下に行くのはやめておく。理由は二つだ。

一つ目は絶対に転げ落ちるからだ。

二つ目は何かしらの危険な実験を行っていた場合、確実にまずいことになるからだ。

簡単にまとめると怪我したくないということだ。


よって当面の活動範囲は一階となる。とはいってもおそらくあの図書館にこもって情報収集をするくらいしかないのが現状ではあるが。

ということで早速戻って情報収集を始めるとしよう。


その前に腹が減ったし、なかなかいいにおいがする。ソロモンが昼食を作ってくれたのだろう。

情報収集は昼食をいただいてからにしよう。


~・~・~


相変わらずソロモンの料理はうまかった。まだ固形物をあまり食べられないのが残念だがそのうち食べられるようになるだろう。


早速情報収集に取り掛かる。

まずはこの世界のことについて知っておくべきだろう。今の俺はどこぞの名探偵状態だからな。

自身と世界の常識のずれを確実になくすべきだ。それこそ今までの常識を捨てる勢いでだ。


ということで早速歴史書のようなものを探す。本音を言えば常識をまとめたような本が欲しいところではあるが、そんな本があるはずがない。

歴史書を読めばこの世界がどのように成り立っているか、魔法や剣といったものがどれほど身近なものなのかがわかるだろう。


半日かけて読んだところでざっくりとしたことはわかった。

とはいってもあまりにもフィクションのようで実感はあまりないが……



軽くまとめるとこの世界には世界樹なるものがあるらしい。まあ、めちゃくちゃでかい木だ。

その世界樹とやらは、はるか昔の神々の時代から生えているらしく樹齢なんかはわからないそうだ。

そして神々がいた時代を神代時代と呼ぶ。


その神々が人間を創造し、古代文明時代が到来した。それが約三千年ほど前のことだ。

古代文明といっても今よりも技術ははるかに進歩しており、人造人間のようなものを作り出すことさえできたらしい。


この世界は魔法中心らしいが古代文明についての記述を見ていると、どうも科学的なものがあったように思える。曰く魔法適性がなくとも魔法のようなものを使えたと。


しかしそんな古代文明も結局は滅びてしまった。

とんでもない大災害が起こってほぼ跡形もなく消え去ってしまったらしい。


それでも人間が滅びることはなく、小国ができては滅亡してできては滅亡してを繰り返し、やがてすべてを統治する統一国家が建国された。

人類は少しずつではあるが、かつての栄光を取り戻さんとしていた。


そんな人類に最大の危機が訪れた。

魔王の出現である。

どこからともなく現れた魔王の軍勢はで統一国家をあっという間に滅亡に追い込んだ。

それが約四百年前のことである。


そしてのちに三帝と称されるソロモン・ローゼンクロイツ、クラウディア・クリュサオル、ヒルド・ヴァルキュリアの三人と、初代解放者なるものの協力によって魔王軍を打ち滅ぼした。

そうして約五十年にもわたる長き戦いにピリオドが打たれたのだった。


ほどなくして乱立していた小国は魔王のような存在に備えるために一つの国としてまとまったものの、結局は内乱により大きく分けて三つの国に分裂した。


それがノーザント王国、ハーネブル帝国、アルビライト公国だ。

ほかにもこまごまとした国はあるものの、現在ではこの三国が大きな力を持っている。

というのがこの世界のざっくりとした歴史だ。


その三国は世界樹の周りをぐるっと囲むように位置しているらしい。

てか、世界樹ってどんだけでかいんだよ。

主要な三国が周りを囲んでいるって……、木というより山のようだ。


神だの魔王だのとうさん臭く感じただろう?

でもいくつかの歴史書を読んでも大体内容は同じなので真実かどうかはさておき、これがこの世界の定説なのだろう。


そしてソロモンは思っていた以上にすごい人物だったようだ。さらに昨日のあの二人の美女がその他の三帝ということだ。

どう見ても二十代にしか見えなかったのに実際には四百年以上生きていることになる。

魔法とやらは本当に何でもありのようだ。それともエルフのように長寿な種族がいたりするのだろうか。


そんな三帝の一人に保護されている時点でかなりの幸運だといえる。三帝全員と顔見知りってわけだ。

もう人生勝ち組といえるのではなかろうか。

ヒルドとクラウディアからは嫌われてるっぽいが……


転生のおかげで不幸体質が治ったりもしくは軽減されたりしたのだろうか。

だとしたらすごくうれしい。前世では何度もお祓いをしてもらったが、結局治ることはなかった。

それどころか神社の神主や教会の神父には手の打ちようがないといわれるほどだった。

もっと責任感じろよ、とは思ったが何度も行くうちに慣れてしまった……

……治っていないものと考えておこう。治ったと思って油断でもしていたら、ろくな目に合わないだろう。警戒しないよりしていたほうがはるかに安心できる。


なんやかんやしているうちにかなり時間がたってしまった。

今までの感覚で行動するのはまずいかもしれない。精神的にはブラック企業で鍛えられていたということもあり平気なのだが、体のほうがまずい。体力が完全に赤ん坊だ。


体とかを鍛えたほうがいいのだろうか?

小さいころから鍛えると発育に良くないという話も聞いたことがあるし、どうするべきだろうか。

そこらへんもおいおい考えていこう。


今日は夕食をとったらさっさと寝てしまおう。

今のうちだけかもしれないが、せいぜい快適なベイビーライフを送らせてもらうとするか。






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