プロローグ
俺はこれから死ぬのだ。
トラックで引かれたであろう俺を見て、耳をつんざくような悲鳴が周囲から上がる。
どうせなら即死が良かった、と心の中でぼやく。
そんな場合ではないのに自分は不幸だと思ってしまう。
両親はおろか肉親すらいなかったので愛情なんてものはこれっぽっちも受けたことはない。
小さいころから虚弱体質で何度も死にかけたせいで施設の連中からよく煙たがられたものだ。
さらに俗にいうブラック企業というやつに勤め残業に次ぐ残業で自分の時間なんて一切ない、というおまけ付きだ。
けれどもやっと終わる。
目的も意味も楽しみもなく、ただ奴隷のように働くだけの人生が。
体が急速に冷えていくのとは対照的に自分の生暖かい血がゆっくりと地面に広がってゆくのを感じる。
こんな状況なのに生に縋り付きたくなるのは生物としての生存本能によるものなのだろうか。
矛盾を感じながらも意識が遠のく。
かすむ意識の中で願わずにはいられない。
もしも来世なるものがあるのならば、そのときこそ人並みでもいいから幸せに生きたいと。
そうして俺の意識は矛盾という重しを抱えたまま、血みどろの中に沈んでいった。
これから頑張っていくのでよろしくお願いします。