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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第二部 戦国日本編

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2話 イエスロリータ、ノータッチ

「織田信長? また聞いたことある戦国武将だな……」

「そりゃあの御方は戦乱の世を統べるべくして生まれた大大名様だからなぁ。うつけ者と呼ばれてたあの頃が懐かしいぜ」


 などと言って感慨深そうに顎をさする孫四郎。

 聞き間違い、いや考え違いではなかったらしい。思っていた通りの戦国武将だった。


 断っておくが、ここは異世界。

 間違っても地球の、それも日本の過去に起きた戦国乱世ではないのである。

 ……ないと信じたい。


「アキラくん、私の考えてることが違ってなければ、織田信長って……」

「……うん。魔王って呼ばれた戦国武将だよ。なんで異世界にいるんだ……?」


 詳しくはないが、知っている。

 というか、日本人であるなら知らない方がおかしい。それくらいのビッグネームだ。

 シャルに見せてもらった『竹取物語』といい、今の状況といい、この世界は少しおかしくないか?


「兄弟よぉ、難しいこと考えんなら外出ねえか? お天道様浴びて頭すっきりさせようぜ?」

「……ん。それもいいかもな」


 アキラの返事を聞いて立ち上がる孫四郎に続き、アキラと優梨も立ち上がる。


「何処に行くにもそなえをしねえとなあ。ご両人、腹減ってねえか? うめぇ飯屋知ってんだ、奢ってやるよ」

「まじか。ちょうど腹減ってたんだよ。孫四郎もこう言ってるし、好意に甘えようぜ()()

「っ! ……う、うん!」


 夫婦設定を貫くために名前呼びする。

 何気に初めて同級生の女の子を名前呼びしたかも知れない。やばい、そう思うと少し気恥ずかしくなってきた。


 顔を真っ赤にさせた少年少女と、何も知らない第三者の青年は肩を並べておすすめの飯屋へと向かった。



ーーー



「どうだ! この飯屋美味えだろ!」

「すごい美味しいです! 本当に、久しぶりに美味しい物を食べた気がする……」

「なんで孫四郎が自慢げなんだ……あと柏原さんはマグナデアで何を食べてたの?」


 すごい幸せそう。

 まぁあの国は中世時代真っ只中だし戦時下だったし、豊富な食糧は運ばれてこなかったのだろう。


 ぶっちゃけた話をすると、あんまり良い食事とは思えない。

 主食に少量の黒米と小さな雑魚の焼き魚。副菜に大根の漬物。それに味の濃い赤味噌の味噌汁。


 ……いやまぁ戦国時代の、それもしがない農民の価値観からしたら、間違いなく良い食事なのだろう。


(俺の作った料理よりも程度が低い気がする……)


 失礼だがそう思ってしまう。

 美味しくない、と言うわけでは決してないのだが、少なくとも豪勢と言うには物足りなさすぎる。


「……何処の国でも争ってりゃ食事はお粗末なんだな」

「どうしたの、アキラくん? 食べないの?」

「食べるよ、もちろん。……うん……」

「なんだ口に合わなかったか、兄弟?」

「いや、そういうんじゃないよ」


 むしろ庶民的な味は好物だ。

 いや、そういう問題ではなく、この食事で満足してしまっている自分がいることが気になってしまって仕方ない。中世の日本は兎も角、令和の日本は調理大国だ。

 民間人が軍事に関わることはなく、平和に平凡に娯楽や食事を楽しめる日々の中でアキラは生きてきた。それなのに今のアキラは粗末な食事で満足してしまっている。それでいいのか現代日本人。


「早急に食糧事情の改善に勤しまなければ……!」

「よくわからないけど、アキラくんが燃えてる……!」


 この旅の先に待つ物をアキラは知らないが、その道中で待つ脅威の存在は知っている。

 ならば少しでも楽しいものにするために、食事という娯楽はキチンと摂取しなければならない。


「よし、この日本でやることが決まったな」


 第一目標は、長期保存可能な食物の確保。

 『終末論』とやらは二の次だ。何処かの白いのが項垂れている姿が連想されたが、最早アキラの眼中には映らなかった。


「ああ! 見つけましたよ、()()()!」


 アキラの決心が固まる横から、少女の甲高い声が響いた。

 何事かと声のする方を見ると、赤子を背紐で背負った中学生くらいの背の女の子が、此方に向けて指を指し顔を真っ赤に怒りながら近づいてきた。なんだぁ……?


「お、()()じゃねえか。食ってくか?」

「食ってくか? ではありません! 浪人の身分で何を呑気に食事処に来ているのですか!」

「美味えモンを食っちまうのが人間の業ってな!」

「節制は人間の美徳に御座います! 少しは自重なさってください!」


 すごい正論パンチを聞いた気がするが、孫四郎の方はこれといって反省した様子はない。

 むしろはっはっはと豪快に笑っているあたり、悪びれずに目の前の少女との会話を楽しんでいる風にも見える。いや、それよりも今「旦那様」と聞こえた気がしたが……


「おい孫四郎。いまその子、お前のこと旦那様って言わなかったか?」

「あら、旦那様? この方々は?」

「一気に聞くな、お前たち。順々に答えてやっからよ」


 面倒そうに言うものの、頼られて嬉しかったのか満更でもなさそうにニヤニヤと笑う孫四郎。


「まずは、まつの質問からだな。こいつらは隣国から逃げてきた夫婦らしくてな。持ち金も少ないらしいから飯を食わせてやってんだ」

「それを理由に旦那様が食べたかっただけでしょう! この方々は兎も角、旦那様が酒を飲んでいるのは納得できません!」

「え? あれお前いつ頼んだんだ!?」

「アキラくんが何か呟いてる時に頼んでたよ。昼間からお酒は、って止めたけど押し切られちゃった」


 まじかコイツいつの間に。

 ……まぁ別に奢ってもらう立場だし、文句もなければ止める必要性も感じはしないが。


「そんで兄弟の質問だな。こいつはオレの女房だ。ちっこいがな! 愛いんだ!」

「奥さん……戦国時代は成人年齢が低いって話だし、合法ではあるのか……?」


 だがもう一つ気になることが。

 その子、子供背負ってるよね? 親戚の子かなぁ……?


「まつが背負ってるのがオレの子。名前はこうだ」

「なるほどテメェ、ロリコンか!」


 イエスロリータ、ノータッチ。

 しっかりと胸に刻めロリコンめ!


「なんだ()()()()って! 愛に歳の垣根はないだろう!」

「ああ、確かに人間五十年だし年の差婚なんざ問題ねえな! 問題は子供をこさえる年に決まってんだろうが! あの子どう見ても子供じゃねえか!」

「子作りは夫婦の愛の結晶だろうが! 何故皆理解しないかねぇ?」

「愛を与える相手に無理させてる自覚はねえのかこの鬼畜!」


 口喧嘩に発展する二人の男子を尻目に、女衆二人は早速仲良くなったのか幸を愛でている。


「可愛いねぇ」

「でしょう! 顔つきは旦那様に似て細いので、将来は絶対に美人になると思っているのですよ!」

「目元なんかはくりっとしてるねぇ。あっ、まっちゃんって呼んでいい?」

「まっちゃん! そう呼ばれるのは初めてです!」


 二人が叫び、二人が子供を愛でている。

 そんな混沌極まる状況の中で、飯屋の店員が近づいてきた。


「あのお客様、他のお客様の迷惑となりますので……」


 とは言うものの店員は割って入ろうとせず、この騒ぎは半刻ほど続いた。



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