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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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70話 戦争開始

 城壁の櫓に登って周囲を観察する。

 見渡す限りの敵、敵、敵。どうやらやっこさんも本気で今夜この城を落とそうとしているらしい。


「まぁ、落とさせないために来たんだがな」


 目を細めて結界眼を起動する。

 『楽園郷』第二の能力。というよりも、副産物として生まれた魔力の測定機能だ。

 魔力を一切持たず己の技術のみで戦う奴だろうと、修練を積めば体内魔力は増えている。


 俺は、その体内魔力の量を測ることができる。基本的に保有する魔力が多いやつが強敵だという認識でいる。


 初めてこの目で魔物を見た時はびっくりした。モヤっとしてるんだもの。ゴブリンの特殊個体かと思った。


「うーん……これだけ数がいると判別が難しいな……リーシャ」

「はい」


 いつの間にか右後ろに立っていたリーシャは、少し前に出て俺の隣へと立つ。


「一回選別しよう。どれが強いのかわっかんねぇ」

「真ん中をこじ開ければいいですか?」

「うんもう開幕ぶっぱで。とりあえず見やすくしてくれればそれでいい」

「了解です。お任せください」


 城壁から飛び降り、英雄役のリーシャが戦場へ向かう。

 その光景を見て、俺は作戦の開幕が近づいてることに心をワクワクと踊らせる。


「さぁ行け、リーシャ。英雄譚を始めてこい」



ーーー



 リーシャの小柄な体が戦場に降り立った。

 右手には剣。己の分身とも言うべき魔剣『憤怒の剣(アロンダイト)』。

 既に鍛鉄し終えたリーシャは、常に膨大な魔力を発しながら悠々と構える。


 それは威嚇とも取れる暴挙だった。

 戦場において魔力は武器。少しでも体の内に溜め、敵を一掃するための兵器にも勝る最強の武器だ。


「××! ×××! ××!!」


 何を言っているのかさっぱりだ。

 しかし何を言いたいのかはわかる。


『女だ! 子供だ! 殺せ!』


 こんなところだろうか。

 攫っても利はなし、殺せば手柄になる。ならば殺せと叫ぶだろう。


「…………」


 威嚇もしたのに。

 そんなに弱く見られているなんて心外だ。


「【魔剣鍛鉄】――50%」


 唸る魔力は全てが凶器。

 リーシャにとっては最強の矛であり、受ける彼らにとっての墓標である。


「貴方達の強さを見せてください……

 【怒れる魔剣・50%(フィフティ・ブレイブ)】」


 本領の半分。

 その剣には伝説に記述されるほど、超常的な力はない。

 だがしかし。この場がリーシャを英雄に仕立てる舞台なれば、リーシャの解き放つ力は英雄に足り得る力を持つ。


「シィッ!」


 右下に構えた剣を斬りあげる。

 持ち上げた刃が物を断つことはない。だが生まれた圧が刃に変わり、広範囲に単純な暴力を波及させる兵器へ進化した。


「×××××!?」


 大地を掻き上げる勢いだ。

 飛ばされた衝撃波が魔族達を吹き飛ばし、リーシャを中心に辺り一帯を殲滅する。


「思っていたよりも削れませんでした……」


 反省の色を彷彿させる、しょぼんとリーシャは顔を曇らせる。




 しかしアキラにとっては丁度良いくらいの殲滅具合だ。なんせ今の一撃で力の構造が概ね把握できた。


 あの一軍の中で最も力を持つ魔族が見えたのは、軍の中でも中央寄りの部隊だった。

 主力を中心に囲って前、横、背後を隙間なく埋める陣形なのだろう。理性のない魔物ではなく、知恵のある人物がいると見た。


(今のリーシャを見たら、ただの暴力だけで挑んでくる可能性はひくい……少なくとも知恵を回してくるだろうな)


 知恵比べか。物量作戦か。

 体力勝負に持ち込まれても勝てる自信しかないが、何かしら予定外の作戦でも取られたら面倒なことに変わりはない。


「一気に決めるか……いや」


 数が足りない。

 一気に決めるなら俺が出ることが必定となる。

 俺がいなくなった後のことを考えると、やはりリーシャにはここで活躍してもらわなければならない。


「さらに()()()()


 身を乗り出した俺は瞳を起動させる。

 敵を多く倒すかなんて問題じゃない。


「俺は予定通り進めるだけだ!」


 ほんのりと赤く光る『楽園郷』。

 その光は夜闇を照らす旭日あさひのように段々と光の度合いを増していき――




「×××××!?」

「××××××××!!」


 さなから借りてきた猫のように、周囲をキョロキョロと見回す魔族共。

 まぁ、そうもなるだろう。なんせ戦場にいたと思ったら、瞬きしたら違う舞台に上がっていたのだから。


「ようこそ魔族共」


 両腕を上げて歓迎しよう。

 この楽園郷は誰でもウェルカム。入ったら最後、俺の操術で良いようにされてしまうだけだ。


「皆んなで楽しく遊ぼうぜ。なっ?」



ーーー



「――ごっそりと敵がいなくなりましたね」


 吹き飛ばされ死屍累々に倒れていた敵も、その光景に怯えていた敵も、全員まとめて消え去った。


「これが主人様の結界眼ですか……」


 まるで世界から存在を抹消されたかのように、影も形もなくなっていた。


「これが私を英雄にする後押しなのでしょうか。主人様の考えはわかりませんね……」


「――ほうほう。前衛部隊が形も残さず壊滅か」


 達観にも似た苦笑を浮かべるリーシャの前に、一人の魔族がずかずかと勇足を踏み現れた。


「……誰ですか?」

「この戦時中に我が名を問うか? その心意気や良し! 貴殿は上玉な武人と見受けたぞ!」

「はぁ……」


 言葉少なく()を警戒する。

 普通に会話をしているように見えるが、その実リーシャは脳内の警戒度を一気に頂点へと引き上げている。

 彼が出てきたのはアロンダイトの一撃を受けた中心。魔剣の一撃をモロに食らっているはずなのだ。


 いくら手加減した一撃とはいえ、並の魔族なら立っていられるはずもない。

 この個体こそが、アキラの探していた個体だと、この部隊の中で最も強力な個体だと断定する。


「我が名はゼラード。我らが軍の中で『暴虐』と呼ばれている!」

「そうですか。私はリーシャ。エルフです」

「ほう、エルフ! 特徴は人間ヒューマに近くあるが、何か深い理由があるのだろうな!」

「いえ特には」


 人間に特徴が近くなってる?

 それは望外の行幸以外の何者でもない。なんせ敬愛する主人様アキラに少しでも近付いたのだ。

 あの遠すぎる背中に少しでも近づけたのなら、それはリーシャにとって嬉しい事柄でしかない。


「して貴様に聞きたいことがある。()()()()()()は何処だ?」

「……アロンダイトを探しておいでなのですか?」

「うむ! 我は湖光の剣を折りに来たのだ!」

「ほう。アロンダイトを折りに……」


 つまり目当ては私と。そういうことだろうか。


「【魔剣鍛鉄】」

「むっ」

「アロンダイト――80%」


 ならば見せてやろう。全力ぶっばだ。


「【憤怒の剣・80%(エイティブレイブ)】」


 余力なんぞ、一片たりとも残さない。



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