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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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67話 英雄リーシャ

「斥候兵がやられただと?」


 人魔が入り乱れる戦場の、人類の王都から最も離れた位置に座する魔王軍の陣地で、一人の男が疑問を呈した。


「馬鹿な。奴らは隠れ身(ハイド)の精鋭。まさかもう見つかったと言うのか?」


 怒気を放つ男に対し怯んだ様子の部下の魔族は、肩を震わせながら男の問いに答える。


「は、はい。彼らとの念話(テレパス)が遮断しましたので確定かと。さらに裏取りに放った百腕巨人も倒されたと聞き及びましたので、おそらく彼奴等は東西南北全面からの攻撃に勘づいたのではないかと……」

「百腕巨人も倒されていたのか! 倒した者の名は分かるのか!?」

「いえ。しかし『湖光の一族』が動いているとの報告が上がっていますので、魔剣の類が関係していると予想出来ます」

「よりにもよって『湖光の一族』か! クソッ! 天はとことん我らを嫌っているらしいな!」


 そう言うと男は、座っていた椅子から立ち上がる。ギィと軋む音が辺りに響き、彼の恐ろしさを演出させる。


「ど、どちらへ?」

「決まっているだろう」


 男は振り向かずにただ一点、自陣営が相対する本陣、マグナデアの王都に目を向ける。



「湖光の魔剣を折ってくる。故に付いて来い。この『暴虐』のゼラード様にな!」








 西門と東門に衛兵、ひいては騎士団が配置され、緊張度が高まり続ける一方のマグナデア国内。


 魔王軍が攻めてきたと言う報を聞いて恐怖する国民や、いずれ来たる魔王軍との決戦に盛りをつける冒険者達が国内に溢れる渦中で、俺が今何をしているのかと言えば――


「……ほう、百腕巨人は小柄な巨人とな! 巨人であるのに小柄とは、中々皮肉が利いているな!」

「ええ。ですが小柄とは言っても、それは巨人の中での話。実際はそれはもう天に届く程に高く聳え、我々の行手を阻んでおりました!」

「ほう! そうなのか、フィリア殿!?」

「……ええ、まぁそうですが……」

「そうなのです! まるで蟻の子のように群がってくる巨腕を、魔剣のリーシャと竜殺しのフィリアさんが、バッタバッタと薙ぎ払い――」


 国王に武勇伝を聞かせていた。


 武勇伝とは言っても俺が活躍した話はあまりないので、リーシャの話が主となってしまうが。それでも凄まじい冒険生活を送ってきたことだけは自信がある。部屋で茶飲んで待っているはずのリーシャには悪いが、今宵キミには英雄になって貰う。吟遊詩人嘉瀬アキラが広める、英雄リーシャの爆誕だ。


「…………あまり調子に乗ると、後で怒られますよ」

「わかってますよ」


 元が平凡な一般人だからって舐めるなよ。文系の力を見せてやるぜ。


「――そこで魔剣のリーシャは白銀の剣を煌めかせました。まるで水色の空に浮かぶ雲のように茫々とした色の光が剣から漏れ、辺り一面に乱れるように光を満たしたのです。そして彼女は、土の操術師たる俺に言いました。「わたしが一撃で仕留めます。だから道を作ってください」と」

「見事に捏造しましたね」

「面白けりゃいいんですよ」


 過去捏造や部分脚色なんて良くあることだ。古代の文献から見てもそれはより目立っているだろう。文句があるなら古代ギリシアの物書き達に言ってくれ。


 そこまで話を進めると、不意に横から食いついてくる同い年の少年が身を乗り出して来た。


「それで!? それでどうなったんだ!?」

「なんでお前も食いついてんだよ……」


 おい一条。お前、ヒロイックファンタジー好きだったの? 日本に帰ったら面白い本貸してやろうか? ラノベって言うんだけどな……


「――まぁ、いいや。……そして俺はその指示に従い、百腕巨人の五十の頭を模した魔力喞筒を作り、より効率的に彼女を援護するため――」

「――――失礼します! 抗魔戦線北門支部より伝来! 魔王軍は西門東門からの侵攻失敗により、北門に歩兵師団、騎兵師団を計5個師団に分けて波状攻撃を仕掛けてきた模様!」

「――何!?」

「5個師団……って、どのくらいだ?」

「えっと、この世界での一師団あたりの定員数がわからないから何ともいえないけど……元の世界だったら、多くて6万くらいだな」

「単純計算だと……一回の攻撃で1万2千人か? それを5回ってヤバいな」

「だけじゃない。2師団以上で突撃してくるかも知れないんだ。この報告が本当なら相当ヤバいぞ。かなりの数が常に此処に向かって走り続けてくるんだもんな」


 呑気に話す男子高校生2人に目も向けないで、ベール王は親指を顎にやって考えている。

 この状況を打開策はなんだ。勇者を使うか。耐えるしかないのか。今の勇者達で5個師団の大軍を食い止めるほどの力はあるのか。今の北門にこの状況を耐えられるほどの戦力は存在するのか。


「…………ないな。どう守っても突破される未来しか見えない。となればまた別の方法を模索するしか――」

「いえ、ベール王。ひとつだけ……()()だけこの状況を挽回できるような者がおります」


 考えるベールに対話を持ち掛けたのは、黙ってアキラの側に控えていたフィリアだった。


「ふむ。敵は此方よりも大多数。おまけに飯に飢えた死兵となっておる。それを押し返せるほどの英傑とな?」

「はい。得物を持てば一騎当千。戦場に立てば万夫不当」


 まるで英雄を物語る吟遊詩人のように、フィリアはリズム良くとある英雄を語る。


「百の巨腕を軽くいなし――」


 何処かで聞いたような話。

 ベール王が此方を見ている。


「我が愛する祖国を影ながら救った救国の英雄――」


 身に覚えのあるずらりと並んだ単語の数々。

 もう嫌な予感しかしないのがヤだ。


「彼の英雄の真名は――」







 強く扉を開け放つと、エルフの少女は湯気の漂うカップに口を付けて寛いでいた。仮にも奴隷である彼女が、こんな優雅にブレークタイムしてて良いのか、と言う疑問が頭を過ぎったが、その疑問は脳内を通過して行ってしまった。


「あ。お帰りなさい。アキラさ……ん?」


 俺はズンズンと無遠慮に部屋の中を進む。

 そんな俺の異常に気付いたのか、彼女が俺を呼ぶ声は尻すぼみになっていった。鬼気迫る形相の俺に不信感を持ったのか、彼女は眉を顰めて俺を見る。


「ど、どうしたんですか、アキラさん。いつにも増してすごい顔ですよ。ちょっ、ひゃっ、やめ……」

「――――リーシャ」

「ひゃい!」


 顔を赤面させたリーシャの肩に両手を置いて――俺は頭を下げた。



「頼む! 英雄になってくれ!」



「…………はい?」



忘れている方が多いと思いますが、リーシャの体内には寄濁虫きだくちゅうと呼ばれる寄生虫が棲みついています。

基本的に栄養分と魔力があれば生きれる種である為、どんなに汚い水溜りでも生息することが可能です。そのためリーシャが奴隷市場で呑んだ水の中の寄濁虫が体内に入り込んでしまったのです。

この設定はリーシャが出力100%のアロンダイトを使えない、と言う部分で粘り強く生きています。忘れるだろうけど、たまには思い出してあげてください。

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