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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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Side.B マグナデア王都防衛戦

 ベール王は焦っていた。

 突然仕掛けてきた魔王軍に対抗するために、四方の城門に指揮権限を与えた騎士を数人ずつ送り、余計な事をしかねない勇者達には待機命令を出し、そこでようやく一息をついた。


 魔王軍の取ってきた行動が奇襲だったこともあるのか、やはり状況は芳しくない。押され気味の現状だ。

 しかし予想の範囲内だったこともあり、なんとか抑え込めている……今まで整えてきた準備が戦況を物にしているような状態だ。

 それに頼りきりでは、いつか必ず押し戻されてしまう。そのためには相手の頭を潰すしかない。


 ともあれ、数十年護られてきた均衡の崩壊とは、必ず身内に敵がいなければならない。つまり、封鎖されていた国境線を超えて来たと言うことは、必ず此方側に裏切った者がいると言うことだ。

 それが夢魔の類に操られていたのだとしても、処刑せねばならない理由がある。この件で法の下に人間を殺めるのは、苦虫を噛む以上に苦々しい決断だ。


 そして一度処刑を行ってしまえば、国民の不安を煽るような結果となって士気を下げることになってしまう。


 それも奴らの策略の内だと言うのなら……


「……クソッ!」


 ベール王は肘掛けを殴る。

 ピシッと小さな音が響き、その音でベール王は少し溜飲を下げた。


 何処までも卑劣な相手だ。

 魔族は悪、人間は善として作られた存在だが、その成り立ち故に相容れない人魔は3度目の衝突を免れなかったのだ。

 そこに我ら人間が崇める女神(デア)の存在は在らず、しかし互いが互いに神の代行者としてぶつかっている様は何というか、とても滑稽な姿に見えるだろう。


 しかも善として作られたはずの人間は、異世界から何の関わりのない子供達を召喚して、戦いに参加させようとしている。魔族は己が力で戦おうとしているのに、だ。


 時々、思うことがある。

 善として作られた人間は、実は偽善として作られたのではないかと。

 人間であっても人を殺すし、肉の原料となる動物は殺す。人間の中では当然と処理される、『あたりまえ』だが、自然の秩序に背く行為ではある。

 理由があろうとなかろうと、命を散らすと言う行為そのものが重罪なのだから。


「……ふむ。来たか」


 バタバタと騒がしく廊下を駆ける音。

 勢いよく開かれた扉の先にいたのは、黒髪黒目の、何処か東の人にも似た雰囲気を持った勇者だった。


 名前はイチジョー・ユウキ。

 ユウキの意味はそのまま『勇気』らしく、まさに勇者として生まれたような熱苦しい正義漢だ。


「どうしたのかな、勇者殿」

「どうしたもこうしたもない! 何故、俺達は待機なんですか!? 民衆が苦しんでいるのでしょう!?」


 王の前だと言うのに不遜な態度。

 本来なら引っ捕らえられて不敬罪と言う禁錮10年の重罪が課されるのだが、今回ばかりは状況が状況、しかも、宣った相手が相手だ。大目に見てやらねばなるまい。


「貴殿達は我々の切り札だ。まだ切るべき時ではない」

「では、何故俺達を召喚したのですか! 無辜の民を護るためではないのですか!?」

「まだ死んでいないのだから良いだろう。今必要なのは、勇者と言う絶対的な力に頼らず、自分達のみで魔族を退けたと言う事実なのだ」

「そのために民衆の不安を煽るようなことをするのですか! 何の関係もない人達に不安を与えないために、俺達は今ここにいるのではないのですか!」

「不安を与えないために貴殿達には待機してもらっているのだ。幸い、勇者召喚は未だに隠匿しているからな」

「この……!」


 一条はギリッと歯を食いしばる。

 無論、ここまで自分達を動かさないことにも、理由があるのはわかっている。

 けれど納得がいかないのだ。何のために俺たちは召喚されたのか。召喚された意味はあったのか。


「クソ……!」

「……ふん」


 この勇者の言いたいことはわかる。

 誰よりも正義感の強い彼であれば、王都に攻め込まれてなお自分達を動かさないベールに憤怒するのは分かっていた。けれど動かすわけにはいかない。いま勇者を動かすことは、それだけの事態という不安を、無辜の人民に煽るだけになってしまうから。


 勇者を動かせるのであれば、ベールだって動かしてやりたい。けれど、動かせない状況にあるのだ。


「勇者と言う存在は、敵味方関係なく不安を煽る。力の膨張のし過ぎで破裂するほどに強大なのだ。わかってくれ」

「…………くっ」


 一条は目を伏せて天を仰ぐが、しかし諦めたような様子はない。


「……絶対に……」

「…………」


 これは行くな、ベールは確信する。

 声を伏せて発言したようだが、ベールには丸聞こえだ。しかし勇者が召喚されている、という事実さえ隠せていれば問題はない。正義感は強いが自己顕示欲の低い彼ならば、見逃しても大丈夫だろう。


「……いざとなれば頼むぞ、ユウキ殿」

「……っ! はい!」


 念のため保険を掛けておくことに損はないだろう。ベールはそう思いながら、退出していく一条を見る。再び息を吐いた。どうにも今日は疲れたらしい。


 今日一日だけでも様々なことがあったのだ。無理もない。


 しかし正念場はここからだ。これから魔王軍の攻撃は激化してくる。それを食い止めるための戦力は揃っている。これは攻撃戦ではなく防衛戦だ。


「此処へ来るなら来てみろ、魔王軍。蹴散らしてくれるわ」


 ベールは玉座から立ち上がった。



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