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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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53話 夢見る少年は巨人を超える

「そこで休んでろよティコ。操術師の本気って物を見せてやる!」


 高らかに宣言するアキラは、大地に膝を突いて両手の指を地面に置く。

 バチバチと虚空に紫電が走り、魔力の流れと大気が渦潮のように捻れ狂う。その中心には、やはりあの男がいる、

 アキラはまるで興奮状態ハイから覚めたように落ち着いており、スッと開かれた目は背筋が凍るほどに冷徹だ。この2週間でアキラは、2週間前以上に進化していた。




「――共感覚開始コネクト




 大地とアキラの魔力が連結する。

 文字通り、大地と一体化したアキラは、地面から送られてくる魔力に耐えかねて一瞬だけよろめくが、ぐっと足場を踏み抜いて堪える。




「地形情報、一括取得(ダウンロード)



 大地の土塊の一粒一粒から、様々な情報が送り込まれてくる。あまりの情報量に頭がパンク寸前になり、下顎がだらんとだらしなく吊り下がってしまう。

 しかしそれでアキラがやめることはない。共感覚はまだまだ序盤だ。始めたばっかりなのだ。簡単に止めることは、誰が止めようと自分が許さない。



「……思考連結、主軸転送(アップロード)



 送り込まれて来たと思ったら、今度はごっそりと何かが奪われていくかのような感覚に苛まれる。

 胸の内を喪失感が襲う。しかしこんなものは慣れている。ティコとの生活の中では、これ以上のものを奪われて来たのだ取り戻しの効かないものを奪われているのだ。


 空元気にニィと笑う。



「地脈均整、安定を確認」



 大地に潜むものはない。

 自分を阻むモノはいない。

 好き勝手に暴れられる。



擬似地盤形成(ローディング)……

 擬似地盤形成(ローディング)……!

 擬似地盤形成(ローディング)……!!」



 俺の力は土を操るだけの力だ。自由勝手の効かない、土を操る操術だ。本来であれば、弱いだけの土遊びにしかならない。それこそ、王宮の貴族達から言われていたことだ。

 けれど、その能力を思う存分使えるようにしたら……すなわち全ての土の情報さえ取り込めれば? 俺は自由勝手の効く能力を手に入れられると言うことになる。



 ならば、見せてやろうじゃないか。

 操術師の本気ってやつを。

 俺の、本気の操術を!



「――共感覚終了スイッチオン



 全工程終了。

 それはつまり、操術式の完成を意味する。


 俺でもわかるほどに異質な魔力に、剣聖と戦っていた百腕巨人が気付いた。

 アニメや漫画であればもう少し早い段階で、敵役であるキャラが気付くのだろうが、生憎と今回俺はひっそりと作業していた。

 ただでさえ膨大な量の魔力を扱うのだ。気付かれる方が厄介だ。


 気付かなかったことに、少し思うところもある。俺だって、敵に好き勝手やられるのは好みじゃないから。

 だから、お前の名前を借りるぜ。それで少しは許してくれや、百腕巨人!



「――――巨人の土腕(ヘカトンケイル)!」



 大地から飛び出す無数の巨腕。

 まるでこの時を待っていたかのように、土の巨腕は大地を割って、アキラの背後に待機する。



「俺が操れるのは土だけだからな。ちょっと工夫してみたんだよ。昔っから手先が器用なのは、数少ない俺の自慢できるポイントだからな」



 大地から取り入れた過多な情報。

 けれどそれを知識として反映出来れば、俺はあの百腕巨人をも超える巨人となれる。

 俺は操術師だ。何かを操ることに長けている。

 なら、この戦況すらも操り、圧倒的優位に鎮座している巨人を、あの高見から引き摺り落としてやろう。


「『百手の(ハンドレッド)おおおぉぉ――」



 ――標的確認(クレー・ロック)

 ――座標確定(ロック・オン)

 ――照準固定(エイム・フィクス)



 ――爆破(BOMB)



「――散弾銃ショットガン』ッ!」



 掛け声と共に発射される無数の巨腕。

 その全てが一堂に集まり、空を駆ける様は野鳥を思わせる。一つ一つが集まり一つのさらに大きな巨腕となる。

 しかし数で混ざっていても質量では負ける。元々が土であるのだから仕方がない。どれだけ集まっても、一つの強大な力に勝つことは不可能だ。所詮は烏合の衆なのだから。




 だから、確実に数で勝てる方法を編み出した。




「――鑑定!」



百腕の(ハンドレッド・)散弾銃(ショットガン)

 土で作った巨腕を一纏めにして、まるでショットガンのように敵に打ち込む怪力技だ。

 一つだけでも膨大な魔力量を必要とするのに、それを数十ずつに分けて散弾させるので、俺の持つ魔力では足りない可能性がある……というか、足りなくなるのは確定だった。



 そこで発明した技が、外気中に存在する魔素を、無理矢理何とかして俺の体に取り込む荒技だ。

 確かに操術を使っているだけでも魔力を必要とするため、すでに常時外気の魔素を吸っている状態になっている。しかし外気の魔素を吸っていると言うことは、吸い込み口が俺の身体の何処かに存在していると言うことだ。その吸い込み口を広げてしまえば、さらに多くの巨腕を作り出すことができる。


 そこで皆様お忘れであろう、俺の自前第二スキル『鑑定』だ。大概のことは王宮の図書室で調べてしまったためいらない子となっていたスキルだが、こんなところで活躍するとは夢にも思っていなかっただろう。


 『鑑定』は使用者の右目に魔力を宿して、対象物の鑑定を行うスキルだ。魔力を宿すと言うことは、何処かから魔力を搾取する。それが外気中の魔力だったと言うわけだ。

 完全に非戦闘系スキルなのだが、そもそも操術だって非戦闘系のスキルだ。戦闘で使うのにも問題ないだろう。



 巨人の巨腕の土塊の巨腕が衝突する。

 ギチギチと音を鳴らして、やがて巨人の腕が勝利するが、次なる巨腕が追い討ちをかける。



「波状攻撃だ。耐えられるかな?」

「悪魔みたいな笑みですね」



 事実、アキラの攻撃は悪魔的だった。

 どれだけ攻撃を退けても、次の攻撃が休む間もなくやってくる。しかもその術者は立っているだけでいい。体内魔力の使用量を最小限にしているのだ。後は己が生み出した百腕を操るだけでいいのである。



 だと言うのに――



「――よしっ! ちょっと行ってくる!」



 やはりアキラは興奮状態(ハイ)だ。

 きっとそうに違いない。



「はぁ? 完全に優勢じゃないですか。何故わざわざ出向こうとするんですか」

「撹乱だよ撹乱。今ここに留まってても、今の状況が絶えずに続くだけだからな。それに、あいつが一つでも防御を捨てて攻撃でもして来た時の防御なんて用意してないからな。ここは肝心要である俺が囮になるしかないんだよ」

「な、なるほど……?」


 思ったよりも理性的なアキラの説得に納得してしまうリーシャ。しかしアキラが捏ねたのは屁理屈だ。アキラは単純に動き回りたいだけだった。


 アキラは足元に操術を用いて質感を柔くする。そこに足を沈めて、今度はガッチリと固定した。全自動歩行通路の完成だ。


「それじゃあ、行ってくる!」

「あっ、ちょっ、待っ――」


 リーシャの声は、アキラには届かなかった。



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