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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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38話 一寸先も闇の中

「――え? まだ、帰ってきていない?」


 わたしがアキラさんから逃げて数時間後。

 頭を冷やし終えたわたしは、忸怩たる思いでギルドの扉を開いた。


 アキラさんは冒険者ギルドに帰っておらず、未だに森の中にいることが判明した。やはり操術師である彼を置いてきたのは間違いだったかと反省する。


 操術師には何かを操ることに長けた職業だ。だから戦闘は専門外もいいところ。

 しかし彼はおよそ予想もつかない策略を思い付くのが得意な人種だ。彼の戦闘スタイルは、そのほとんどが逃げの一手。身体を大事に、そして命を大事にする。だから不思議と、彼に対する憂いと言うものが消えていた。


 どうせ彼のことだから無駄な戦闘をせずに逃げ回っていることだろう。そんな甘い考えを持っていた。


 そのうち帰ってくるだろう。そう安心して心を落ち着け、吐き出したくなるような寂しい気持ちと、


 彼の帰りを待ち、そして夜が更け――


「帰って、来ない?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ――あれから、幾日の時が経ったのだろう。


 すっかり俺の心は廃れ、身体は口が常に半開きになるほどに疲れが溜まっている。億劫とした気分が益々低落していき、精神は腐の気に蝕まれるように堕落していた。


 陽の光には全く当たらず、喉の潤いは枯れて声を出すたびにガラガラとした雑音が鳴る。

 もはや人間として機能しているのか、我が事ながら甚だ疑問だが、しかしそれを確認する術を持たない今、俺の疑問は泡沫に消えて行くのみだ。


 それもこれも、全ては――


「お兄さん……♡」


 俺の腰に両手を回し、飽きる事なく撫で回している少女のせいだ。彼女は俺が動けないのを良いことに、様々な事をしでかしてきやがった。


 例えを出すことも恐ろしい。なにせやられたことの全てが、俺の認めていないことなのだから。しかしこれだけは言える。



 不承にも、俺は童貞を卒業した、と。



 初体験が気持ちよさよりも恐ろしさが勝り、女性不信待ったなしにまで追い込まれたその時の気持ちを、俺はどう説明すれば良いのだろう。

 少なくとも、絶望的な気持ちであったことに間違いはないだろう。逃げ道もなく、癒やしもなく、許してもいない性交が気持ちいいわけがない。


 異世界なんて碌なもんじゃないと思い始めてしまうほど、彼女の陵辱は肉食的だった。


 しかし彼女は14歳。3歳差とは言え、この状況で年下に欲情するほど俺のメンタルは強くない。言い方を変えれば、彼女相手におっ勃てるわけがなかったのだ。


 なら何故俺は、彼女に純潔を許してしまったのか。


 ――答えは簡単だった。


「お兄さん。口開けて? はい、あ〜ん」


 彼女が差し出してくる匙。

 そこに乗っているのはティコ特製の煮込み汁。……いや、西洋風の世界だから、シチューと言えば良いのだろうか。


 それ自体には問題はない。不味いわけでも、食べられないものでもないのだ。ただ、そこに混入されているものに問題があるわけで。


「……っ。〜〜〜〜ッ!!」

「――、アハッ♡」


 喉が焼けるように熱い。眦に涙が溜まり、鼻から汁が溢れてくる。カハッ、と俺が喉から煮込み汁を吐き出すと、すぐさまティコは匙を突っ込んでくる。


「もぅ〜、ダメでしょ? お兄さん。食材は粗末にしちゃいけませんっ」

「ぉぐ……ッッ!」


 そして再び俺の喉を襲う熱い痛み。

 もはやループに等しいレベルで、彼女は俺に食べさせようとしてくる。こふっ、と吐き出してもまた。何度も。何度も。彼女は食べさせようとしてくる。


 何故か。


 それは、この煮込み汁の中に混入されている()()に原因があった。

 媚薬とは言ってもただの媚薬ではなく、彼女が言うには、比較的他の媚薬よりも効能が高い催淫剤なのだそうだ。そのせいで副作用として食道から服用した俺は、喉に痛みを感じるのだそう。


 何処から調達してきたのか知らないが、調合しないと手に入れられない薬を持っていると言うことは、何処かしらの街へと出向いていると言うことだろう。


 はた迷惑だ。


 抱いた感想はそれだけだった。

 本来ならもっと色々あっても良いのかも知れない。しかし今の俺は周りへの関心が極端に減っているのだ。どうでもいい、と流せてしまうのだ。


「けほっ、こほっ……」

「大丈夫? お兄さん」

「誰のせいだと……!」


 そこで息詰まった俺は沸騰する頭を冷やし、憤怒に傾きつつある心を宥める。


(落ち着け、俺。何のためにここまで我慢してきたと思ってるんだ。コイツを油断させるためだろう。警戒心上がるようなことしてどうすんだ……!)


 溢れる気持ちを抑え込む。

 精神は廃れきっているのだろうが、しかし気持ちは廃れていない。それを俺は密かに確信し、媚薬入りの食い物を寄越してくるティコを鋭く睨む。


「……あははっ! やっぱりまだ足掻くんだね、お兄さん! いいよ、いいよ。もっと足掻いて。そういうところ、大好き♡」

「…………。ケホ」


 ようやく落ち着いてきた喉の痛みを耐え抜いた俺は、最後に一つ咳き込む。


(頼むぞ、リーシャ……。お前だけが頼りなんだ……!)


 俺は天へと、そして愛すべき仲間へ願い乞う。

 媚薬入りシチューを粗方食べさせ終えたティコは、俺の体に一回り小さな少女の体を重ねた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い! [一言] この例えが褒め言葉になるかわかんないですけど、リゼロ をテンプレで希釈してマイルドで読みやすくした感じ 好き
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