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Q.平凡な高校生は異世界で生き残れるのだろうか?  作者: 光合セイ
第一部マグナデア編

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23話 VS毛深い巨人

 ズンッ、ズンッ、と大きな足音を立て走り寄ってくる巨大な大男。一歩一歩の歩みは遅いが、しかし確実に此方へと向いた爪先は自分達を逃してはくれなそうだ。


 作戦は至極単純。いつも通りの一撃離脱(ヒット&アウェイ)だ。もちろん魔法使いには魔法を放ってもらうとして、俺は全体を隈なくサポートする役だ。


 そもそも操術師は戦闘向きの職業ではない。大多数の操術師が工事現場にいるように、建築等で細かな作業をするのに向いている非戦闘系職業だ。


 操術師で冒険をしている馬鹿は、かなり少なく、世界広しと言えど俺を含む指折りで数えられるくらいの数人くらいしかいないだろう。


 だから俺が冒険する時には、状況を把握して細かく前線の戦士達に指令を飛ばす司令塔と、状況に応じて罠を仕掛ける罠師(トラッパー)の2個を受け持つことになる。


 盤面は草木生茂る森林フィールド。俺が動かせる駒は4つ。周りを索敵しても見当たらないため敵は1つのみ。木が邪魔で見えていないかもしれないが、戦闘が終わるまでの間、その可能性は除外する。味方全体の体力と魔力を考えたら短期決戦を目指すのが良。


「――リーシャ! バカラと巨人に突っ込め! スコットさんは2人の援護を!」

「何属性がお望み〜?」

「なんの属性が使えますか?」

「水とぉ……風よ〜」

「是非とも水属性で!」


 水属性の魔法は四大属性の魔法の中でも、かなり汎用しやすい魔法だ。神秘度がめっちゃ高いこの世界では、その魔法の効果をそのまま用いることが多いらしいのだが、間接的な効果も期待できる。それに土の操術師としての要望も加えて二択のうちの水をチョイスしてみた。


「りょ〜かい〜。【ウォーターバレル】ロックオ〜ン♪」


 魔法剣士としての魔法を使わないリーシャのせいで、魔法とはどんなものぞ、と興味がそそられる。

 見ると、透明な水滴がスコットさんの人差し指の先に集合し、鉄砲のバレルの先を形作っている。見れば見るほど不思議だが、客観的に見ると突然スコットさんの指先に水が集まって銃口を作っただけであり、神秘性も何もあったもんじゃない。


 諦めて異世界の魔法から目を逸らす。


 前を向くと、ちょうどリーシャが巨人に斬りかかるところだった。小柄な体格を活かして巨人の懐に入り込み、下から斬り上げるように胴体を断つ。当然巨人も抵抗したが、リーシャの素早さに追いつかず、一閃を叩き込まれてしまった。


 リーシャの剣で裂かれた傷から、ドパッと返り血がはねかかり、リーシャの白い肌を真紅に染める。痛みに苦しみ咆哮をあげようとした直前――巨人よりも頭一つ分低い赤髪の男が、巨人相手に剣を振りかざす。


「――どりゃあああ!」


 男の剣はリーシャが刻み込んだ傷に対して、クロスを描くようにビッグフットの胴を抉った。


「……なるほど。接点あそこね?」

「はい。お願いします!」


 スコットの指先の銃口が変形していくのを確認して、俺は操術で土を集め始める。自分を中心にして描かれたような魔力渦は、球体の形を作っていき、地表に小さな大砲を作り出す。


「合わせますよ!」

「りょ〜かい〜」

「いっ、せーのッ!」


 俺が「せッ!」と叫ぶと同時に、土塊と水の弾丸が射出された。狙いすまされた狙撃は予測された軌道を描いてビッグフットの一番薄い肌――リーシャとバカラが与えた傷の接点へと着弾した。


「ooooOOOOOOO!!」


 土の硬さと水の圧力が固まってできた泥水弾丸は、ほとんど対人ライフルと同じ威力を出せるだろう。

 操術と魔法によるコンボ技で狙撃されたビッグフットは、後ろへとよろめいて尻餅をついた。


「よし! 畳み掛けるぞ!」


 俺の指示を聞いた3人が思い思いに攻撃手段を手にする。

 リーシャとバカラは剣を、スコットさんは魔法の詠唱を開始し、俺はと言うとビッグフットが逃げられないように足に枷を括り付けた。


 大地から伸びた足枷だ。

 そう簡単に逃げられると思うな……!



          ×  ×  ×



 バカラとリーシャに切り刻まれ、スコットさんの魔法によってボッコボコにされたビッグフットは、青痣だらけになって臨終した。


 手も足も出せなかったのは可哀想だが、これも世の定めである。コイツよりも俺たち4人の方が強かった、というだけの話なのだ。


 この4人の中で肉を剥ぐのが一番上手いリーシャに、報告材料であるビッグフット――もといサスカッチの心臓を抉り出してもらっている間は、俺たち3人は手持ち無沙汰になりながら話していた。


「いやー、めっちゃ楽だったな!」

「そうねぇ〜。すごく的確な指示だったわよ〜」

「……あ、ありがとうございます」


 褒められると急に照れ臭くなって、バカラ達から目を逸らしてしまう。日本の頃からそうだったのだが、俺は基本、褒められそうになるとあの手この手で逃げてしまう癖があった。


 それは多分、思春期の子供としての感情で、褒められるのは嫌だし、かと言って怒られるのも嫌だという矛盾した感情だ。


 だから今回も逃げたい感情に駆られたが、森の中では逃げ場所がないと理性が止めにかかってきているのだ。俺の嬉しい苦悶に気付かずにバカラは話を広げる。


「それもあるが、お前、操術で大砲作り出すとかどんな思考回路してんだよ? 戦闘中に指示出しながらあんなん作るとか、器用すぎねぇか?」

「……あははっ、これでも操術師の端くれだからな」

「操術師でも〜あんなことできる人はいないわよ〜?」

「そ、そうですか……」


 褒められ慣れてないせいで、褒められるのがめっちゃ痒く感じる。リーシャに助けを求めようと視線を向けると、ドス黒いモノを片手で握ったリーシャが此方へと向かってきていた。


 ……うぇっ。


「……リ、リーシャ? それ、もしかして……」

「……? サスカッチの心臓ですが?」

「うっ……」


 吐き気が首元まで昇ってくる。


 締め付けられるような感覚に襲われて、視線を逸らして目を強く瞑る。大きく息を吸い込んで森の空気を取り込んだ。


 とにかく異世界では未知未見なことが多すぎる。心臓を片手で鷲掴みするエルフなんてその代表格にも等しいだろう。やはりこの世界は幻想的とは遠くかけ離れている。


 ゲロを喉奥に飲み込んだ俺は、リーシャたちに一言言ってすぐにでも帰ることにした。幸いクエストも達成したことで文句は言われることもなく、帰還の準備が始まった。



 ……いやぁ、嫌なモノを見た。



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