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65話 『やあ、五年ぶり』

「……今まで何してた」

『色々してたんだよ』


 最早懐かしい白い空間。目の前のアグノスと会うのも相当久方ぶりだ。

 すぐに会えるとかほざいておきながら、再会がこれほど遅くなるとは誰が想像しただろう。


「で、具体的には?」

『予定していたキミとの連絡手段。なんでか回線が悪かったからその原因の捜索と復旧作業。あと天照と今後の相談かな。他にも色々あるけど、なんせ5年だからねぇ』

「……あぁ、連絡阻害系ボスか」

『なにそれ弱そう』


 昔お前が言い始めたこったろうが。

 なに俺に言い出しっぺの冤罪吹っかけようとしてんの? ぶっ飛ばすぞ?


『冗談だから拳開いてね』

「張り手がいいのか」

『まず殴ろうとしないでね』


 アキラの振り上げた腕を掴んで降ろすアグノス。

 え、なんだこいつ、細身の割に力あるじゃん。もうお前が『終末論』討伐しに行けば?


「んで、その色々を聞かせてもらおうか。わざわざまたこの場所に連れて来たってことは、何かあったんだろ?」

『そう、割と緊急の案件だ。キミには『終末論』討伐だけに当たってもらおうと思ってたんだけど、他にもやってもらうことが出来てしまった』

「……うん、まぁだろうなとは思ってたよ」


 鬼、とかいう種族が暴れているのはわかっている。恐らくそれなのだろうとアキラは高を括る。


『それは一旦置いといて、だ』

「置いといていいのか、そんな大事なこと」

『僕とキミにとっては些細な問題だよ。おつかいクエストみたいな物さ』

「お前が良いなら俺は別にそれでいいけどさ……」


 まぁいっか。どうせ今は夢の中。

 焦って出ない答えを考えるよりは、ゆっくりと次のことを考えればいいだろう。


『キミに『念話』というスキルを授けた。普段僕がキミと接触している時に使っているスキルだよ。』

『…………こういうことか』

『飲み込み早いね。さすが』


 アグノスがパチパチと拍手し、それを見たアキラは苛立ちを覚える。

 なんか子供扱いされてるような気がしてるんだよな。俺よりも年端もいかなそうな見た目のくせに。


 スキルを起動するとカチッ、とハマったような感覚がする。

 なるほどこれか。気をつけてないと思考が筒抜けとかありそうだな。忘れないようにしないと。


『さて、じゃあ元の話に戻ろうか』

「…………なんだっけ」

『キミにやってもらうこと、だよ』


 そうだったそうだった。

 緊急な案件、とかほざいて後に回された件のことだ。後に回されるくらいだし、大したことではないのだろう。

 大半が鬼のことだろう。鬼なら討伐経験がある。突然鬼ヶ島に行って桃太郎して来い、とか言われない限りは対処は出来るはずだ。


 そんなアキラの楽観的な態度を見たアグノスは、右手指を三本立てた。


『キミに対処してもらう厄災は全部で三つ』

「……え、は? 3つ?」

『天照はこれを『大和の三災』と呼んでるよ』


 もしかしたら存じてないかも。

 あれ? 鬼以外にもあるとか? 人喰い鬼とか日本の最たる厄災じゃない?


『一つはキミが既に相手にしている『百鬼夜行』という妖集団だね』

「あぁやっぱりそうなんだ……え、集団?」

『正確には集団の残党って言うのが正解かな。百年くらい前に壊滅させられたのに、未だに人を食べて生き永らえてるんだってさ』

「あー……なるほどねぇ」


 じゃあ元興寺や八瀬童子が使ってた『呪いのなんたら』ってスキルも、その組織由来だったりするのだろうか。


 妖怪を召喚するスキルだったか。

 百鬼夜行に参加していた妖怪を召喚する、みたいな? 一番やばそうな牛鬼(やつ)は討伐されてるし、それなら何とかなりそうだけども……


「他の2つは?」

『『終末論』のことだね』

「……あ、うん。想像はしてた」


 日本にとって危険分子でしかない、らしい『終末論』とやらが見られてないわけがない。

 てか此処までアグノスの指令で動いていたわけだけど、日本の神様の指令って出てなかったのね。まじでアグノスって何処陣営なの?


『最後に、これが一番面倒なんだけど。外国から国を狙われてるから、武力行使の際は手伝ってって依頼が来てる』

「なにそれ」

『いや本当に何なんだろうね。国防を異世界の勇者に任せるって、この国ちょっと終わってるよ』


 俺がいなかったらどうなってんだ史実。

 …………いや待て、そんな史実ないだろ。

 少なくとも戦国時代に海外からの侵略を受ける戦争なんてなかったはずだ。……日本から行く朝鮮出兵はあるけど。


「何処の国?」

『さあね。まぁでも西から来るんじゃない?』


 東は太平洋。

 西は色々、か。


 残当だな。

 アグノスからしたらどうでもいいんだろうけど、俺としては故郷がめちゃくちゃにされそうで気が気でない。

 とはいえ状況がわからない以上、どうしたって始まらないのも現状である。状況がわかるまでは待機……んー、いや、他のことに気を回すのが上策になる、のか?


『ちなみに、この海外勢力にも名前があるらしくてね』

「へぇ、国の名前はわからないのに? てことはこっちも組織か?」

『それはわからないけど。『エニグマ教団』っていうらしいよ。気をつけてね』

「うぇ、宗教団体かよ。たしかに厄介だな」


 宗教が面倒なのは歴史が証明している。

 というか一向宗のような神を信じる門徒の暴走が面倒なのは何処でも一緒だ。

 日本を狙うということは、名が売れてなくともそれなりに海外に勢力を持っていそうだ。


「わかった。なんとかしよう」

『あれ、もう算段ついたの?』

「史実でも似たようなイベントが起こるし、その時に色々聞き回ってみるよ」


 日本にやってくる外来勢力。それだけでパッと思いつく奴らが一つ。


 伴天連・イエズス会。

 奴らは信長に謁見して、畿内での布教を認めて貰いたいと考えているはず。

 此方から向かわずとも、奴らは必ず京都にやって来る。エニグマ教団がどんな宗教勢力か知らないが、世界最大の宗教を味方に付ければ怖くない。


『そっか。じゃあ頼んだよ』

「ああ。任せとけ。お前も……何してんのか知らんが、頼んだぞ」

『これからは割と頻繁になると思うよ?』

「なんでだよ」

『だって――』



ーーー



『『念話』が使えるもんね』

『…………うるせえ』


 本日1566年元日。

 新年早々頭の中に()()の声が聞こえて来た。



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