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48話 箕作城攻城戦

「ンで、どうすんのか決まったか?」

「おう。寅の刻に決行する。それまで身体を休めるように全軍に伝えておけ」

「わかった。任せとけ」

「あ、ちょっと待って。全員に()()持たせといて」

「ん? ああ山城だものな。わかったぜ。おーいお前らァ!」


 そんな大声で叫ぶなよ。

 六角に聞かれて不意打ち掛けられたらどうするんだよ。まぁそんな余裕がないのは知っているが。


 現在、六角は当主と家臣の仲がめちゃくちゃ悪い時期だ。

 六角家臣には一切調略は仕掛けていないが、それもこれも今回の作戦のためである。

 仕掛ければ寝返りそうな物だが、まぁ仕方あるまい。暁の空に特大の花火を咲かせようじゃないか。


「準備出来たぜ、参謀殿」

「おう。あんがとなゴンベー。報酬は信長様に頼め」

「アンタ俺を殺す気か? あの方に言えるわけねェだろ」


 それはそう。

 だが与えられる俸禄がない物で。金が欲しいならやるけれども、いる?


「金より武功が欲しいぜ。よろしく頼むぞ参謀殿」

「その願いはお前で二人目だな。まぁ頑張って取って来い」

「まぁそりゃそうだな」


 一豊にも頼まれたよ、そんなに欲しいのか?

 一番槍なんて、そんな大した功績だとは思えないんだけどなぁ。


「で、こんな量の()()()()()()()どうすんだ?」

「まぁ色々とな。ゴンベーも休んでこい。明日は早いぞ」

「……そうしますかね。んじゃ明日は頼むぞ参謀殿」


 ……流石は漫画の主人公。

 何かを察したのか、権兵衛は何も問わずに離れていった。勘の鋭さはすごいな。

 将来日本史にも残る大やらかしをする、やらかし権兵衛とは思えない。有能じゃんどうした。



 それはそれとして。


「さて、始めるか」


 単純なゴリ押しほど面白くない物はない。

 そんなんじゃ織田六角双方の被害を拡大させるだけ。目指すのは双方被害のない戦いだ。


 戦いとなるなら被害を出さないのは不可能に近いが、生憎とアキラは異世界帰り。利家からは妖術師とも呼ばれる異能者だ。


「土を雷管に、炮烙玉は煙火玉に。戦場を花火会場に変えるのが俺の戦い方だ。見てろよ六角、それに魔王様。歴史に残る大きな花火を上げてやる」



ーーー



「狙いは六角の主城・観音寺城。落とす為に必要となる過程は支城となる箕作城の陥落、同じく支城である和田山城の陥落。この二つが不可欠です」

「観音寺城は我、箕作城は其方が行くが、和田山はどうするのだ」

「其方は稲葉殿を向かわせたら宜しいかと。美濃三人衆の力を見せて頂く絶好の機会ではないですか?」

「ふむ。確かにな」


 美濃三人衆は全員が織田に降った。

 だがその力を発揮する場所を与えられていない。この六角戦は絶好の機会だろう。

 念の為の保険として丹羽殿も置いておけば、かなり盤石な体制となるだろう。美濃三人衆に米五郎左の軍とか考えるだけで恐ろしいな。


「ではそれで行こう。……其方の奇策も見たいしな」

「ええ。それはもう。被害0で落としてみせますよ」

「言ったな。では見せてもらおう。織田家参謀の知恵をな」


 ハッハッハと高笑いする信長。

 やっべぇえらいこと言っちゃったかもしれない。



ーーー



 翌日。早朝。

 山の麓に布陣した信長軍と共に、()()()を待つ。

 上では織田軍の布陣に気付いたのか、六角軍が籠城戦の待機をして待っている。


 パァン! とけたたましい音が山に木霊する。

 何度も何度も同じ音が鳴り響き、山の上からは悲鳴や驚嘆の声が聞こえてくる。

 恐らく昨夜仕掛けた装置が起動したのだろう。この音で驚いたのは六角軍だけではない。


「な、なんだぁ? 何が起こってんだ?」

「行くぞ利家、攻撃命令」

「え、お、応! 全軍突撃!」


 応、と帰って来たのは少数。

 他は正体不明の大きな音に恐れ慄いている。

 そんな兵士達にイラッとしながら、鉄甲冑に身を纏ったアキラは声を張り上げる。


「あれは俺が仕込んだ爆弾だ! 気にせず進め! 勝機は我らにあるぞ!」


 その声を聞いた兵達はようやく声を上げ、箕作城攻城戦がようやく開始される。



 アキラが何をしたか解説をしよう。


 山城、ということは外からの攻撃では一筋縄で落ちることはない。そう判断したアキラは中からの攻撃を画策した。


 アキラの操術は、いまや土であれば何であろうと操れる。何であろうと、つまり山であろうと操れる。

 夜半の間に土の下から炮烙玉を忍ばせ、着火装置として日常的に使っている火の魔石を併用することで起爆を示唆した。


 魔石起動のキーとなるのは音。

 今回の場合は、敵方の兵士達の足音だ。


 この作戦は六角方の混乱を招くための作戦。つまり兵士達を混乱させて戦闘不能にすればいいだけの話。

 城を陥落させるのではなく、城を機能不能にすることで勝利を得る。土を操り爆弾を仕込ませることが出来るアキラにしか出来ない作戦である。


「北の秀吉サル、東の佐々(さっさ)にも伝令を飛ばせ! 全方位から一気に叩くぞ!」

「六角兵は昨夜渡した芋がらで捕縛しろ! 乱取りは許さねえぞ!」

「「「「オウ!!」」」」



 こうして開戦した箕作城攻城戦は、瞬く間に織田軍の進行に脅かされ、1日も掛けずに陥落することとなった。



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