表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/173

43話 平々凡々

「――くん、――アキラくん!」

「義父上……っ!」


 呼ばれて目を覚ます。

 あたりはすっかり明るくなって、夜闇の静けさは月と共に世界の星へと消えている。


 それはそれとして。

 目の前で泣きそうになってる我が家族は、どうしたのだろうか。死人が目を覚ましたみたいな顔してるぞ。


 俺、なんかあったっけ?


「ど、どしたの。なんかあった?」

「……わからないよ。覚えてないの?」

「義父上は熱田神宮で倒れてたんです」

「熱田さんで?」


 昨夜の記憶が曖昧で、思い出そうにも思い出せな


『殺す気で生きろ。死ぬなよ?』


(――あ)


 脳裏をよぎったのは青肌の鬼。

 アキラの喉を串刺しにし、正体不明の暴力で息が止まる寸前まで痛ぶった怪物の姿。

 喉から槍が抜かれた後も、何度も殺されかけた。そしてその度に師匠からストップがかけられた。その何処かで意識が途切れたのだろうか。


 あの青鬼は何者で、どうやって俺に攻撃した? 一晩の戦いを経て尚も素性が割れない。

 役小角の関係者だと言うのなら、役小角に関して調べればいいのか? そもあの翁に関する資料はあるのか?


「義父上。朝ご飯食べられますか?」

「うん。食べる。千代、孫六。何食べたい?」

「おれ()()()()()がいいです!」

「……」

「アキラくんは休んでて! 私が作るから!」


 子供に甘々パパの顔を見せたアキラは、優梨にドクターストップをかけられる。

 癒術師の言に無理を通すことは流石のアキラも出来ず、あちゃーと片目を瞑る。


「あちゃ、じゃあ好きな物は昼飯か夕飯だな」

「あ ん せ い に!」

「……はい」


 こりゃダメそうだ。


「まったく。後で話もあるからね」

「……あい」

「義父上……威厳……」

「うるさいぞ孫六。千代、優梨を手伝ってあげて」

「はい」


 今日も嘉瀬家は平和である。



ーーー



 朝食も食べ終わって塾開講の下準備。

 千代と孫六は自分の部屋へ私物を撮りに行き、勉強部屋にはアキラと優梨の二人きりである。

 何を言われるのかと震えながらの作業をこなしていると、


「それで? なにがあったの」

「自称日本一の妖術師と修行だよ」

「……何をしたの?」

「鬼退治。負けたけどね」

「負けたんだ」

「もうボッコボコに。一回死にかけた」

「死にかけたんだ!?」


 死にかけた、どころの騒ぎではない。

 見ようによっては死んでいた、といっても過言ではないだろう。

 喉串刺しとか物理攻撃だったら即死レベルの攻撃である。恐らく妖術攻撃だったからよかったものの。


「そっか。生きてて良かったよ」

「本当にね。手加減されてたんだろうなぁ」


 手加減されてもボコボコにされるのである。

 鍛え途中の妖力、単純な膂力、双方共に負けている。もはやどうしろと。


「……考え方次第、か」

「アキラくん。そろそろ皆来るよ」

「……あ、ああ。わかったよ」


 嘉瀬塾、開講である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ