1. 天変地異
東京都港区:証券会社
「どうなってんだ……?」
青二才ながら腕の見込まれたディーラーが、10枚近く並べられたモニタを交互に眺めつつ、不安げに呟いた。
僅かな値動きに現代数学の粋を結集して作られたアルゴリズム群が即応し、勝者と敗者が決まる。新たな大富豪が誕生し、誰かが大貧民に転落したりもする。そんな鉄火場の中でも特に熾烈なのはニューヨーク証券取引所で、開場したばかりのそこの戦況を示すチャートが、ある時点を境に途切れてしまっていた。
「もしかして、落ちてる?」
「みたいだな……売りも買いも駄目だ」
「冗談だろ、おい」
ざわざわとした、不穏な空気がトレーディングルームに満ちる。
ある者は頬を引っ叩いて目を凝らし、またある者は尚も注文を試みる。しかし状況は一向に改善される気配はなく、全て通信エラー。
「とりあえず、原因を調べようか」
壮年のシニアマネージャーが鷹揚な口調でそう指示した。それからコーヒーを一口飲んでみせ、皆を落ち着かせる。
正直なところ、損失については考えたくない。しかし騒いだところで直る訳ではないのも事実だ。
「恐らく、システム障害か何かだろう。そのうち直るさ」
埼玉県戸田市:スポーツ居酒屋
「現在、中継が繋がりにくい状況となっており……」
80インチの大型プラズマテレビ上では、テンポのいい実況が売りの名物アナウンサーが詫びていた。
「視聴者の皆様には大変ご迷惑を……」
「ええーっ」
画面に映っているのは、本来サッカー日本代表のはずだった。だがマルセイユの国際試合で強豪フランスを相手に1点を先制した直後、生中継がいきなりストップしてしまったのだ。
スポーツバーに集まって、先刻までビール片手に気炎を上げていた大学ボート部の応援団は、揃って顔を見合わせる。
「何だよ、いいとこだったのに……」
「ほんと、ひでえなぁ」
常連の若者達が次々と不平をこぼす。店内の雰囲気な消沈して、フライドポテトとシーザーサラダ、キリン生のピッチャーを運んできた店の女の子まで済まなさそうだ。
そうした中、おもむろにスマートフォンを取り出してポチポチと操作し始めた1人が、急に虚を突かれたような顔をする。
「なあ、Twiterまで繋がんなくね?」
東京都板橋区:国道17号
「お客さん、羨ましいですね」
赤信号の交差点を右折レーンに入れたところで、タクシーの運転手が上機嫌に言う。
客はアルコールの入った男女で――女の方が一回り以上若い。どっかの店から連れ出したんだろう。明日は平日だというのに、まったく元気なこった。
「あはは、そうでしょそうでしょ。マリがさ~歩くの嫌って言うからさ~」
「だって、もう飲んでるし~」
「僕は紳士だから、タクシー呼んだって訳」
「カズ君ステキ~」
酔客は二人の世界で盛り上がっている。まあ公然猥褻とかでなければ何でもいい。
それより一番気に入っているのは、代金だ。こういう客は羽振りが良い。実際、男が伝えた目的地は川口元郷の高層マンションで、都心からだと結構な金額になる。運転で金を稼ぐ身としてはありがたい限りだ。
昭和の頃であれば、わざと遠回りしてメーターを回したりしたものだが……カーナビなんて文明の利器が登場し、しかも位置情報が何処かのサーバーに送信されるようになったのがこの令和の時代。今は昔だ。
(ん……?)
カーナビについて思考を巡らせた運転手は、そこで異変に気付いた。
さっきからカーナビが、GPSを受信できないと訴えていた。高速道路やトンネルの中という訳でもなく、4、5階建てのビルくらいしか周囲にはなかった。
(妙だな、こいつ新型で、準天頂まで使えるらしいのに)
千葉県勝浦市:キャンプ場
「あれ、おっかしいな……」
初春の肌寒い夜風の中、望遠鏡を覗いていた地学サークルの女子大生。彼女は望遠鏡から目を放し、思い切り首を傾げる。
大風呂敷な起業家によればそう遠くないうちに行けるかもしれない火星に、彼女は望遠鏡の焦点を合わせていた。しかしいつの間にか火星は何処かに消え、ただの暗闇しか映らなくなった。
「智子、どうかした?」
「それがさ智慧、急に火星が見えなくなっちゃって」
「え、あそこに……というか月まで消えてない?」
「あ、本当だ……」
あるべき場所に天体はなく、辺りは不気味に暗さが増していた。とにかく、月や火星が突然見つからなくなるなんてあり得ない。
空に雲がかかったならともかく、空は全くの快晴で遮るものなど何もない。
「こんなの訳分からないよ」
「うん、何処行っちゃったんだろ……」
空は猛烈に不可解で、二人はあてもなく星を眺める。
星座はまるで変わらなかったのに、月と火星は迷子になっていた。衛星や惑星の見え方なんて、地球上の要素を別とすれば、年月日によってしか変わらないはずなのに。
「それからさ智子、ちょっと思うんだけど……」
「え、何?」
「何かさっきからゴーッて妙な音しない?」
5ch系避難所:「韓国の釜山がいきなり超退化した件」
1 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:44:09 ID:ZgXru5Dyp
俺、対馬旅行中だったんだけどさ……韓国展望台から見える釜山が突然退化してビビったんだけど。
何かやばくね?
2 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:45:16 ID:RAEEGfA2N
>>1
ああ、やばいな。お前の頭が。
3 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:46:30 ID:ArbCyTghE
それより超規模ネット障害中だぜ今?
韓国どころじゃねえよ
4 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:48:09 ID:ZgXru5Dyp
>>2
いや、マジでこんな感じなの。どうして?
急に街の光消えるし、つーかビル群がなくなったし、訳分からなさすぎる。
Before
ttps://dotap.org/uploader/dotup.org4643893.jpg
After
ttps://dotap.org/uploader/dotup.org4645140.jpg
5 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:49:31 ID:hHt8eeyTf
>>4
捏造乙
6 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:49:48 ID:T8eet7j5p
じゃあいっそ李氏朝鮮まで戻っててくれ
7 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:51:34 ID:RAEEGfA2N
>>6
残念! 中途半端に退化した結果、日本統治下に戻ってしまった!
8 名前:避難所の名無しさん[sage] 投稿日:202X/03/09(日) 23:52:25 ID:T8eet7j5p
>>7
冗談でもやめて