シリーズ1 2人が姉妹となるまで
あらすじにもありますが、初投稿です。
まだまだ未熟だと思いますが、読んで頂ければ幸いです。
20/7/6 改稿。改行が増えたり口調のブレを減らしたり、森での戦闘シーンが消えたりクーが頭を撫でられたり、その他にもいろいろ増えたりしました。短編版は旧バージョンのまま放っておくので、見比べたい方はそちらからどうぞ。
シリーズ1『2人が姉妹となるまで』
魔術専門学院。
魔術だけを学ぶ学校。
一定以上の素質があれば、スラムに住む子供でも入学出来る場所。
その学院に存在する、模擬戦や決闘を行うために使用されている特殊な建物。
その1つの部屋に、距離を離し、杖を構えて対峙する2人の女性が居た。
1人は、学院の最上級生用の制服を身に纏い、炎のような紅の髪を靡かせる美しい少女。
キツい印象の顔立ちに傲慢な微笑みを浮かべるその少女は、腕の良い魔術師を輩出し続ける名門の家の出身で、飛び級を繰り返して最上級生となった才媛。
その実力は既に卒業に値すると認められながら、それを拒み学院に在籍し続けている、と学生たちの中ではもっぱらの噂であった。
しかし、その高い実力が災いしたということか、慢心し、傲慢に我儘に振る舞う彼女の周りには、誰も近寄らない。
1人は、様々な色が揺らめくオーロラのような不思議な色の髪を結わえ、この世のものではないと思えるほどの美貌とプロポーションを持つ女性。
瞳はまるで琥珀のような色合いで、その目に挑戦的な光を宿している。
彼女の人間離れしたその完璧な美貌は、神秘的な髪色と引き立てあい、彼女を見た人間へ人ならざるものへ遭遇してしまったかのような畏怖を植え付けていた。
彼女は学院に在籍する教師でも、ましては生徒でもない。
数日前に突然学院へ現われ、魔術を披露して教師の度肝を抜いた末に正式に学院へ招かれた客人であり、その証となるブローチはきちんと彼女の右胸で輝いている。
そして、教えを請おうとした教師が何度名を尋ねても、決して名乗ろうとしない素性不明の女性でもあった。
この2人がこうして戦うことになったのは、言葉にすれば単純なことだ。
教師の度肝を抜いたと噂の美貌の女性の実力を確かめるため、紅の少女が勝負を仕掛けた、というだけ。
紅の少女が美貌の女性に話しかけた時には、その場にいた全員が「どちらがキレた日には学院が消える」と顔を蒼白にしたのだが――美貌の女性が「丁度いいわ、是非やりましょう」とにこやかに応えてしまったことにより、この状況は成立している。
「あはっ、あなたにわたくしの本気の魔術を引き出せるかしら?」
自分の本気を引き出せるとは微塵も思っていない顔で――自らの勝利を確信した顔で、少女は笑う。
「本気でも何でも効かないに決まってるわ。それは、世界の理と同レベルの事実よ」
少女の嘲りをそう辛辣に一蹴して、美貌の女性は好戦的に口角を上げてみせた。
「な……」
「先手は譲るわ。早くやってみせなさい」
唖然とした呟きを漏らした紅の少女の前で、美貌の女は構えを解き、両手を広げて無防備な体勢を示す。
「っ、わたくしをバカにすると高くつくわよ!」
瞬時に激昂した少女の行動は早かった。
「【冥界の火よ、弾と化して穿て!】」
早口で唱えられた言霊に応じ、オレンジ色の火が複数生み出され、火そのものが弾丸のような姿に変わる。
そして、美貌の女目掛け、真っ直ぐに、愚直な程に真正面から向かってくる。
「は! 【神に在りし風よ、私に護りを】」
飛んでくる火の弾丸を鼻で笑った美貌の女が唱えた言葉に、紅の少女は目を見開いた。
言霊に反応し、緑と金が混じり合った膜が美貌の女を中心にドーム状に張り巡らされる。
火の弾丸はそのままドームへ突っ込んでいき、着弾。
その瞬間、弾丸は膜――風の結界に小さな波紋も浮かばせずに掻き消えた。
「はあ?」
ぽかん、と口を開いたまま固まってしまう紅の少女。
「ふむ。消耗は皆無ね。……少しは期待していたのだけれど、こんなものなのね」
落胆したように呟く女の声を、少女の耳はしっかりと拾っていた。
「ふざけてるの?」
少女がそう凄むと、女は「え?」と目を瞬かせて。
「ああ、ごめんなさい。本音が漏れてたわ」
白々しく、あからさまな棒読みでそんなことを言ってのけた。
「ふざけてるのね、わざとらしい演技なんてわたしはいらないわ!」
感情が一切籠っていない女の言葉に再度激昂し、怒鳴りつけた紅の少女。
突然の怒声に驚いたのか、美貌の女は怯えたように俯く。
それを見てニヤニヤと笑う彼女は、気付いただろうか。
顔を俯かせた美貌の女が、唇を釣り上げ、『かかった』とでも言いそうにニヤリと笑った事に。
「……わかったわ、本気出してあげる。【冥界にて燃え盛る業火よ!クーアティア=フレアの名の下、全てを貫く槍と化して我が敵を滅ぼし給え!】」
紅の少女の高い魔力の全てを注ぎ込み、名を用いての威力の底上げも行う。
少女に取っては、正真正銘、全力全開、全身全霊の一撃だった。
燃え盛り赤黒い色を覗かせる炎は、圧縮され槍へと変換され、少女が杖を振り下ろした瞬間、勢いよく飛び出した。
膜へと突き立った瞬間、波紋を発生させた炎の槍に、魔術の威力を高さを信用している紅髪の女は勝利を確信し、笑みを浮かべるが……。
「じゃあ、度肝を抜いてやりましょうか。【水よ、押し流せ】」
簡略化された詠唱に紅の少女が目を剥く暇もなく、魔術が発動する。
ごう、と水が唸った。風の結界を破ろうと奮闘していた炎の槍は瞬時に消火され、消え去る。
唖然とする紅の少女に大量の水が迫り、彼女がはっと杖を握り締めた瞬間、津波と化していた水は消え去った。
「結界ぐらい、ちゃんと張りなさい?」
私はあなたを殺したい訳ではないのだから、と告げる美貌の女は、あれほどの大魔術を放ったというのに極々平然としていて。
全身全霊で放った魔術をあっさりと消されてしまった紅の少女からすれば、それは恐ろしいものだった。
尻餅をついて体を震わせるその姿をどう思ったのか、美貌の女はニコリ、と笑った。
無邪気な子供のように、可愛らしく。
人間離れした美貌で、随分と人間らしい表情をするものだ、と紅の少女は思う。
「ふふ、貴女みたいなのも居るのね。まだ未熟だけれど、良い腕だわ。血に恵まれただけじゃない、ちゃんと努力して才能を伸ばしている」
嬉しそうに、楽しそうに。子供の成長を褒めるような表情で、女は微笑む。
それは、紅の少女――クーアティア・フレアという少女が、最も欲していたもので。
その言葉を聞いた瞬間、彼女の中で、何かが開いた。
「……あなた、は」
「私?」
首を傾げる美貌の女性にこくり、と頷きを返し、
「なんですか?」
そう、問いかけた。
「文明の発展を望み、絶つ者。世界を観測する者。これでも2000年は存在し続けてるわよ?」
軽い調子でそう言ってみせた彼女に、クーアティアの中で興味が膨れ上がる。
瞳をキラキラと輝かせ始めたクーアティアに、美貌の女性は「あら、興味津々ね」と笑った。
「す、すみません」
「いいえ、私に興味を持って貰えるのは嬉しい事だわ」
そう微笑んで、彼女はクーアティアの頭をふわりと撫でる。
「年齢については、歴史を遡ればわたし――オーロラ色の髪を持つ女は必ず出てくる。それを調べて貰えば信じてくれるかしら。ローラとかコハクとか、呼ばれていた名前は色々あるけれど、一応見た目は変えていないから、直ぐに判るはずよ。
世界の観測とかは仕事だし詳しくは企業秘密ね。まあ、私は企業や組織に属している訳ではないけれど。
ああ、あと、この世界に来たのは400年ぐらい前で、その前からずっと探し者をしているの」
「名前が複数あるということですか……?」
いきなり沢山の情報が入ってきてパンクしそうな頭で、クーアティアが気になったのはそこだった。
「ええ、そういうことね。いつもその時代で最初に会ったヒトにその時代の名前を付けて貰う事にしてるから、名前がたくさんあるのよ」
そう穏やかに言った彼女は、ああ、そうだ、と楽しそうに微笑んだ。
「今回は貴女にお願いしましょう」
「え」
「私の名前。貴女が付けて頂戴」
ふふ、どんな名前にしてくれるかしら、と微笑み無言の圧力を掛けてくる女性に、クーアティアは負けた。
(この人に似あう、名前……)
オーロラ色に煌めく髪、それともその美貌?
ぱっと思い浮かんだいくつかの名前はどれもしっくりこず、クーアティアは首を捻る。
クーアティアの答えを待つ琥珀の瞳が、楽しそうに瞬く。
その瞬間、クーアティアの中で記憶が閃いた。
「……では、アンリーア、アンリーア=ローヴァー、と」
そう告げたクーアティアに、彼女は意外そうに目を瞬かせた。
「どうしてその名前に?」
見透かすような琥珀の瞳を、真っすぐに見つめ返す。
「瞳が綺麗な琥珀色なので、そこから名前を付けたいな、と思って。琥珀色は私の知っている言語でアンバーというんです。でも、アンバーじゃ名前らしくないので、それっぽく整えてアンリーア、です」
アンバー、と言った瞬間、彼女は目を見開いた。……その反応が不可解で、「ダメでしょうか…?」とクーアティアは不安げに彼女の顔色を伺う。
「とんでもない。とても……とても良い名前ね。私はアンリーア=ローヴァーと名乗る事にするわ。
貴女ならアンリーアと呼び捨てにしても宜しくってよ?」
美貌の女――アンリーアはウインクしながら、悪戯っぽく微笑んだ。
「ふ、ふふっ。わかった、そうさせてもらうね、アンリーア。わたしはなんて呼んでくれるの?」
「クー、とかどうかしら。アティやアリアもありね」
「クー……」
アンリーアがそう言った時、ふっ、と、唐突にクーアティアの雰囲気が変わった。
それは、まだ少女と言って良い年齢であるクーアティアにはそぐわない…達観した老女のようで。
「…?」
アンリーアはその雰囲気に表面上は首を傾げ、内心で『ああ、彼女もそうなのかしら』と納得する。
「あ、ごめんなさい。そんな風に呼ばれた事が、無かったから。是非、それでお願い」
「判ったわ、クー。ふふふ」
「? どうしたの?アンリーア」
上機嫌に笑うアンリーアに、クーアティアは首を傾げる。
「あ、そうそう。わたくしの探し者の事なのだけれど」
それをスルーして、アンリーアはクーアティアにそう笑顔を向けた。
「家族よ。でも、唯の人では駄目。とある場所の知識があるヒトでないと。……まだ推測に近いけれど、貴女はなれる資格がありそうね」
「え…?」
「まだ、仮に近いし、引き返す事は出来るわ。――もっと私の懐に貴女が入り込めば、独占欲でヤンデレに変貌するけれど。その覚悟は、あるかしら」
ま、ヤンデレはヤンデレでも、無理心中なんて愚かな事はする気無いけどね。独占欲が異常なだけだし。そう、明るく言い放ち、コロコロと笑うアンリーア。
彼女を、呆然と見返す事しか、クーアティアは出来なかった。
■
あれから数日。
2人はアンリーアの発案で森に散策に来ていた。
突然クーアティアの元にアンリーアが顔を出したと思ったら「森へ行きましょう!」と連れ出されたので、実はクーアティアはここがどこなのか把握出来ていなかったりする。
それはそれとして。
「ヤンデレ、企業秘密、か」
クーアティアは、自身の前を歩く女――アンリーアの使っていた言葉を呟く。
(この世界にはそんな単語無かったはずなんだけど……)
考え込み、周囲に対する注意が疎かになり始めたクーアティア。
「……クー、どうしたの?」
アンリーアは首を後ろにぐるんと回し、彼女に心配そうに問いかけてきた。その光景は控えめに言ってホラーだ。
「…うっ、ううん、なんでもない」
「そう?」
「うん。大丈夫だから、首だけ真後ろに回すのは止めてくれない?ホラー映画みたいでビックリしちゃう」
できるだけ軽い調子でクーアティアが言うと、アンリーアは素直に頷いて首を戻した。
こういう時、アンリーアが人外なのだと実感するな、とクーアティアは内心で遠い目になった。
「そういえば、知ってる? この樹海――もとい、森は、周りの植物の火への耐性は凄いのに、魔物たちは火が弱点なのよ」
「へえ、そうなんだ……。いや、待って、今樹海って言った?」
慌てて聞き返すクーアティアに、アンリーアはそうよ、と頷いた。
「樹海レベルでデッカイ森よ、ここ」
「それ、迷わないの……?」
「迷うわね」
「即答!?」
「まあ、森に掛かっている魔術のせいだし、私と一緒に居れば迷ったりする心配は無いわよ」
そう言い切ったアンリーアの笑顔が、なんだか少し白々しく感じて、クーアティアは首を傾げた。
「……嘘言ったりは、してないよね?」
「ええ、もちろん。(……まあ、嘘は言ってないわよね。全部言った訳でも無いけど)」
……その時。クーアティアは、アンリーアが真っすぐに否定してくれた安堵で、アンリーアが小さく呟いた後半の言葉を聞き逃していたのだが。
聞いていたからと言っても、樹海の真実――掛けられている迷いの魔術がアンリーアの手によるものだ、というだけのそれが明かされるだけであるので。
彼女がその言葉を聞き逃したのは、むしろ良い事だったのかもしれない。
「クーは可愛いわね」
唐突に呟いて、アンリーアはクーアティアの頭を子供にするようにくしゃくしゃと撫でる。
「え、え? ちょっ、髪が乱れ…」
唐突なそれに、そしてアンリーアが浮かべる柔らかな微笑みにも戸惑いながら、クーアティアは困惑の声をあげる。
「あら、御免なさい。……うん、これでよし」
アンリーアはニッコリと笑って乱れた髪をあっという間に整え、辺りを見回し…。
一点を見詰めて、固まった。
「っ! なんでここにアレが…!」
「アンリーア?」
驚愕の表情を浮かべて固まったアンリーアを心配し、クーアティアが呼びかけると。
「クー、逃げるわよ。アレはクーを護りながらはキツい」
はっと目を瞬かせたアンリーアは真剣な表情でそう囁き、クーアティアをぎゅっと抱き寄せた。
「転移するから、しっかり捕まっててね。【彼方への風を、此処に――】」
「転移!?っていうか、何故に風?空間じゃないの?」
「今はそれどころじゃないから、後でね」
「あ、はい。ごめんなさい」
「後でなら答えるから、そんなに落ち込まないで。【――善き風よ、吹け】」
キラン、と光を発し、2人の姿が消えて。
■
移動した先は、黒かった。
真っ暗闇の中で、自分とアンリーアだけは明瞭に見える。
「ここ、どこ……?」
「私のセーフハウスね。アレでも絶対に見つけられない、全世界で一番安全な場所」
「せっ!? わ、わたしがここに居てもよろしいので!?」
動揺のあまり口調がおかしくなったクーアティアにアンリーアはクスクスと笑う。
「もちろん。あ、ちょっとご免なさいね」
アンリーアは指先でクーアティアの額を突いた。
「うう、くらくらするぅー」
軽く触られた瞬間、クーアティアに猛烈な眩暈が襲い、思わず目を閉じて蹲る。
「うん、これでよし。大丈夫になったら目を開けてみて」
しばらくして、眩暈が治まってきたクーアティアが、そうっと瞼を開いてみると……
「これって……!」
クーアティア=フレアの生きる世界にはあるはずの無い、クーアティアがもう目にする事は叶わないと諦めていた物が、乱雑に、大量に置かれていた。
「わぁ、懐かしい……」
思わず呟くと、アンリーアはやっぱり、と微笑んで。
「貴女、日本人なのね。転生者かしら」
そう、クーアティアにとって爆弾にも等しいことをさらりと言った。
「いま、日本って言った!?」
「ええ。暫く…500年ぐらいだったかしら。気に入って地球に滞在していた時期があるわ。……ここにあるのは、その時に収集したものなのよ」
「ごひゃく……」
しばらくのスケールが違う……と呻くクーアティアに、アンリーアはくすりと笑う。
「まあ、あっちの暦で言う西暦2000年から2050年ぐらいまでをぶらついていただけなのだけどね」
「? 500年滞在してたんじゃ?」
計算が合わないよ、と首を捻るクーアティアに、アンリーアはあれ、と呟いた。
「言ってなかったかしら。私は未来から過去へ、過去から未来へ、時間の行き来も出来るのよ?もちろん、世界間の移動もね」
「っ、本当!?」
「え、ええ」
クーアティアは目を見開き、アンリーアに詰め寄った。アンリーアはクーアティアの予想以上の反応に戸惑う。
「わたしが地球に帰る事は?」
「嫌よ」
即答だった。
「どうしても日本に行きたいの! お願いします!」
クーアティアは必死にアンリーアを拝むが、彼女はつん、と不機嫌そうに顔を背けて。
「嫌よ。なんでせっかく出来そうな家族を手放し他人にならないといけないの」
待望の転生者をわざわざ放流するような感性はしてないわ、と言いながら、アンリーアはクーアティアに抱き着く。
それを素直に受け止めながら、クーアティアはどうして?と首を傾げた。
「日本に行っても一緒に居ればいいんじゃないの?」
「クー……私の眷属の血を宿すフレア家の令嬢ならともかく、唯の日本人は私に近付けない。一緒に居るにはクーのまま転移する必要があるの」
その言葉に、クーアティアはハッとした。……アンリーアは、クーアティアを前世の体に戻して、日本に「帰してくれる」つもりだったのだ。
「それでも行きたいと言うのなら……家族になってくれるのなら、いいわよ」
拗ねたような彼女の声が耳元から聞こえてきた時には、もうクーアティアの心は決まっていた。
「わたしはクーアティアとして日本に行く。アンリーアと、大好きな家族と一緒に居る」
そう即答したクーアティアに、アンリーアはきょとん、と目を瞬かせて。
「ふふ……後悔しても、もう逃がさないからね?」
嬉しそうに、妖艶に微笑んだ。
「汝は、力が欲しいか?故郷へ帰る力が」
クーアティアから一歩離れたアンリーアが、威厳のある雰囲気でそう問いかける。
「……? ……ああ! 憧れだよね、こういうのって」
クーアティアは突然の問いかけにしばらく怪訝そうな顔をしていたが、アンリーアの意図に思い当たって嬉しそうな表情を浮かべた。
「欲しいか?」
念を押すようにアンリーアが重ねて問いかける。
「はい、とても」
クーアティアもキリッと表情を引き締め、答える。
「そうか。ならば……転生者よ、契約せよ。我と、姉妹となる契約を。さすれば、我は汝へ力を貸し与えよう。」
「是非、喜んで」
「「あははっ」」
そこで雰囲気を崩し、アンリーアはクーアティアと共に声を上げて笑う。
「私、アンリーアはクーアティアの姉に」
「わたし、クーアティアはアンリーアの妹に」
「「私達は、姉妹の契約を結びます」」
小指を絡め合い、2人は宣言する。
「「ゆーびきーりせーんまーん、はりせんぼーん、のーます。指切った!」」
そう2人が言い切った、その瞬間。
繋げた手から、光が迸った。
「っ、なに……!?」
「大丈夫、契約が結ばれただけよ」
驚くクーアティアを落ち着かせるように、アンリーアは声を掛ける。
しばらくして、落ち着かない様子だったクーアティアも落ち着き――
「あ、そうだ。わたしはあなたをなんて呼べば良いの?」
アンリーア、じゃちょっと変だよね?と言う妹に、アンリーアは嬉しそうに微笑んだ。
「リア姉様でお願いするわ。貴女はクーでいいかしら?」
「うん、いいと思う。……リ、リア姉様」
にこにこと嬉しそうな「姉」の顔に、クーの中で気恥ずかしさが勝った。
「………な、なんか恥ずかしいし、リア姉さんじゃダメ?」
「ちょっと残念だけど、良いわよ。……さ、呼び方も決まった所で日本に行きましょう」
「はい、リア姉さん」
「ふふ、妹に愛称を呼ばれるって、良いものね」
笑い合う2人は光に包まれ、転移していった。
END
お読みいただき、ありがとうございました。
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