閑話1
ずっと独りきりでいた俺の前に、突然現れたあいつは、リンと名乗った。
俺と同じ黒髪黒目を持っているが、希望に満ち溢れた瞳は、俺と似て非なるものだった。
白が至高とされるこの国で、黒いものは人間に限らず忌み嫌われるものだ。そんな負の象徴ともいえる色彩を、俺は生まれながらにして持っていた。
生まれてすぐに捨てられた俺は、どこに行っても受け入れられなかった。
忌み子
呪われた子
悪魔の子
そんな呼ばれ方ばかりされ、受け入れられたことなど一度もなかった。
一人くらい、自分と同じ色彩の人間がいるかもしれない。そんな希望を持ったこともあったが、そんな希望はすぐに砕け散った。
謂れのないことを言われ、存在を否定され続け、それでも生きてこられたのは、自分の魔力がほかの人間よりも強大だったからだ。
この世界に絶望し、10歳になるころには魔力で森の奥深くに城をつくり、結界で覆い、そこから一歩も出ることなく過ごしている。
一人は楽だ。
誰に何を言われることもない。傷つけられることも、恐れられることもない。
魔力があれば食べることにも困らない。本を出せば知識を蓄えることもできる。
俺の人生はこれでいい。
ずっとそう思っていた。
しかし、リンとの出会いは俺の生活に大きな変化をもたらした。
リンは俺を恐れない。そのことを聞いたときも、同じ色彩を持っているからであろうか、質問そのものに疑問を抱いているようだった。
好きなことがあったほうが楽しい。
好きなものがあれば自然と笑える。
そんなこと、考えもしなかった。
この城で一人きりの生活を始めてからは、感情は不必要なものでしかなかった。
あってもなくても変わらないものなら、なくてもいい。そう思っていた。
「人生楽しんでなんぼですよ。好きなことして生きましょう!」
リンは満面の笑みでそう言った。その笑顔に思わず、そうだな、と返してしまった。
ずっと存在を否定され、暗闇の中で生きてきた俺が、初めて光を感じだのは、まさにこの時だっただろう。
その日もリンは途中で意識が薄れて、ベッドに横になってすぐに光の中に消えていった。
次に会うのは、また明日だ。
「明日を楽しみにする日が、来るなんてな」
広い部屋でそう呟くと、リンが消えたベッドに横たわる。いつもは冷たいベッドに、ほんの少し温もりが残っていた。それがひどく心地よい。
さて、明日は何の話をしようか。




