始めにお読みください
勇者が仲間と魔王を倒しに行く、そんな話の最初の世界観をざっくり説明しているのである!
勇者が自らを語るのは、いささか美学に反する気がする。勇者とは魔王を倒し、世界に平和をもたらす英雄のことであり、だらだらと自分語りをするのは勇者らしくないし適当ではない。
だが仕方ない。きっとこれから自分で何かを語る機会も、ゆっくりと説明をしている余裕もこの先はなくなるはずなのだ。これが何を予感しているのか、はたまた、勇者特有の勘なのかはわからないが、ここで説明をいくつかしておかなければならないと強く思ったのである。きっと四方八方から放たれる荒唐無稽な言動にこれから対処しなければならないはずなのだ。話が伸びれば伸びるほど、余裕がなくなり、説明が出来なくなるに違いない。
そしてこれは予感ではなく、どちらかと言うと予言に近い。
今から300年ほど前になる。
初代にあたる勇者アレスは魔王を激戦の末に封印した。封印するのがやっとだったと伝えられているが、それほどまでに魔王の力は強大で凄まじい存在だったそうだ。
勇者が魔王を封印すると、世界には平和が訪れた。人々は喜び、歓喜し、数ヵ月に及ぶ祭が行われが皆が喜ぶ中、主役であるはずの勇者アレスは参加することなく、再び復活を果たす魔王に備えるべくすでに動き始めていたのだった。
勇者アレスはまず数人の有志を集め、山奥に小さな村を作った。そこで有志らと共に生活を始め、優秀な者だけの村で勇者アレスは自らの血を受け継ぐ子孫を残し続けることにしたのだ。
始めは数人のから始まった村も数百年経てば、立派な村になった。一番近くの町から歩いて行くのも困難な遠いところに村を作ったのは外界からの移民を退け、自らの血が薄まるのを防ぐのと同時に、魔王残党軍から身を隠すことにも繋がった。
そして長い年月の間、技を磨き、守り育て、来るべき時に備え続けた。
勇者アレスは死ぬ間際に預言者にこう告げた。
「魔王の封印が解かれるのはこれから300年先になる。300年後の魔王が復活するとき、私が魔王を封印した歳になる男こそ、私の生まれ変りであり、真の勇者である」
そう伝えた直後、勇者アレスは多くの子らに見守られながら、その生涯を終えたのだった。
そして数百年の時が過ぎ、なんやかんやで逆算してちょうど生まれたのが…
私、勇者である。
その年に生まれたのが私一人だったこともあり、迷うことなく一発合格で見事に真の勇者に当選を果たした次第ではあるのだが、全くもって迷惑な話だった。
生まれたときから勇者様、勇者様と慕われ、稽古やら訓練やら学問やらを目の色が変わった大人に囲まれながらずーっと過ごした。同じくらいの歳の子供が遊んでいるなか、私だけ特別な扱いを受けたのだから本当に迷惑な話である。
きっと、私の性格は歪んでいるに違いない。こんなひねくれものに育ったのも、回りから期待され、誉められ、崇め奉られ、他者から完全に引き離された結果だと感じている。
だが性格こそ歪んでしまったが苦労の甲斐があり、はたまた本当に勇者アレスの生まれ変りなのかはわからないが、あの村の名だたるの強者と比べてもぶっちぎりで強かった。長老曰く、歴代最強だ、とかなんとか言っていたのだが、実はフガフガ言っていたので正直聞き取れてはいなかった。
全てをマスターした私は魔王討伐に旅立ちそんなわけなのだが、実を言えばまだ魔王復活にはまで早い。
第32回魔王討伐会議in長老の家、で、別に魔王の復活待たなくても、先制攻撃仕掛ければいいんじゃないか?という意見でまとまったこともあり、私は魔王の復活の予定を待たずに一人出発したいた。
これではただの旅行と変わらず、道中は今のところ平和そのものであり、村から一番近い町をさっき出たところではあるが、お土産やさんを見てきたくらいだった。
勇者アレスは魔物だらけの道中を魔王のいる城まで戦い抜いたそうだが、現状で魔物らしい魔物は今のところ現れず、村から出て一番の強敵は酒場で絡んできた酒くさい老人だけだった。
まさか勇者アレスも300年後の自分の子孫達が魔王復活前に先制攻撃を考え付くとは思ってもいなかっただろう。やっていることは正しいかもしれないが、勇者の子孫は随分卑怯になったものだと私はつくづく思うのであった。