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私、才能なくてもトップを目指して頑張ります。  作者: あんこミカン
season1 Top争奪編:始まり
9/19

第9歩 初めての大会2

 土曜日の夜、ヒナミは誰よりもはやく布団へ入った。


「おいヒナミ!なんで今日は早寝してんだ⁉︎腹でも痛いのか⁉︎」


「違うよ。明日大会に出るからちゃんと寝ようとしてるだけ。」


「大会って、区のドームのやつか?やめとけやめとけ。あれ、出るのは新人アイドルばっかだけど、どいつもこいつもレベルが高いって話だぞ。恥かくぞ。」


「大丈夫だよ、練習いっぱいしたし。ていうか、睡眠妨害しないで。」


そう言うとヒナミは、何食わぬ顔で布団を被った。


「こいつぅ…ああもうわかったよ!知らないからな!全く。あと!いつも妨害してんのはお前だからな!」


ナギサは電気を消し、ベットの中に入った。




日曜日、ついに大会本番がやってきた。ドームには200人ほどの新人アイドルが集まっていた。同じ灯明院(とうみょういん)学園の一年生もいれば、隣校の[林清路(りんせいじ)桜蘭(おうらん)学園]の生徒や、全く知らない他校の生徒も沢山いた。


「うわー。凄い人だね、ヒナミちゃん。去年はこんなに人いなかったのに。」


「楓先輩、去年も来たんですか?」


「うん、友達と一緒とね。でも、この大会は新入生しか出場できないから、今年はヒナミちゃんの応援役として頑張るよ。」


ヒナミと楓が長い出場審査列に並んでいた。すると、灯明院の制服を着たアイドルがこちらに近づいてきた。制服の色を見ると二年生だ。


「あら、牧菜(まきな)さん、こんなところで会うなんて奇遇ね。まだこんなことを続けていたの?」


ヒナミは、その声がとても冷たく、少し怖く感じた。そして楓を見ると、今までに見たことの無いような恐い顔をしていた。普段見る笑顔で優しい顔の面影はなく、初めて見たときの様な乾いた目だった。


「ヒナミちゃん、後は学生証を見せるだけだから、一人で出来るわね」


楓はその生徒を睨みながら、ヒナミを見ることなく言った。


「は、はい。」


ヒナミがそう言うと、楓はその生徒とともにどこかへ行ってしまった。





「次、光里ヒナミさん、どうぞ。」


結局、楓は戻ってくることなく、ヒナミのライブへと順番が回ってしまった。


(楓先輩、どこ行っちゃたんだろう…。)


ヒナミがステージへ上がると、審査員や他のアイドルがこっちを見ていた。その人数は、学園のテストライブの比ではなかった。


「あ、あああ、あの、光里ヒナミです。」

(ダメだ…。口が思うように動かない…。)


頭を下げながら思った。自分がコミュ障なのはわかっていたが、ここまであがり症なんて…。


「では、お願いします。」


「…はい。」


ヒナミの頭の中は真っ白になった。曲が流れ始めたのに何も考えられない…。緊張と混乱が入り混じる中、微かに働く頭の中で、何か解決策はないかと考えた。


(誰か、誰か助けて…。)


「ヒナミちゃん!」


大勢のアイドルの中から一人の声が聞こえた。


(楓先輩…!)


その時、ヒナミの意識が戻った。すると、ヒナミは自分の身体が勝手に動いていることに気づいた。


(私…踊ってる…。いける…!)





その後の事はヒナミもよく覚えてはいなかった。ただ、いつもより体が動き、声が通っている様な気がした。


「はぁ…はぁ…、ありがとうございました。」


ヒナミは息を切らしていたが、最初の様な緊張は感じなかった。




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