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私、才能なくてもトップを目指して頑張ります。  作者: あんこミカン
season1 Top争奪編:始まり
3/19

第3歩 響庭イブキ

 ヒナミは恥ずかしさの中、ただ棒立ちしていると、前の方から25歳ほどの女性が歩いてきた。


「やあやあ、君がヒナミちゃんだね。後ろの空いてる席に適当に座って。」


ヒナミは道中の目と合わせないよう、そそくさと後ろの席に座った。


「ねえねえ、あんたさっき遅刻した人でしょ。」


ヒナミの隣に座っていた少女がヒソヒソと話しかけてきた。まつ毛が長く、髪もサラサラ、綺麗な顔で、絡み易そうな不思議な雰囲気をだしていた。


「そうですけど…。」


「入学式そうそう遅刻なんて、けっこうやるじゃん。私、響庭(あいば)イブキ。よろしく。」


イブキが手をだしてきたのを見て、急いで手を差し出した。


「光里ヒナミです。よ、よろしく…。」


ヒナミが挨拶を終えるのを見て、女性が話し始めた。


「私は氷堂(ひょうどう)ミサキ。クラス分けが終わったら、鳥組の担任になるよ。」


「クラス分け…?」


「そうクラス分け。この後、実力を測るテストライブをやるよ。曲とかは自由だし、気軽にやってねー。10時から適当に呼んでくから、ここで待ってて。」


そう言うと氷堂は教室から出ていき、クラスからは不安の声が漏れた。ヒナミもそのうちの一人だった。




氷堂がダンスホールに向かい歩いていると、待っていたかのようにアリサが現れた。


「氷堂先生、今年はどうでしたか?」


「ああ〜、面白い子がいたよ。響庭イブキ、響庭カノンの妹さんが入ってきたよ。」


「響庭カノン…。先生は大丈夫ですか…?」


氷堂は渋い顔をした。


「大丈夫だよ。いちいちそんな事気にしないさ。それより、アリサも抜かされないように気をつけなよ。あの子も〈星々の子〉かもしれないからね。」


そう言うと、氷堂はまたダンスホールに向かい歩き出した。




「イブキちゃん、ライブとか得意?」


次々と生徒が呼ばれる中、ヒナミは緊張を紛らわすためイブキに話しかけていた。


「別に、ここで得意とか言ったら嫌な奴でしょ。」


「…それもそうだね。わ、私、ダンスはダメダメだけど、歌は小学校の時、上手いって言われ…」


「次、光里ヒナミさん、どうぞ。」


なんとか話しを長引かせようとしていると、放送でヒナミが第2ダンスホールへ呼ばれた。


「呼ばれたじゃん。頑張ってね。」


「うん…。」


隣の教室にあったダンスホールには氷堂を含む審査をする先生三人と、見物しにきた上級生が複数人いた。


「では、自己紹介とかライブをお願いします。」


「えっと…はい。光里ヒナミ、12歳です。好きなのは歌う事です。では、踊ります。」


ヒナミがそういった瞬間、スピーカーから大音量の音楽が流れ出した。最初は驚き、反応できなかったが、すぐに気持ちを整えた。歌はキーを外さない程度で、ダンスはキレがあまり感じられなかった。しかし、おぼつかないステップの中にも、懸命に踊っているのがわかった。


音楽が終わりダンスを止めると、ヒナミは大きく礼をした。


「ありがとう。この後また発表があるから、カフェテリアで待っていて下さい。」


「は…はい。」


ヒナミがダンスホールから出て行くと、審査員の一人だった[南木(なみき)ユズ]が困った顔をして口を開けた。


「小野田先生、今の子、どう思います…?」


「ああ、ダンスは言うまでもない。歌も好きだと言っていたが、この学園では下の中だ。今見たところだと学園でもドベだろう。」


「ええ、でも、私たちが成長させないと。私たちが…。」


苦言を放つ[小野田(おのだ)(とおる)]に対し、氷堂は強く決意を固めた。そして、見物していた生徒の中から、楓がじっと先生を見つめていた。


「可愛そう…やっぱりヒナミちゃんには、私がいないと。」

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