第15歩 響庭家のパーティーへ1
日曜日、ヒナミはイブキが大きな荷物を持って校内ロビーに座っているのを見かけた。
「どうしたの?その荷物。山籠り?」
「ちーがーう。今日うちでパーティーすんの。めんどくさいけど参加しないといけないんだよね。」
「パーティー?」
「説明しましょう!」
リコが現れた。
「響庭家は世界的にリッチなところなんですわ。」
「なにそのフワッとした設定。」
「そうだ、ヒナミとリコも来る?私と同年代の人いなくて、つまんないんだよね。」
その時!ヒナミの頭に電気が通った!
(そういえば、響庭カノンさんはイブキちゃんのお姉さん。もしかしたら会えるんじゃ…。)
(…とヒナミさんは思ってますわね…。ヒナミさんは舐めてますわ…。上流階級の恐ろしさを…。わたくしがフォローしないと。)
「行く!」
「行きますわ!」
ヒナミとリコはこうして響庭家のパーティーへと向かう事になった。
「準備できた?じゃあ行くよ。」
ヒナミとリコが正装の準備を終えると、学園前に長さ20メートルほどのリムジンがやってきた。
「まじかー。」
「これ曲がれますの?」
「ついたよ。」
慣れない、いや、日本人のほとんどが乗った事のないリムジンを降りると、そこには東京ドームもビックリの巨大な豪邸が待ち構えていた。
「まじかー。」
「まさか…こんなに大きな豪邸とは、驚きですわ。」
警備員が300人ほどいる入場門を抜けると、そこには一般社会とは異質の空間が広がっていた。目に入る物が全て輝き、客達は皆フォアグラを食べ、豪華な服を着たトイプードルが踏ん反りかえっていた。
「見てみてリコちゃん。あの犬偉そう。」
「ええ、多分あのワンちゃんの服だけで、わたくし達の服と家が買えますわ…。」
そんなくだらない話をしていると、会場の奥から一人の大男が寄ってきた。ガッシリした体格、蓄えられたヒゲ、綺麗なスーツ。龍◯如くに出てきそうなキャラだ。
「なんだイブキ、きたのか。」
「…はい。お父様。」
(お父様!なにそれ、どうやったらあんなゴリラから美少女が生まれんの⁉︎)
(ヒナミさん、そんな事思っては失礼ですわ。きっとお母さん似なのでしょう。」
(いやいや、じゃあなんでお母さんはこんなゴリラと結婚すんの⁉︎」
(そんなの…玉の輿に決まっているでしょう!ていうか、ゴリラゴリラ言ってると、ゴリラファンにおこられますわよ!)
以上、ヒナミとリコの脳内会話でした。
「イブキ、最近はどうだ。」
「はい、お姉様と同じく、Top3になりました。」
「そうか。響庭家の名に恥じる結果は残すなよ。お前は[カノン]とは違うのだからな。」
「……はい。」
「…挨拶回りはしていきなさい。」
そう言うと、イブキの父はまた会場の奥へと戻っていった。
「うわーやな感じ。」
「シー、聞こえますわよ。あの人は響庭家の党首、[響庭政三郎]ですわよ。一説によればユニ◯ロの社長の2000倍儲けてるとか。」
「それ、多分うそだよ。でもまさか、イブキちゃん本当に挨拶回りに行っちゃうなんて…。私は…そうだ!カノンさんに会いにきたんだ。ちょっと、探してくる!」
「ちょっと、ヒナミさん!」
そういうと、ヒナミは一人リコを置いていき、コミュ障という設定も忘れて飛び出してしまった。
「……ヒナミさん、地獄を味わいますわ…。」
その頃イブキは、富豪なおじさんおばさんに挨拶回りをしていた。
「おお、これは響庭家のお嬢さん、大きくなったね。」
「はい、最後に会ったのは3ヶ月前ですけど。」
「これからも我らガツガツドリンクのスポンサー、これからもヨロシクお願いします。」
「はい…、お父様にお伝えしておきます。」
イブキがbotの様に、様々な富豪と同じ事を繰り返し話していた。
「……あのすみません。響庭カノンさん…、どこにいるかわかりませんか。」
「おお!響庭カノンだって?馬鹿な事を言うんじゃない(笑)。よく見たら君、一般庶民かい?ハハッ、大人しくキャビアでも食ってなさい。」
「………。」
これで3回目、ヒナミは地獄を味わっていた。
「まさか金持ちがこんなに嫌な人達ばっかだったなんて…。ていうかこんなの塩っぱくて食べれたもんじゃないじゃん。回るお寿司のいくらの方がいいもん。」
ブツブツ文句を言いながらキャビアを食べていると、一人の執事の様な人がカードを配ってきた。
「響庭家名物、ビンゴ大会です。どうぞ参加してください。」
「…ビンゴかぁ…。」