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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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人質 

気分が悪くなる描写があります。

「動くなよ。魔法も使うな。無詠唱だろうと、魔力を動かした時点でこいつの命はない」


 相手のリーダーは人質の体を片腕で持ち上げ、剣を押し当てていた。


 氷漬けした人達と憲兵として盗賊を留置場まで案内していった者から、相手の方が情報をもっていて有利だった。

 護衛任務をしていたという情報は特に。

 その依頼主の息子という知り合いを人質にして動きを封じるというのは、私達にとってとても有効だった。



「その子には手を出さないで」


 炎に照らされているところまで歩み出る。

 リュークもだ。

 戦意は消滅していない。

 隙をうかがう。


「お前と小龍次第だな」

「……」


 杖を地面に置き、遠くへ転がす。

「上物じゃねえか」と相手の仲間が拾い、嫌悪感を抱かせる笑いをした。

 仲間が嬉しそうにしている間、リーダーの男はまだあるだろうと目線を私によこす。

 私は服に忍ばせていた短剣も同様に転がすこととなった。



「貴方達は王都に行く途中で出会った盗賊であったりする?」

「へえ、どうしてそう思う?」

「護衛依頼を受けていたことを知っていて、王都に来て一、二時間で計画的にリュークと私を襲ってきた。それに仲間の憲兵を使って仲間を救い、その子を捕まえたのでしょう?」


 留置場に連れていかれたと思っていた盗賊は、リュークから最初に成長させた木に絡まっていると報告が来ている。

 そのことも伝えると「その通りだ」と素直に認めた。


 男から話を聞くに、奴隷狩りする中に私達が護衛していた集団が対象になったようだった。

 仲間二人は置いての撤退となったが、殺さずに王都内の留置場に連れて行くとなれば助けることが出来る。

 私達を追い抜かして先に王都に到着する。

 そして仲間の憲兵が案内すると見せかけて人気のないところへ連れ、再び襲った。


「このガキを救うために、あの親は今頃大金をかき集めているだろうなあ。まあ金を持ってきた後は用済みだから、殺すんだが。子供の前でいたぶってみっとねえ姿をさらしてなあ!」

「金さえ出せば殺さないって言ってたじゃねーか! お父さんにも俺を人質にしやがって! この嘘つきやろうっ」

「俺らみたいなのは、普通に嘘なんて使うんだよ。バカはすぐに嘘を信じる」


 怒り、暴れる人質の子を殴られていても、私とリュークは動けない。

 魔法使いが私とリュークのことを油断なく見ている。



「俺らのメンツを汚しやがったんだ。あの親には相当な報いだな」

「ざまあみろだ!」

「最後には俺が殺るから、楽しみにしておけよ? 愉快にさせる声を出させてやる」

「お前、生かせてもらったのに、酷え奴だなあ」

「だからこそだよ。そのお礼に子の前でいい最後をみせてやる」

「おい、話してねえでそいつらを縛っておけ。それと寝ている奴らを無理やりにでも起こせ」


 私は腕を、リュークは口と両手足を縄で縛られる。

 その際、体を触られた。

 武器を持っていないかの確認だが、その目的以外の為に触ろうとするので「触らないで」と足を思いっきり踏みつける。

「何しやがるっ」と憤る男だが、「挑発するな」と魔法使いに止められていた。


「バカかテメーら。縄は植物でできてんだ。枷もってこい」

「でもよガムザ。もう枷は余ってねえぜ」

「ああん? そしたら今つけてる奴らのをこいつにつけろ。魔法封じの枷だからな。子龍には口輪だ」

「へーへー。人遣い荒いぜ」


 だるそうに地下へと行ったり、殴ったりして起こしているのを見る。

 まだガムザと魔法使いに見られているため、隙はない。

 ないが、それなら作ればいい。




「ねえ、貴方達はいつかは報いがくるよ」

「ハッ。それは俺らが悪いことをしているからってか?」

「それもあるけれど、人を侮辱しているから。だからより色々な人から恨まれるよ」


 自分達の仲間は大切にしているようだが、それ以外の人には冷たいを通り越している。


「余計なお世話だな。そんなこと分かっているさ。だがな、俺らのバックには貴族がいる。この国の貴族は腐っているからな。そいつらが高い金摘んで奴隷を望んでいるから、こうして俺らはやっていけてるんだ」

「奴隷をよく思わない貴族もいるよ」

「公爵のワットスキバーとかか? なら、そいつに近づかなければいい。今は王都にいるが、いつもは援助してくれる貴族の領地にいるからな。好き勝手にやれる。

 弱者をいたぶるのは楽しいもんなんだぜ? なんたって、自分が強者として君臨できる」


 ガムザは仲間に預けていた人質の目の前に剣を突きつけた。

 人質からは「ひっ」と引きつった声。


「その子に当たるのは逆恨みだよ」

「そうだ。俺らは護衛をしていた冒険者に仲間はやられた。依頼主やその子どもじゃあない。だが逆恨みでも、幾分かはスッキリするもんだぜ? それにお前や小龍へのあてつけになる」


 剣を人質の目の前でぐるぐるする。

 怯える様を楽しんでいるようで、歪に口角があがっている。

 そして人質の目の横に、一筋の赤い線が出来た。


「ガムザ、やめておけ。こいつ、魔力が膨れ上がってる。それに小龍がウーウーうるさい」

「どうせ何もできやしないんだからいいだろ? 俺だって楽しみたいんだ」

「おい、本当にやめろ。お前だって魔力感じられるだろう?」

「面白いぐらいに魔力が膨れ上がってんな。この魔力量、そしてこの容姿。絶対に高値で売れる」

「ガムザッ」

「分かった分かった。じゃあ枷つければいいだろ? おいっ! 枷持ってくんの遅えぞ!」


 慌ててその場にいた者が、枷を取りに行った者を呼びに行く。

 私は冷めた目でそれを眺めた。


「どうせお前は人っ子一人、殺せねえんだろ? 大人びているが、こういうところは見た目通りガキだな」

「……違う」

「違わねえだろ。証拠に仲間は誰も死んでねえ」

「本当だよ。だって私、もう人を殺したことがある」


 こいつは私を殺し、殺そうとした奴らと同じ存在だ。

 私の中で認識が変わり、ガムザを見る。

 隙は出来ていた。

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