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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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リュークは帰らない 後編 

 護衛の任務人の息子の匂いが芋虫男からする。

 そのことから連想出来ることは。


「あの男の子が捕まってるって言いたいの?」

「ガウ!」


 リュークは助けに行こうよと瞳から伝えてくる。

 純粋無垢な瞳だ。

 憲兵や騎士団に任せればいいのでは、という言葉が喉でつっかかって出なくなる。



 あの男の子とは知らぬ仲ではないので、助けに行きたいという気持ちは分かる。

 だが、それは危険なことだ。

 返答出来ないでいると、足元でもぞもぞ動いて逃げようとする芋虫男が視界に入った。 


 善良そうな顔をした男だ。

 とても奴隷狩りをするような人には見えない。

 今まで見てきた悪人としては珍しいと思いながらしげしげと見る。

 すると、この男の顔をどこかで見たことがある気がした。

 んー? と唸っていると、リュークも見たことがあるらしくこの人だとイメージを伝える。


「あっ、憲兵の人!」


 男が目を見開き「もがー!」と喋れないが否定する。

 慌てていることからそれは嘘だ。



「ガウー、ガウガ、ガーウ」

「憲兵が信用出来ないから、私達で助けに行こう? でも、憲兵の人達皆、奴隷狩りの仲間ではないよ」

「ガウッ! ガウガウーガッ!」

「リュークだけで行くのは駄目だよ! 冷静になって!」


 自棄になって、アジトへ向かおうとするリュークを引っ張って止める。


「まず場所は分かっているのっ」

「ガーウ!」

「ああっ。そういえば契約の繋がりがあるんだった!」


 身体強化をしてなお、リュークに力負けして私が引きずられる形になる。


 いつもは小さい子供並みの知能で寝て遊んで食べるぐらいなのに、こういうときには力と龍としての知能を使う。

 普段からそうして欲しい、いやそれもそれでずる賢くなってしまいそうだ。

 とにもかくにも力負けしている以上、私が折れて助けに行くということになってしまった。




 芋虫男は仲間から見つけられないよう隠した後、足を重くしながらアジト付近まで来た。

 見張りはいない。

 だが建物内、特に地下には多く人がいた。

 狭い空間場所で何十人もの人が固まっているので、奴隷狩りで捕まってしまった人達だと思われる。


 追いかけられてから時間が経っている。

 氷漬けした男達は発見されたのか、叫び声を聞いて駆けつけた男の仲間は多くがアジトへ戻ってきていた。

 そして魔力探知によって、相手の中には魔法使いが一人いることが分かった。

 相手の戦力を魔力探知で大雑把に確認し、私は最後にリュークに問いかける。


「本当に行くの?」

「ガウッ」

「……そう。もし手に負えない相手がいたら即刻逃げるんだよ。リュークの他人のことを思いやれるのは良いところだけど、まずは自分のことを優先にして」

「…………ゥ」


 間が気になるがよしとする。


 *



「ぐ、ぅ……」

「痛え……」

「ごめんね」


 建物に入って直ぐにいた人達を、杖でもって昏睡させた。

 言葉で謝っているが、口先だけだ。

 急所をついたことで痛そうにしていても、可哀想だとは思えない。

 捕まえた人達を売ったお金で何を買おうかと、下卑た笑いをしていて鼻についたのだ。

 だから思わず私一人で叩き潰してしまった。


 あんなに止めていたのにやる気だね、とリュークに言われる。

 勝手な行動をしないようにと言い聞かせていた私であるので、猛烈に反省することとなった。



 建物内は埃っぽかった。

 家具などは必要最低限。

 奴隷狩りという取り締まりが厳しい犯罪をしているので、拠点を転々としているのだろう。


 目的は依頼主の息子の救出である。

 一人だけであるならば、地下へ行く道を探せばいい。

 だが捕まっているのは複数いる。

 その人達も一緒に救出するとなれば、建物内にいる奴隷狩りをする者を先に倒しておかなければならない。



 ぎしりぎしりと音がする床をなるべく音がならないようにして移動する。

 最初に倒した人達は見張りのようで、他の人達は一箇所の大部屋に集まっている。

 私達はその扉の付近まで来た。


 有利に戦うための準備の為に、私は闇魔法を構築する。

 魔族だけにしかもつことは出来ない属性だ。

 なので人族側には私が使えることは知られてはいけない魔法である。

 だが構築しているのは暗視の魔法であり、対象は自分。

 魔法の発動したときであっても、目に見えて闇魔法だと分かるものではない。


 こめた魔力によって暗視の効果時間は変わってくる。

 取り敢えず多めの魔力を込めておく。

 魔法を発動させると、廊下にある最低限の灯りでさえ眩しくなった。

 暗視の弊害である。

 私は来ていたローブのフードで目まで深く被る。

 ちかちかとする視界を瞼をぎゅっと閉じ、収まるのを待った。



 なぜそこまで暗い空間でないのに暗視の魔法をかけるのには理由がある。


 人数で圧倒的に負けている私達は、流石に真正面から戦うことが不利なことだと理解している。

 なので作戦として入った瞬間に部屋の灯りを消し、闇で何も分からなくなったところを攻撃するのだ。

 迂闊にも扉は少し開いており、灯りの場所を部屋に入る前から知ることが出来る。



 私はそろそろと目を見開き、視界が良好なのを確認する。

 そして暗視に引き続き、闇に溶け込む魔法をかけて準備が完了。

 こちらの魔法は目に見えるものだが効果は弱めてあり、そうそう闇魔法と分かるものではない。


 私とリュークは扉の前まで行く。

 灯りは高価なことに、光の魔道具であった。

 勿体ないと思うが、魔道具を壊す為の魔法を構築。

 発動させてガシャンと壊れた音と同時に、リュークと共に部屋に突入した。

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