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半魔はしがらみから解放されたい  作者: 嘆き雀
母の元へと向かう旅

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リュークは帰らない 前編

「もう無理! ギブギブ!」

「ふー、ふー」


 男二人が必死になっているが、私達も必死の状況である。



 私は魔力探知によっての情報で、あちらこちらから来る人の反応からどの道から逃げればいいかと混乱していた。

 そんなとき、リュークは私をとある道を先導する。

 私はずっと迷い続けるよりかはと思い、リュークについていった。


 男の仲間らしき人達が多そうな道であるというにはあまり思考は向けなかった。

 きっと龍の五感で、実は男の仲間ではなかったということが分かったかもしれない。

 とにかく今はリュークを信じてみようと、とにかくついていく。

 リュークは任せてと、元気よく「がウッ!」と言った。


 そして私が後悔したのはすぐである。



 リュークに次いで、ひらけた場所に躍り出る。

 するとそこにいた大勢の人達は、物騒な雰囲気からしてならず者であった。

 引きつりそうになる顔を抑え、この様子を見ても飛んで進んでいこうとするリュークを背に隠す。

 リュークの大きさからして隠しきれないことは、私の頭からは抜けていた。


「あいつは確か、小龍を捕まえにいったんだよな。自信満々だったのにヘマしやがって」

「小龍? それってこいつのことか……?」 


 会話からして完全に男の仲間だと判明した集団は、目の前からやってきた私とリュークを見逃しているはずがない。

 私が猛然と走って逃げ出したことをきっかけに、「捕まえろ!」と後ろから追いかけてくる。


「リュークのせいだからねっ」

「ガウー?」


 あの男達から逃げるのを不思議に思っているリュークなので、怒ったってどうにもならない。

 やっつければいいよと好戦的なリュークであるが、人数で圧倒的に負けているのにどうして戦おうとするのだ。

 今いる人達と戦っている間に仲間が増えるかもしれないし、私達より強い人がいるかもしれない。

 ぱっと見た限り追いかけている人達の中では強そうな人はいない。

 だが私は最悪を想定しつつ、今度は自分頼りで先回りされていない道を選んで駆け込んだ。







「あいつらどこいきやがった」

「どこにもいねえ。急にいなくなりやがった」


 息を潜める。

 すぐ近くで男達は話をしている。

 ドクドクと心臓が脈打つ音で男達にバレてしまわないかと思うと、余計にその音が高まった。

 だがそのことによって男達に見つかってしまうことはなく、私は相手がその場から去るのを待った。


「はぁ。良かった」


 溜息をつきつつ、私とリュークはひっそりと物陰から出る。

 周りに人がいたら、何もなかったところから出てきたように見えるだろう。



 私は闇魔法を発動していた。

 色を変えたり影を動かす以外にも、闇に溶け込むようにして姿を隠す闇魔法を使えるようになったのだ。

 動かないでじっと隠れていれば、相手は私が近くにいても魔力によほど敏感でなければ何も気付かない。


 だがそうだと分かっていても、見つかってしまうのではないかととても緊張した。

 対して、リュークは緊張など欠片も持っていなかったようでのほほんとしている。

 私はその態度が気に食わなく思ったので、ぎゅーとリュークの頬の辺りをつねって引っ張ってやる。

「ガゥ〜」と情けない声を出したところで満足し、やめてあげた。




「ねえ、もう帰ろうよ」


 元の場所にまで戻って宿に行こうとした私だが、リュークは何か気になることがあるらしい。

 追いかけてきた男の仲間の集団へとまた向かっている。

 それは私がついていかず、リューク一匹だけであっても飛んでいこうとするものだ。

 だから私は心配になってついていかざる負えない。


 何度も「帰ろう」と言葉を送るが、リュークは気にせず道を進んでいく。

 そうなるとリュークの気になるものがどんなことかと、私は気になってしまう。

 最終的には黙ってついていくことになり、そうして男の仲間の集団がいるところまで来た。



 私達を探す為に分散したのだろうか、先程よりは人数は減っている。

 どうするのとリュークに視線を向けると、私は思わず目を見開いた。

 魔法を発動し、とある男一人の足を植物で引っ張り釣り上げたのだ。

 男達にバレたくないという私の気持ちから、口元は植物でぐるぐる巻きにはしてはくれている。

 だがその釣り上げられた男の姿が見られてはかなわないと、私は慌てて闇魔法で姿を見つけにくくした。

 動くものだから、完全には闇と溶け込めない。

 だがそのことによる闇の揺らぎは、男の仲間に発見されなかった。


 釣り上げた男を連れてその場から離れた後、リュークは芋虫のように植物で縛り上げて拘束を頑固なものとする。

 そしてその男の匂いをすんっと嗅いだ。


「ガウー、ガウガゥッ!」


 言葉と共に伝わってきたイメージが、少年の姿。

 昨日今日護衛をした依頼人の息子だった。

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