王都到着
王都に入る為に並ぶ列があった。
長い列で、自分達の番がくるまで時間がかかることは明白だった。
だが捕まえた盗賊がいることを知らせると、優先して王都に入る手続きをしてもらうことになった。
簡易な荷物検査をされ、リュークのことを聞かれる。
従魔だと伝え、それを示すアンクレットを見せる。
「初めて見る魔物だなあ」と言っていることから、龍だということには気付いていないようだった。
手続きはそれだけで終わり、私が半魔だということはもちろんバレなかった。
盗賊二人は留置場までそのまま馬車で連れて行くこととなった。
憲兵が一人、そこまで案内してくれる。
だが私達護衛は任務完了したことのサインをもらったので、そこで依頼は終わり解散することとなった。
「じゃあな!」と依頼人の息子にぶんぶんと手をふられるのと、睨みつけるように歩く盗賊二人の差が印象に残った。
「さて、まずは冒険者ギルドに行くか」
共に護衛の依頼をした冒険者のパーティーに、冒険者ギルドを案内してもらう。
よく王都に来るようなので迷うことはない。
セスティームの街の祭りのときと同じぐらい、人が多い状態に驚きながらもついていく。
「後でゆっくり見ればいいから」と宥め、どこかに飛んでいくリュークを捕まえておくことは忘れない。
「大きいですね……」
「そりゃ王都の冒険者ギルドだからな」
横の大きさは違うがニ階建てということは変わらない冒険者ギルドに入る。
人の出入りが多いので、いちいち全員から視線をもらうことはない。
だが私が子供で小さく、リュークを抱えていることから、何人かの興味をひいていることは分かる。
今回は共に依頼を受けた冒険者がいるので、目立たないよう身を隠すことは出来る。
だがこれからは私とリュークだけだ。
この視線に慣れなければならない。
居心地の悪さを感じながら、依頼達成の報告の為に受付に行く。
美人の女性が多いことに、どこの冒険者ギルドもそうなのかと思った。
その間にリーダーが報酬をもらう。
魔石の換金した代金も含めた報酬を私と相手のパーティーで分けた。
最初にその比率を決めていたので、文句は出ない。
「何か困ったことがあったら、ここの宿にいるから遠慮しないで来いよ」
宿を教えられ、約二日お世話になった冒険者とも別れる。
親切な人達だった。
旅するのに便利なことやパーティーでの戦い方など、教えてくれた。
「じゃあ、行こっか」
「ガウッ」
私とリュークだけとなり、王都を見て回る。
といっても疲れているので、自分達が泊まる宿に到着するまでである。
先程別れたパーティーが泊まる宿ではもう満員だったのだ。
そして紹介されたのが、従魔がいる客に色々なサービスをしてくれる宿だ。
店主が生き物全般が好きらしかった。
宿につくまでに、主にリュークが好きな果物を買った。
旅をする身なので、重くてかさばるものは買えないが消費するものなら買える。
明日から二、三日は王都で滞在するつもりだ。
体を休めることと、観光をするつもりなのである。
その間に消費出来る分だけ買い、リュークが荷物を持つ。
重いと契約の繋がりで言っているので、「頑張って」と声をかける。
持ってあげたりはしない。
私は旅の荷物で精一杯なのだ。
べリュスヌースから契約の際にもらってあまり使っていなかった杖もある。
あげた本人(龍)から、この機会に使えと言われて持ってきているのだ。
この杖は私の膨大な魔力に耐えきれ、魔力の操作がしやすくなる。
簡単に折れたりするものではないので、棒術で接近戦になったときにもだ。
そんな優れた杖であるが、私が成長してもまだ背丈を超える大きさの杖である。
かさばる。
だが、美術的に高価がありそうな杖だ。
戦闘以外には雑に扱うことは出来ない。
そんなことを理由にして、リュークを置いてけぼりにして先を行く。
果物の荷物が重いというアピールで、飛ぶ速さを遅くしているのは分かっている。
いつもはそんなリュークを何かと甘やかしている。
今日も果物を買ってしまった。
だがその甘えを少しずつ減らしていかなければ。
旅をするのだ。
果物が重いというぐらいの苦は、苦と思ってはいけないだろう。
期待をさせないように後ろを振り返らず、魔力探知で反応を見る。
重いことは我慢してついてきているようだった。
リュークはやれば出来る龍なのだと、内心でとても感動していた。
だからだろうか。
口を塞がれて叫ぶことは叶わず、あっという間に暗い路地へと連れられてしまった。
勿論、すぐさま撃退する。
身体強化をして、相手の足を思いっきり踏む。
痛みで私の体を拘束していた腕の力が緩んだその一瞬、私は顎に向けて思いっきり持っていた杖を叩き込んだ。
「うがぁ……!」と地面に転がった相手は男であった。
そしてもう一人その男の仲間がいたので、避ける暇なくみぞおちをついた。
誰でなんの為に、私を無理やり連れて行こうとしたのか。
こういった相手はセスティームの街でリュークを狙うものが多発したときに慣れている。
どうせろくでもない為だろうが、この場で聞き出してやろうとする。
そして私はとあることに気付いた。
「……リューク?」
ついさっきまで歩いていた通りにいない。
契約の繋がりで分かるリュークの居場所が、違う場所にいて速いスピードで離れていた。




